【パラアイスホッケー】日本代表の信田憲司新監督は、どんな人?
7月に入り、世界各国のアイスホッケーは新年度(2019-20シーズン)を迎えました。
先月22日(現地時間)に「ドラフト」が終了したNHLでも、新年度に入り、早速FA権を行使して、新しいチームと契約を結んだ選手の知らせが数多く届いています。
▼中北浩仁監督が退任
その一方で、6月からが新年度と定められている日本のパラアイスホッケー(旧称・アイススレッジホッケー)は、先月末に今季最初の日本代表強化合宿を開催しました。
しかし、強化合宿に先立って、大きな発表がありました。
2002年春から日本代表を率い続け、「バンクーバー パラリンピック」で日本を銀メダルへ導いた中北浩仁監督の退任です。
▼日本代表に新監督就任
そのため、先月末の強化合宿は、新監督が率いる最初の強化合宿となりましたが、新たな日本代表の指揮官に就いたのは、信田憲司氏(58歳/タイトル写真)!
ホッケーの盛んな苫小牧市(北海道)で育った信田新監督は、高校卒業後に大学進学を考えていたところ、コクド(当時は国土計画)から誘われ、進路を変更。
信田新監督がチームに入った当時のコクドには、日本代表のゴールを守り続けた40歳の大ベテランを筆頭に、既に2人の先輩GKが在籍。
しかし、年々出場試合数を増やしていき、日本リーグが初めてプレーオフ制度を導入した年(1990-91シーズン)には、最大のライバル王子製紙(現王子イーグルス)相手に全ての試合で、ゴールを守り続けました。
その後、ジュニアも含めた男子代表と、女子のナショナルチームの監督やコーチを歴任。
現在は中央大学のコーチも務めています。
▼新監督はどんな人?
筆者は日本リーグ時代から、国内の試合やNHLの中継で、長年にわたって信田氏とご一緒させていただきました。
その際に感じ続けていたのが、何と言っても信田氏の「熱さ!」
NHLのみならず、日本リーグの試合中継の際も、相手チームの決定的なチャンスに対し、選手が体を張ってピンチを防ごうものなら、感激のあまり(?)涙腺が緩みそうな表情を垣間見せた時も、しばしば(笑)
だからと言って、激しいプレーばかりを求める”堅物なコーチ”ではありません。
クリスマスシーズンにジュニアチームの指導をした際には、このような衣装で登場し、選手たちを喜ばせる演出をしたことも!
▼パラアイスホッケーの指導者になったキッカケは?
海外でプロホッケー選手を目指していた中北前監督が、カナダで夏合宿をしていたコクドに直訴をして、練習に参加したのが縁となった二人は、昨季まで監督とコーチとして日本代表を率いてきました。
しかし、世界を股にかけるピジネスパーソンの中北監督が、社業に専念することにより、17季にわたって手にしていた”監督”という名のバトンを託したことから、先月末に新監督の誕生へ至ったのです。
▼「努力」と「研究」を積み重ねコクドの守護神に
そんな信田新監督の魅力は、「努力を惜しまないこと」!
前述したとおり、ルーキーシーズンは3人目のGKからのスタート。翌年には大学卒の選手も加わり、GKが4人も在籍する大所帯となりましたが、自らの努力と、相手の研究を積み重ねて、コクドの守護神の座を勝ち取り、 さらには世界選手権の日本代表にも選出され、日本の守護神も務めました。
▼大学生を驚かせた!
このような努力は、現役を引退してからも続けています。
利き腕ばかりを頼ってはいけないと、食事の時は利き腕でない左手で箸を持って、食事をするようになって数か月が経った頃、当時コーチをしていた慶應大学の選手に、その話をすると、真顔でこう言いました。
「え!? 信田さんは左利きじゃないのですか?」
▼「誤字」で知るコーチの熱意
選手が驚くほどの箸づかいに限らず、信田氏の話を選手に尋ねると、驚きながら称賛する言葉が聞かれました。
「ピョンチャン(平昌)パラリンピック」出場を決め、強化合宿をしていた際、柴大明(パラリンピック3大会出場)は、こんな話を打ち明けてくれました。
「(合宿中は毎日練習が終わると)信田さんから各選手へメールが届くのですけれど、漢字の変換間違いが時々あるんですよね(苦笑)」
しかし、柴は決して責めたり笑ったりすることなく、真顔でこう続けました。
「きっと信田さんは、選手たちがその日の練習を振り返って、ホテルに戻ってから研究したいかもしれない。早く起きて翌朝の練習前に、自分のプレーを確認したいかもしれない。そう思って1分でも早くメールで知らせてあげたいと、思ってくれているんだなと思います」
参考までに紹介すると、日本代表と言えども仕事を持つ選手がほとんどのため、金曜日の夜から、土曜日の朝と夜。そして日曜日の早朝に練習をして帰宅するという強行スケジュール。
その中で毎晩全員にメールを送っていたことを考えると、「(合宿の時は)ほとんど寝ないで、コーチをしてくれていると思いますよ」と話した柴の言葉に間違いはないでしょう。
▼新たな指揮官の熱さが武器に!
国家ぐるみのドーピング違反によって、ピョンチャン パラリンピックに出場できなかったロシアや、次回の冬季パラリンピック開催国の中国も、強化に注力するのは明らかだけに、二大会連続のパラリンピック出場への道のりは、決して容易ではありません。
ましてや競技人口が一気に増えて競争が激化し、レベルアップへつながるとは、残念ながら考えられないのが現状です。
それだけに、新たな指揮官となった信田監督の”熱さ”は、日本代表の大きな武器になるに違いありません!