金正恩命令もそっちのけで「愛の行為」にふけった不倫カップルの運命
北朝鮮は首都・平壌で、2025年までに5万世帯分の住宅建設を行うというメガプロジェクトをぶち上げた。その第一弾として、松新(ソンシン)・松花(ソンファ)地区の1万戸は完成。現在は、和盛(ファソン)地区の第2次工事が行われている。
同時に、市内中心部から北西に離れた西浦(ソポ)地区でも、今年のうちに4000世帯分の住宅建設を行うプロジェクトを進めている。
建設にあたるのは、全国からかき集められた青年同盟(社会主義愛国青年同盟)の突撃隊だ。形式的にはボランティアとなっているが、実際は半強制的に動員される建設部隊だ。青年同盟の傘下だけあって、隊員たちは14歳から30歳の若い男女だ。そうなれば、自然に起きるのが「夜の問題」だ。平壌のデイリーNK内部情報筋が伝えた。
故郷を離れ、はるか平壌の地までやってきて、支え合いながら辛い労働に取り組む。そんな日々を過ごしているうちに、目と目が合って好意を抱き、恋愛に発展するケースも少なくない。
黄海南道(ファンヘナムド)のある旅団では、20代の男女が「夜の建設工事」を行っていた最中に旅団指揮官に見とがめられてしまう事件が起きた。また、妻と会えずに寂しい夜を過ごしていた既婚男性が、未婚女性と不倫関係に陥り、住宅ではなく子どもを作ってしまうという事件も起きた。
「人の口に戸は立てられぬ」どころか、立てる戸すらないのが北朝鮮の口コミネットワークである。恐ろしい勢いで「夜の建設工事」の噂は突撃隊の中で広まった。
報告を受けた青年同盟中央委員会は、これを重大問題と受け止めた。首都建設プロジェクトは金正恩総書記の肝いりであり、労働意欲が低下して工期が遅れたらどんな罰を与えられるかわからない。中央委は当該の男女を緊急集中思想闘争会議の舞台に上げ、吊し上げにして徹底的な批判にさらした。
(参考記事:「女性16人」を並ばせた、金正恩“残酷ショー”の衝撃場面)
その場で中央委員会は、このように訓を垂れた。
「全国のすべての若者が、首都の建設現場に動員されたのは、社会主義建設のやりがいにあふれる闘争において、愛国青年の気概を余すことなく発揮し、首都建設の新しい歴史を繰り広げるためだ。恋愛する時間があるなら、モルタルを1回でも多くすくいあげて、首都建設に貢献しなければならない」
しかし、こんなお説教に耳を傾ける若者はいないだろう。それを知ってか、中央委員会は翌日、女性突撃隊員の寮を、男性突撃隊員の寮から1キロも離れたところに移動させる措置を取り、毎晩点呼を取って、きちんと寮に戻ってきているかを点検するように措置を取った。
隊員の間からは、「既婚男性が未婚女性をたぶらかすのは悪いことだが、若い男女間の恋愛そのものも禁止されるのではないか」と不満が漏れ聞こえたという。
このように、恋愛が原因で事件に発展する例は枚挙にいとまがない。社会主義革命に熱い闘争心をたぎらせる人も中にはいるだろうが、ほとんどの若者はそんなものより「夜の革命活動」に熱心に取り組んでいる。