マララさん「戦争に使う8日間の費用を12年間の無償教育に」、ノルウェーで各国の指導者に訴える
教育を受けられない5,800万人の子どもへの支援を訴え、国際的な強調活動を強めるために、国際会議「開発のための教育に関するオスロ・サミット」が7月6・7日にノルウェーの首都オスロで開催された。
国連の潘基文事務総長やノルウェー首相、国連世界教育特使のブラウン前英首相のほかに、ルワンダ大統領、ハイチ首相、パキスタン首相、ニジェール首相など、世界40か国の政府首脳、官僚、国際機関の指導者や教育に関する著名人が集まった。
冒頭写真:左よりノルウェー外相、ノルウェー首相、ノルウェー王太子、潘基文国連事務総長、マララさん
日本からは、国際協力機構(JICA)の田中明彦理事長が出席し、質の高い教育のために、教員の継続的な能力開発の重要性などをアピールした。
会場で大きな注目を集めたのは、史上最年少のノーベル平和賞受賞者、マララ・ユスフザイさん(17)。オープニングセレモニーでは各国の指導者を前に、8日間の軍事支出に使うお金を、全世界の子どもの12年間の無償教育につぎこむように訴えた。
以下、マララさんの演説(一部省略)
「私は世界のリーダーたちに、教育により多くの投資をしてもらうことをお願いするために、教育を受けられない子どもたちを代表して、ここに立っています。
私は母国に2年半帰れない生活をしています。なぜ、子どもたちが傷つき、家なき子になり、戦争の標的にならなければいけないのでしょう?
リーダーの皆さんには、真剣に取り組んでいただきたいのです。誰もが平等に教育を受ける権利があります。子どもたちには選択肢がありません。
15年前、国連ミレニアム開発目標は低い目標を掲げてしまいました。子どもの権利は初等教育のみとし、中等教育に関しては口を閉ざしたのです。夢が小さかったから、達成できたことも小さかったのです。
間違いを繰り返さず、高い目標を掲げましょう。必要なのは9年間ではなく、12年間の教育です。
問題は、支援資金が足りないことではなく、リーダーのコミットメントの欠如です。
8日間の軍事活動で使ってしまう390億ドルがあれば、全ての子どもたちを学校の椅子に座らせてあげることができるのに。リーダーが、およそ1週間、戦争をやめてくれたら実現できるのです。
兵器は生命を奪うだけです。銃弾のよりも本のほうが、未来へのよりよい投資です。
もうすぐ誕生日を迎える私は、“子ども”ではなくなります。子どもである間に、私が学んだことは、大きな夢を抱いて、目標を高く持つこと。私がリーダーの皆さんにお願いすることは、少しの間だけ、子どもになってほしいということです。夢を大きく持ちましょう」。
シンプルで率直なメッセージに、会場は大きな拍手に包まれた。
記者会見でノルウェーのソールバルグ首相は、マララさんの指摘する通り、軍事支出と教育への支援金はバランスがとれていないことを認め、ノルウェーは現在の2倍の支援活動を約束。各国は、その気さえあれば教育支援にさらに貢献することが可能であり、そのためにも他国を巻き込んだ活動の必要性を強調した。
国連の潘基文事務総長は、会議を率先して主催したノルウェー政府に感謝するとともに、勇気を与えてくれるマララさんの行動を讃えた。
最後の記者会見では、ブラウン国連特使は、「オスロでの会議の結果は、世界を変える」とコメント。ノルウェー外相は、会議が終わっても、5,800万人の子どもたちが教育を受けられるようなるまで、この活動はやめないことを明言した。
写真:左よりレバノン教育大臣、ノルウェー外相、ブラウン国連特使、国連ミレニアム開発目標メンバーのグラサ・マシェル氏
Photo&Text:Asaki Abumi