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豊島将之九段(32)王将リーグ1敗堅持で挑戦に望みつなぐ 服部慎一郎五段(23)に完勝

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 11月11日。大阪・関西将棋会館において第72期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ▲豊島将之九段(32歳)-△服部慎一郎五段(23歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は17時56分に終局。結果は113手で豊島九段の勝ちとなりました。

 豊島九段はこれで3勝1敗。首位の羽生善治九段(5勝0敗)を追って、挑戦の可能性を残しています。次戦では渡辺明名人と対戦します。

 リーグ初参加の服部五段は1勝4敗となり、残念ながら陥落決定。最終戦では永瀬拓矢王座と対戦します。

豊島九段、序盤から終盤までスキなし

 豊島九段先手で、戦型は角換わり腰掛銀。途中までは王位戦七番勝負第4局▲藤井聡太王位-△豊島挑戦者戦の進行をなぞりました。王位戦では後手番を持った豊島九段が、本局では逆の先手番を持って進めたことになります。

 51手目。豊島九段は中央5筋の歩を突いて前例を離れ、空いた空間に筋違い角を据えました。

 対して服部五段も自陣に角を打ちます。

服部「本譜の順は角の打ち合いになってしまって。ちょっとやっぱり6三角の方がはたらきが弱かったんで。ちょっと模様がよくない将棋にしてしまったのかなと思います」

 本譜は角のはたらきの差が先手の大きな主張となり、豊島九段が作戦勝ちを収めました。

 昼食休憩後。63手目、豊島九段は満を持して仕掛けていきます。1筋に続き、3筋の歩を突いたところで、服部五段は5筋に回っていた飛車を8筋に戻しました。

服部「いやあ、△8一飛車と戻った手はけっこうひどかったと思います。なんか読んでいて、玉と飛車が近いんで、その変化で、玉と飛車が近いんで、先に逃げておいた方がと思ってしまったんですけど。それでも▲4五歩と突かれて、けっこうしびれてしまったので。飛車戻るところでなにか・・・。もうわるくてもおかしくないかもしれないですけど、なんかでも、勝負する手段を探すしかなかったかなと思います」「△8一飛車と戻るところで、△5四歩と突くか、それとも強く(△3五)同歩と取るか。どっちかをたぶんやらないといけなかったような気がします」

 73手目。豊島九段は四段目に金を上がり、攻めに厚みを加えます。

豊島「けっこうなんか、後手玉の近くで戦いになってるので、まずまずかなと思いました」

 79手目。豊島九段は相手の金を角で取るか。それとも桂で取るか。形は角ですが、角交換から角を打たれて反撃されます。豊島九段は32分の熟慮の末に、きっぱりと角で取りました。

豊島「手堅くやった方がよかったのかもしれないですけど、具体的な手がわからなかったので」

 しかし以後の豊島九段の指し回しは完璧でした。自分の飛車を取らせる間に、ギリギリの手順で相手玉を受けなしに追い込んでいきます。

豊島「踏み込んでいって(93手目)▲1四歩の局面でけっこうなんか、後手の手段がむずかしいかなと思って。なんか読み抜けがあったらまあ、逆転してしまう順なんで」

 97手目。豊島九段は一段目に銀を打ちます。見慣れない筋ですが、これが決め手。最後は攻防ともに盤石の態勢を築いて豊島九段の勝ちとなりました。

豊島「昨年(2勝4敗でリーグ陥落)よりもいい成績になったので、まあそれはよかったかなと思います」「挑戦はけっこう難しいというか、厳しい状況になっているので。まあ目の前の一局、局面に集中して」

服部「やっぱり陥落したことはまあ、残念なことですけど、最後一局あるんで。最後の一局も全力で戦いたいと思ってます」

 リーグの今後の日程は以下の通りです。

11月14日

▲永瀬拓矢王座(2勝2敗)-△近藤誠也七段(2勝2敗)

11月15日

▲豊島将之九段(3勝1敗)-△渡辺明名人(1勝4敗)

11月22日

▲羽生善治九段(5勝0敗)-△豊島将之九段

△永瀬拓矢王座-▲服部慎一郎五段(1勝4敗)

△近藤誠也七段-▲糸谷哲郎八段(2勝3敗)

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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