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武田塾講師、大学侮辱の不適切動画を投稿~武田塾が合格を宣伝する一方で

石渡嶺司大学ジャーナリスト
塾講師YouTuberの動画より。

法政大の不合格者、法政大入学式ディスり動画を見る

皆さん、こんにちは。法政大学に第一志望で落ちた石渡です(爆)。

1994年~1996年に3年連続で受験し、法政大学は立教大学と並び第一志望も3年連続、不合格。結果、2浪で第三志望だった東洋大学に合格、入学しました。

それから20年以上、経過して、気がつけば、大学や就活関連の記事・本を書く仕事をしているのだから人生、分かりません。

まあ、扱うテーマが大学、というだけで、学歴コンプがどうこう、というのは特になく。それでも気にする人は気にするわけで、それはそれでテーマとして扱うのも面白いなあ、というのが私の日常です。

などなど考えていたところ、法政大学を相当、ディスっている動画を発見。

2019年4月18日投稿

動画を公開したのは「wakatte.TV」、塾講師のびーやま氏と高田ふーみん氏によるチャンネルです。

なお、びーやま氏は早稲田大学、高田ふーみん氏は京都大学の出身(本人のTwitterアカウント概要より)。

そして、YouTubeの概要などにはありませんが、この動画の最後、それから、過去の投稿動画や武田塾サイト採用ページから武田塾の塾講師であることが明らかです。

右は高田ふーみん(YouTube)、左は武田塾サイト・採用ページ。同一人物であることは明らか。
右は高田ふーみん(YouTube)、左は武田塾サイト・採用ページ。同一人物であることは明らか。

三人で本気の謝罪。wakatte.TV最終回!?(2018年5月25日投稿)

一応、この動画の中で武田塾の塾長も登場。「武田塾とwakatte.TVは無関係」ということでまとめています。

ここが相当なツッコミどころなのですが、これについては後述します。

YouTuberの2人は法政大学入学式が開催された日本武道館へ。

会場前で新入生を捕まえては法政大学が第一志望だったかどうかを聞いて回ります。

そして、第一志望が慶応や早稲田だったと新入生は話すと、「目標高すぎ」などと茶化します。

当然ながら新入生は晴れの入学式であるにもかかわらず、微妙な表情に。

テロップもわざわざ「人の不幸を噛みしめる狂人」など、悪意が満載です。

第一志望不合格を嘲笑する、YouTuber・高田ふーみん、こと、高田史拓(右)
第一志望不合格を嘲笑する、YouTuber・高田ふーみん、こと、高田史拓(右)

全編、この調子でまとめて、最後は、「受験生のみんな、第一志望に受かるように勉強頑張っておけよ」で締めくくります。

動画投稿後は、開き直りとも取れるコメントをTwitterに投稿(現在は削除)。

高田ふーみんこと高田史拓のTwitter投稿(現在は削除済み)
高田ふーみんこと高田史拓のTwitter投稿(現在は削除済み)

入学式をぶち壊しで大炎上

見ていて、果たして何をしたいのか、いまいち理解できない動画でした。

ただただ、新入生への嫌がらせとしか思えません。

案の定というか、コメント欄も批判一色です。

「晴れの舞台に水を差す失礼極まりない」

「OBとして許せない」

「本当に自分が頭良い人はこんなに人見下さないし顔も心もブスで可愛そう」

「武田塾通ってたんですけど5月で辞めることにしました」

法政大学は受験業界ではMARCH(マーチ)クラスと称されており、明治・青山学院・立教・中央と並び、準難関大学と位置付けられています。

大学受験浪人が溢れていた1980年代から1990年代にかけては法政大学や私出身の東洋大学などは滑り止め、と位置付ける受験生が多数いました。

今の高校生、大学生には信じられないでしょうけど、

「現役偶然、一浪当然、二浪平然」

などと言われていたものです。ちなみに、三浪以降は、

「三浪:憮然 四浪:唖然 五浪:愕然 六浪:慄然 七浪:呆然 八浪:超然

九浪:天然 十浪:無為自然」

しかし、2000年代以降、首都圏・地方ともに現役志向が高まります。

その結果、最初からMARCHクラスを第一志望とする受験生は増加しています。

という事情を大学受験塾である武田塾の講師であれば、知っているはずなのですが。

仮に、法政大学の第一志望者が多いか少ないかを検証するにしても、河合塾など大手予備校の模擬試験データを見ていけば事足りる話です。

百歩譲って、法政大生へのインタビューが必要だったとしましょう。

動画制作で、画として面白そう、というのも含めて。

が、わざわざ入学式でそれをやるのか、という疑問はぬぐえません。

新入生からすれば第一志望でないにしても色々な思いを持ちつつ入学式を迎えたに違いありません。

それをわざわざ「第一志望か」と聞いた挙げ句、嘲笑するような姿勢は教育者としていかがなものでしょうか。

法政を嘲笑しつつ法政合格を宣伝?

それでもまあ、一個人が難関大出身であることや、出身校より偏差値の低い大学を低く見る、というのは自由です。

銀座だろうが、新橋だろうが、居酒屋に行けば自分の学歴自慢をするオジサンなどいくらでもいますし(他に自慢することはないのか、というツッコミは封印)。

それから所属する塾が「東大、京大、一橋、早慶以外は負け組」と言い張るほどの姿勢であるなら、それはそれで一貫しています。私個人は全く支持も共感もできませんが、どのような姿勢であれ方針であれ、塾が持つのは自由です。

しかし、理解しがたいのは、この武田塾の宣伝です。

武田塾のサイトや各校のTwitterを見ると、法政大学合格を宣伝しています。

法政大学合格を誇示する武田塾サイト
法政大学合格を誇示する武田塾サイト

一方で法政大学を嘲笑し、それでいて一方では法政大学の合格実績を宣伝…。

矛盾であり、凡人である私などには到底理解しがたいところ。

武田塾は「広報担当者が不在」

私なりに仮説を考えると、

1:塾講師(YouTuber)が所属する塾(企業)の方針を理解していなかった。つまり、京都大・早稲田大という難関大出身でありながら、冷蔵庫に入り込んだ動画を投稿して喜ぶバカッターといい勝負、という程度の人材にすぎない。

2:武田塾の方針が、裏では法政大学(またはMARCHクラス)を相当に下に見ている。東大・京大・早慶・一橋など難関大の合格以外に価値を見出していない。

のどちらか。

1だったら、よくわかりますが、それもどうなんでしょうか。

YouTuberの一人、高田ふーみん氏は武田塾サイトでは「高田史拓」と本名をはっきり出しています。

それにYouTubeのチャンネル登録者数は2019年4月29日現在、4.3万人。参入障壁が低く、それでいてそう簡単に登録者が伸びないYouTubeとしては登録者が多い方です。単なるバカではできないでしょう。

と言って、2もどうなんでしょうか。そこまで下に見ているのであれば、サイト・Twitterでそこまで法政大合格を宣伝しないはず。

さて、どちらなのか、全くわかりません。

武田塾を運営する株式会社A.verに電話で問い合わせたところ「広報担当者は不在です」とのことでした。

とは言え、動画投稿から10日以上、経過していて、特に何も無いようなので、武田塾としては「個人でやっていることだから無関係」ということなのでしょうか。

仮説がどちらか、あるいはそれ以外の真相があるにせよ、はっきりしているのは武田塾にとってはネガティブな影響しかありません。

何しろ、法政大などを志望する受験生からすれば、いくら「このチャンネルは、武田塾の講師達による個人チャンネルで、武田塾及び株式会社A.verとは、一切関係ありません」とテロップを出していてもどうでしょうか。

志望校を嘲笑するような講師の所属を許している、という時点でいい気分にはならないでしょう。むしろ、不快に思い、他の塾に変えようか、と考えるに違いありません。

武田塾は同社サイトによると、「授業をしない!」などの方針で全国に210校舎を突破とのこと。

そこまで拡大したということは教育内容が良かったから、と推察できます。

それをいくら「副業OK」(YouTubeより)とは言え、こうした動画の公開を許してしまうのは企業の姿勢や内部統制が甘かった、と言わざるを得ません。

武田塾・株式会社A.verとしては、この塾講師に対して動画投稿の休止・削除、あるいは、YouTuber活動の是非も含めて検討すべきではないでしょうか。

第一志望落ちでも、それはそれ

高田ふーみん、こと、高田史拓氏の「受験生のみんな、第一志望に受かるように勉強頑張っておけよ」はその通りです。

私の高校同期には東大・北大などの難関大合格者がいました。彼らは受験勉強を相当頑張っており、私は全く頑張りませんでした(本・マンガの読破の日々)。

難関大に入った、というのは努力の果実であり、それを個人が自慢するのはわかります。が、その自慢が行き過ぎるとその果実からは腐敗臭しかしません。

高田史拓氏は武田塾サイトの採用ページで「大学在学中から『武田塾に恩返しをしたい』という気持ちで働いています」と出していますが、どうなんでしょうね?

この法政大ディスり動画は武田塾に対して恩ではなく仇で返すようなもの、と言わざるを得ません。

それから、この法政大ディスり動画で傷ついた法政大の新入生や他大含めた学生には一言。まず、高田史拓氏の京大という学歴から「京大だから人の気持ちが分からない」云々と攻撃するのはやめましょう。

高田氏の人間性がどうあれ、京都大合格と実績を出しているのは事実です。そもそも人間性と学歴は無関係です。

難関大だろうが、中堅大だろうが、高卒だろうが、凄い人は凄いし、下劣な人は下劣、というだけです。

もし、第一志望でない大学に入学したとしても、大学受験の努力が足りなかった、あるいは、一歩届かなかった、ただそれだけです。

そのことを悔しいと思うのであれば、大学の勉強に全力をぶつけてください。サークルなりアルバイトなり、大学生活を楽しむのもいいでしょう。

就活や社会人生活ともなれば文章力・読解力が問われます。その力を付けるためにも新聞を読むのもお忘れなく。

そうした日々を送っていれば、大学名がどうこう、という話とは無関係に就活もうまく行きます。

大学名や偏差値にこだわりたい人は高校生・受験生・大学生だけではありません。高田氏含めて社会人にもいくらでもいます。

しかし、就活、そして社会人生活は大学名・偏差値だけでなく大学で何をしたか、社会人になってからどう努力したか、そのあたりも含めての総合評価です。

その総合評価に気づかず(あるいは無視して)、大学名・偏差値だけで勝った・負けたというだけでは、何ら本人の成長につながるものではありません。

ということを、高校生・大学生には強くお伝えしたいと思う次第です。

ちなみに、武田塾の塾長だって、大学受験浪人をしています。

それで全国210校に拡大。私は私で大学・就活関連の著作が28冊。

人生登ったり、下がったりの繰り返し。というわけで、法政大新入生の皆さん、つまらない嫌味動画などにはめげないように。

4月30日追記

タイトルに「武田塾講師」「不適切動画」と明記するように変更しました。

大学ジャーナリスト

1975年札幌生まれ。北嶺高校、東洋大学社会学部卒業。編集プロダクションなどを経て2003年から現職。扱うテーマは大学を含む教育、ならびに就職・キャリアなど。 大学・就活などで何かあればメディア出演が急増しやすい。 就活・高校生進路などで大学・短大や高校での講演も多い。 ボランティアベースで就活生のエントリーシート添削も実施中。 主な著書に『改訂版 大学の学部図鑑』(ソフトバンククリエイティブ/累計7万部)など累計31冊・65万部。 2023年1月に『ゼロから始める 就活まるごとガイド2025年版』(講談社)を刊行予定。

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