「稀な大暑を忘れないため」と随筆を書いた島崎藤村 その年は猛暑日は1日・今年はすでに12日
暦通りの「大暑」
現在、ほぼ全世界で使用されている暦は、太陽の動きに基づいた「太陽暦」です。しかし、江戸時代以前の日本では、月の運行に基づいた「太陰暦」が使われていました。
太陰暦は、月の形で日付がわかる等、大変便利なのですが、太陽の位置と無関係であるため、暦と季節との間にずれが生じてしまい、農耕等への活用には不便でした。
そこで、古代の中国・華北地方で作られ、日本に伝わってきた太陽の運行をもとにした二十四節気を農作業等に活用していました。
日本の季節は、暦の上の季節よりも遅れて訪れます。なぜ、ずれが生じたかというと、中国大陸の季節をそのまま使ったことが原因であるといわれています。
例えば、立春の日(今年は2月4日)は、春にはほど遠い寒い季節です。また、立秋の日(今年は8月7日)も同じで、秋にはほど遠い暑い季節です。
それでも日本人は、「これから暖かくなり始めて春に向かうので、もう少し寒さを我慢しよう」とか、「まもなく涼しくなるので、もう少し暑さを我慢しよう」等と考えて利用しているので、ずれをそのまま受け入れています。
今年の二十四節気では、7月22日から8月6日までが「大暑」です。
暦の上で、「一年で一番暑いころ」です。日本の季節が暦とずれていることを考えると、「これから一年で一番暑いころになるので警戒してください」という意味になります。
しかし、今年は、暦通りの厳しい暑さの「大暑」となっています。
そして、昭和8年(1933年)の「大暑」も文字通りの厳しい暑さと言われました。
昭和8年(1933年)の暑さ
日本を代表する文豪で詩人の島村藤村(代表作「若菜集」「破壊」「春」等)は、昭和8年(1933年)の暑さについて、「この稀な大暑を忘れないため」ということで随筆を書いています。
島崎藤村が記録に残さなければと考えた昭和8年(1933年)の暑さより、今年の暑さは、桁違いの暑さです(図1)。
7月の猛暑日(最高気温が35度以上の日)は12倍ですし、熱帯夜(最低気温が25度以上の日)は2.8倍となっています。
島崎藤村は、7月24日の1日だけの猛暑日より、7月21日、22日、24日、25日、26日と7月下旬に続いた熱帯夜のほうが体に堪えたのかもしれません。
今週末の危険な暑さ
令和6年8月2日に東北北部が梅雨明けし、これで、梅雨がないとされる北海道を除いて、全国で梅雨明けとなりました(表)。
梅雨前線が北海道北部まで北上したためですが、沖縄・奄美地方と、東海・関東甲信地方で平年より早かったものの、その他の地方は平年より遅い梅雨明けでした。
7月下旬は、梅雨明けした地方でも、大気が不安定でにわか雨や雷雨の所が多かったのですが、これからは高気圧に覆われ、晴れて気温が高い日が続く見込みです。
ただ、太平洋高気圧に広くおおわれてという典型的な夏型ではありません(図2)。
とはいえ、暖気が入っているところに強い日射が加わり、8月3日は西日本から東日本の太平洋を中心に猛暑日の所が多くなる見込みです(図3)。
今週末は、九州では、最高気温が40度に迫るという殺人的な暑さの懸念がありますので、厳重な警戒が必要です(図4)。
ただ、週明けは、最高気温が35度以上の猛暑日、30度以上の真夏日、25度以上の夏日の観測地点数が少し減る見込みです。
また、7月29日に栃木県・佐野で観測史上3位となる41.0度の観測後、40度に迫る最高気温の観測が続いていましたが、週明けの8月5日は全国で一番暑い地点が、38度を下回りそうです(表2)。
といっても、少し減る程度で、厳しい暑さが続くことには変わりがありません。
図1の出典:気象庁ホームページをもとに筆者作成。
図2、表1の出典:気象庁ホームページ。
図3の出典:ウェザーマップ提供。
図4、表2の出典:ウェザーマップ提供資料をもとに筆者作成。