コペンハーゲンが問う、これからの責任ある展示と素材
ユネスコ建築世界首都2023に指定されたデンマークの首都コペンハーゲン。
7月に開催された国際会議UIAに合わせて、未来に向けた建築に関して正しい問いを投げかける「SDGパビリオン」が街中に設置された。
展示終了後のリサイクル、再組み立て、再利用を計画し、「素材の責任ある消費」に重点を置いて建設されている。
展示期間が終わった後、素材は単にゴミとして廃棄されるのか、それとも新たな役割を与えられるのか。
展示をする企画者は今後はそこまで情報を開示することが、これからは求められてくるだろう。
それではパビリオンのいくつかの「素材の責任ある消費」をみていこう。
内省と自己反省を問う鏡の世界
「Reflections in Common」のコンセプトは、人々が都市を背景に自分自身を見つめることができるデザインだ。
自分自身と街と自然の四季の変化を新しい視点から体験し、「立ち止まる時間」をもつことができる。
1年が終わると、パビリオンの要素はすべて再利用され、植物はコペンハーゲンのあちこちに植えられる。
持続可能なレンガの家とは
「コペンハーゲンの建築物はなぜこれほど大量のレンガを使用しているの?」
国際会議に参加したある建築家は質問していた。
そう、この都市ではレンガは重要な建築素材だ。よって持続可能なレンガの使用も重要な点となる。
レンガのパビリオン「Bricks in Common」は、まさにレンガ使用に熱心な建築業界に問いを投げかける。
レンガは潜在的に長寿命だが、大きなエネルギーを消費する素材でもある。持続可能な開発においてレンガが大きな役割を果たすことを望むなら、さらなる技術革新と開発、解体のための設計が必要ということだ。
素材はすべて、解体することを想定したデザインにこだわって選ばれている。材料はメーカーに返却され、将来のプロジェクトで再利用される。
建築で発生する二酸化炭素量を削減するためには
「From 4 to 1 Planet」は、住宅建築による気候変動への影響を現在の4分の1に削減することを呼び掛けている。
3つの建造物は、土などの代替材料で作られたもの、従来型素材とバイオベース素材を組み合わせた藁葺き(わらぶき)レンガブロックの住宅、一人当たりの面積をいかに少なく設計して二酸化炭素量を削減するかを提案している。
パビリオンは展示終了後、すべて別の場所で使用される。
茅葺きレンガブロックの住宅を紹介し、断熱性、強度、耐火性の要件を現実的に満たす合理的な建築システムを提供する。
スラムでの排泄物を再利用
Architects Without Borderのパビリオンは、基本的な衛生機能を通じて、密集したスラム街に重要なサービスを提供し、同時に社会的な中心地となることを目的としている。
展示後は非政府組織アクションエイドのデンマーク支部に寄贈される。
日照時間が少ない北欧で体験する、昼の光の影響力
「ポエティック・デイライト」パビリオンでは、昼の光によって建物の雰囲気がいかに変わるかを知ることができる、
パビリオンは展示後はデンマークの大学に移され、日照条件のさらなる調査が行われる。その1年後は3つ目の最終的な場所に移される予定。
プラスチックは持続可能な社会に必要な素材?
バイオ材料の供給だけでは需要を満たせない可能性が高い。
合成素材、プラスチック、その他のポリマーの多くは、耐久性があり、軽量で、安価で、成形が容易であると同時に、これらの特性を備えている。
「プラスチックは持続可能な社会の確立に大きな役割を果たしている」というのが、この「プラスチック」パビリオンの主張だ。
パビリオンは解体して再利用できるように設計されており、その後もフェスティバルや野外集会など別の場所で使用される予定。
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どのような展示空間を作るかは、企業やイベント主催者にとって身近なテーマだろう。
展示によって「どれほど自分たちがサステナブルか」を主張するだけだけで満足していないだろうか。
「目の前の展示物がこれからいかに再利用されるのか」、それとも「廃棄物となって捨てられるのか」も問われる時代がくる。
求められる情報の透明性と開示を念頭に置いて、これからの展示スペースを描いていきたいものだ。
Photo&Text: Asaki Abumi