「議員報酬1億6千万円」の行方どう選ぶ? 給付金や消費税…若い世代の暮らしに役立つ公約とは
10月31日は衆院議員選挙の投票日です。選挙で投票することに敷居の高さを感じている若い人が多いことは、投票率の分布を見れば明らかです。筆者が大学生を対象に、選挙について聞いてみたところ、「よくわからないから行かない」、「誰に投票したらいいかわからない」、「選挙で世の中が変わるようになったら選挙に行く」など、ご尤もな意見が多く、「国民の権利として選挙に行く」と答えた人はわずかでした。堅苦しく考えず、「税金から年収4000万円×4年=1億6000万円受け取る人」を選ぶ抽選会だと思ってはいかがでしょうか?
政党公約を読んでも、比較しても、「よくわからない」と、誰しも思うところではないでしょうか。そのため、所属団体や街頭によく来てくれる議員さんを選ぶという人も多いでしょう。
筆者が執筆のために政党公約を比較する場合には、「消費税は下がる?」「給付金はもらえる?」「投資環境はどうなる?」「子育てしやすくなる?」「誰にメリットがある?」などの具体的な視点をモノサシに使います。でないと、どの政党もいいことを言っているように見えます。ですから、今回皆さんは自分の生活に役立ちそうなことを公約にしている政党はどこか?という視点で考えるといいでしょう。
今回、政策比較については学生NPOが母体であるJAPAN CHOICEのウェブサイト、「政策を比較する」(https://japanchoice.jp/policy-comparison/)を利用しています。17の大きなテーマとその中に複数の小テーマが存在し、選挙がはじめての人も経験者も大枠のテーマだけでも考える機会になります。この記事が比較、評価、そして有権者それぞれの判断の一助になれば幸いです。
■若者の投票が増えれば投票率が上がり生活が変わる?
(1)消費税(財政・税)
今回の選挙において、若者の投票が増えれば変えられそうなことの1つに消費税があります。自民党、公明党などの与党は消費税を10%で維持する方針。一方で野党は、条件が違えど、消費税の一時的な減税、恒久的な廃止など、10%を維持する政党はありません。
自民党と公明党が政権を維持できなければ、消費税は5%以下になります。もし、それが叶わなければ、現在の野党は公約違反だったということが言えるのです。
消費税は、国民目線ではもっとも大きな争点と言えるでしょう。
(2)給付金(コロナ経済支援)
給付金に積極的なのはお財布の心配をしなくてすむ野党です。実施に後ろ向きに見える政党、巨額の給付金をうたう政党から、対象を絞って給付しようとする政党まで様々です。給付金目線だけで政治家・政党を選ぶのはおすすめしませんが、1つの論点ですから、判断材料になります。明らかに無茶な政策を掲げている政党もありますから、実現を期待できるか考えてみましょう。
(3)投資環境(財政・税)
野党が政権奪取すると、金融所得といって銀行の預金、郵便局の貯金、個人向け国債、株式、債券、投資信託などから受け取れる利子や配当などの利益に対する増税が待ち構えていそうです。
投資にはマイナスの影響がありますから、年金財源、iDeCo、NISA、つみたてNISAにも短期的に値下がりなどの影響がありそうです。
預貯金の利子は普通金利が0.001%と限りなくゼロに近いので、あまり影響は無さそうですが、iDeCoやNISAをきっかけに非課税制度以外の投資を始めた人にとっては、リスクに見合わない税負担を課される可能性が出てきます。
(4)誰にメリットがある?
消費税は富裕層に有利な税制とされているため、消費税の減税は富裕層以外の国民や居住者にプラスの影響があります。そして、金融所得課税は、富裕層に限定した増税、あるいは富裕層以外には減税になる可能性も秘めています。
■給付金と消費税はどちらが生活を楽にしてくれる?
野党を中心に給付金の支給に前向きです。一方で、前回の一律給付金は、一部は消費に回ったが、貯蓄に回った部分が大きいという指摘がありました。本当に必要な人に重点的に届けることができなかった可能性があります。
もし、消費税が5%減税になった場合と、給付金10万円を受け取った場合何が違うかを考えます。財源は、国民に一律10万円支給すると12兆円の財源が必要で、消費税を5%減らすと10兆円の財源が必要になります。両方実現すれば22兆円と巨額になるため、実現可能性が下がるかもしれません。
10万円を5%で割り戻すと、200万円になります。200万円分の物品・サービスを購入すると、消費税5%相当として10万円になります。一人で200万円以上の支出があるかどうかを計算すると、損得がわかるでしょう。
一人世帯で10万円受け取れば、200万円消費したのと同じ効果。4人世帯で40万円受け取れば、800万円消費したのと同じ効果です。家族でいくら使っているかを考えてみましょう。筆者の感覚的には給付金の方が得かもしれません。
消費を増やして経済を回すという意味では、短期的に給付金の効果はありそうですが、長期的に消費税減税の方が効果はありそうです。給付金は消費に一部しかまわらないが、消費税減税はお金を払う時にはじめて効果を実感できます。
他に、一部の人に対する給付金なのか、全員一律の給付金、子育て世代への給付金なのかで、受取の可否が変わります。それらをふまえて投票先を考えるのもいいかもしれません。
■子育てに予算がつかないのは若者が投票しないから?
子育て関連の公約としては、「待機児童を減らす」、「幼児教育無償化」、「保育士の待遇改善」、「高校無償化」など、テーマはいくつかありますが、今回の選挙を左右するほどのインパクトはありません。それは、若者や子育て世帯が選挙に行かないことと無縁ではありません。
筆者は以前、ある地方自治体の議員から「子育ては票にならない」という現状を聞きました。それも複数の議員です。「子育て支援に向けてがんばります!」と声高に唱えても、子育て世帯が投票しないため、選挙に当選するという目的を達成のためには役に立たず、「言うだけ無駄」になっているのです。
さらに、未来の子育て世代である18歳未満は選挙権がありませんから、児童や生徒に向けた政策を声高に叫んでも、投票すらできません。
結局、当選したいなら選挙に来てくれる人たちにメリットのある政策を公約とすることが求められます。一方で、自分たちに有利な制度づくりを希望する人たちは、自ら団体を作り、政治家と接点をもって政策を提言します。もしかすると、親を巻き込んで子育て政治団体をつくって、子供たちが政策を考えるような活動が今後始まるかもしれません。
例えば、子供が生まれたら教育にしか使えないクーポンを1000万円分、有効期間は25年使えるようにしたらどうでしょう。親が使い込まずに、子供の乳幼児教育、習い事、学校教育、受験などに限定して使えるお金があれば、細かい内容を議論する必要はありません。お金があれば、国が頑張らなくても民間サービスを活用することで子育て世帯のゆとりは大きく改善し、改善されない出生率も回復するでしょう。
そんな政策が出てこないのも、子育て世帯の選挙におけるパワーが弱いからにほかなりません。投票に行かないという選択が、自分たちの生活環境を悪くしていると考えるべきでしょう。
■若者が投票に慣れるために大人にできることは?
親が子供の意見を聞いた上で投票することです。我が家では今回の選挙は、子供に投票する人や政党を選んでもらうことにしました。やはりと言うべきか、親は選ばない人や党を選びました。実際に投票するのは親ですが、子供の意見を反映させるという意味で、意義があると考えます。
自分で投票先を選べれば、自然と政治に目を向けるようになります。子供たちはテレビやニュースで見える政治が茶番劇に見えるようです。政策のみの比較であれば、フラットな視点で公約を比較できます。投票してみて、当選した政治家がどんなことをやるのか、あるいは何もしない口先政治家だったのかは4年間かけて判断するしかありません。
子供たちが社会に出て経済を担うタイミングまでに、衆参あるいは自治体の選挙は何度もあります。投票した人が落選したら、理由を考えるでしょう。当選したら、有言実行か確認できます。子供自身が政治に目を向けることが、子供たちのためにとっても最善であると考えます。
個人的には子供にも親や親権者が代わって投票できるよう、一部参政権を認めれば、子育て世帯の票数は倍増しますから、子育て世代向けの選挙公約が増えると考えます。
■それでも誰に投票すべきかよくわからないなら・・・
親や家族、親族に話を聞いたり、LINEで友達に聞くもよし、ツイッターで検索するもよし。誰かしら意見を持っている人がいるでしょう。何も投票しないより、誰かの意見を参考に投票した方が良いでしょう。一度投票を拒否してしまえば、いつまで立っても状況は変わりません。自分なりに聞いたり調べたりした結果を、投票という形でフィードバックするようにしましょう。あなたの投票に文句を言う人は誰もいません。安心してください。あえて親と違う政党に投票するという作戦も有りだと考えます。
今の政治は企業や団体などの組織票に重きを置かれています。団体とつながりのない若者が、よくわからないなりに投票することで投票率が上昇すれば、与党も野党もこれまで無党派層とされていた非投票層を意識した政策に方向転換するはずです。若者という組織票を作るのです。
選挙未経験の若者が投票してくれるとわかれば、各政党は味方になってもらうための努力をするでしょう。未経験者を味方にする方が、他の政党の味方を自分の味方にするよりもスムーズだからです。
筆者が成人してから、リーマンショック時と東日本大震災と二度の危機では政権が交代してきました。今回はコロナ禍と呼ばれる危機の中で、どのような国民の審判が下されるのか興味をもって投票しようと思います。年収4000万円の国会議員選びに、自分も参加したいですから。