オートバイのあれこれ『Z、ニンジャに続いた“カワサキの900”。ZX-9R』
全国1,000万人のバイク好きたちへ送るこのコーナー。
今日は『Z、ニンジャに続いた“カワサキの900”。ZX-9R』をテーマにお話ししようと思います。
カワサキのオートバイ・ヒストリーが語られる時、たまに出くわすワードがあります。
「マジック9(ナイン)」。
「9」とは、900ccのこと。
カワサキは900ccのバイクで一世を風靡してきた歴史があり、「カワサキの900ccはいつも名車になる」といった意味も込めて、この「マジック9」という表現が生まれてきました。
最も有名なのはやはり、1972年(昭和47年)に誕生した「Z1」こと『900SUPER4』でしょう。
カワサキはライバルのホンダ『CB750FOUR』を打ち負かすため、Z1を900cc(903cc)で開発。
このZ1が、マジック9の始まりとなりました。
そしてこのZ1に続いたのが、84年(昭和59年)デビューの「ニンジャ」こと『GPz900R』でした。
GPz900Rも排気量900cc(908cc)のエンジンで世界最速の座を手にし、Z1と同じく名車の仲間入りを果たします。
二度目のマジック9が、このGPzだったというわけですね。
「カワサキの900」と聞くと、やはりこの2台の存在感がかなり大きいかと思いますが、実は90年代にも、マジック9が活きたモデルがありました。
それは、1994年(平成6年)デビューの『ZX-9R』です。
Z1やニンジャがそうだったように、ZX-9Rもまた、日本のバイクシーンを彩った存在だったといえます。
ZX-9Rは、それまでの日本車にありそうで無かった“レーサーレプリカ×ツアラー”のハイブリッドマシンでした。
カワサキは、当時ラインナップしていたレーサーレプリカモデル『ZXR750』とツアラーモデル『ZZR1100』の「間の子」を目指して9Rを企画。
ZXR750の車体をベースに、ZZR1100の強みである実用性をトッピングするやり方で開発を進め、また排気量も、ZXRとZZRの中間点として丁度良いポイントを探った結果、900cc(899cc)に設定されました。
完成した9Rは、ピークパワー139ps&車重243kgと、まさにZXRとZZRの間をいくスペックを獲得。
ZXR750(1993):118ps/221kg
ZX-9R(1994):139ps/243kg
ZZR1100(1993):147ps/256kg
ワインディングロードではZXR譲りの鋭いハンドリングを、ハイウェイではZZRの余裕と安定性を味わえるモデルとして9Rは登場し、世間からは新感覚のオートバイとして注目を集めました。
正直なところ、90年代半ばの頃というのは『ゼファー』等のネイキッドモデルが流行っており、9RのデビューはZ1やニンジャの時ほどのインパクトはありませんでした。
とはいえ、9Rが「快適スーパースポーツ」という新たな価値・潮流を創造したのは事実で、その意味においてカワサキのマジック9は見事に発揮されたといっていいでしょう。
三度目のマジック9が、このZX-9Rだったのです。