好評開催中!動物絵本シリーズの作家が見せる木版画の世界【東御市】
偉大な父の影に隠れ、これまで注目されることが少なかった吉田遠志(よしだとおし)。初の回顧展が東御(とうみ)市の丸山晩霞(まるやまばんか)記念館で開催されています。
「動物の絵本シリーズ」で遠志の作品に触れた方も多いのではないでしょうか。
「長い沈黙から目覚め、ようやく光が当たる。」
吉田遠志についての資料は少なく、今回の展示会を開催するまでには3年もの準備期間が必要だったそうです。本展示会では、これまで知られることのなかった作家の軌跡をたどり、その魅力をじっくりと味わうことができます。
息をのむほど美しい木版画
丸山晩霞記念館の佐藤館長に、展示会の見どころをお聞きしました。
「息をのむほど美しい木版画を見てほしい」
一言でまとめるのは難しい…と悩みつつ、そう語ってくれました。
佐藤館長の案内で、まずは初期の木版画作品を鑑賞。
夜の新宿が描かれた作品では、酔客の笑い声や食器の触れる音、蕎麦の香りまでが漂ってくるようです。
「この路地の奥まで行ってみたくなるでしょう?」
その言葉どおり、ほんのりと照らされた路地の奥へと引き込まれます。
高い技術で表現される、遠志の人生観
そして、アフリカの野生動物をテーマにした時期の作品。
サバンナの動物たちが、驚くほど精緻な線と陰影で描かれています。
こちらは、1974年の作品「思いのほか平和な野生動物たち」で描かれているライオン。
その滑らかな毛並みとしなやかな筋肉の隆起に、遠志の卓越した技法が光ります。
思わず感嘆の声を漏らす佐藤館長の表情からも、その完成度の高さが伝わってきます。
私たちは見つめられている――作品が語るメッセージ
「自然は、生命からできていて、みんな平和に共存している。」(主催者の言葉より)
遠志がアフリカで出会った動物たちから感じた思い。その思いを作品を通して共感してほしいと佐藤館長は語ってくれました。
子ども時代の記憶――あの絵本シリーズ
1982年から制作をはじめた「動物絵本シリーズ」。世代によっては懐かしく思う方も多いでしょう。
遠志おじいさんの語り口で淡々と進行する野生動物たちの物語は、サバンナで繰り広げられる生命のドラマそのものでした。
シリーズは「はじめてのかり」でスタートし、全20巻を予定していましたが、17巻で終わります。
最終巻「かれえだ」は、遠志自身が死期を悟ったかのようなシーンが描かれており、非常に印象的です。
最後の12年をかけて遠志が取り組んだ集大成とも言える動物シリーズ。色鉛筆で描かれた原画をぜひ間近でご覧ください。
展示会の詳細とイベント情報
前期・後期の2部構成で行われ、展示作品の大半が入れ替わります。前期は20日まで。お見逃しなく!
そして、連休の最終日14日には佐藤館長のトークイベントが開催されます。記事ではお伝えしきれなかった話を直接聞けるチャンスです。
佐藤館長のギャラリートークイベント
「吉田博から吉田遠志へ:父から子へ」
新版画から一線を画した吉田博、その伝統を受け継いだ遠志との関係や、遠志独自の世界感などをご紹介します。
日時:10月14日(月・祝) 13:30 〜(申込不要:先着100名程度まで)
丸山晩霞記念館
住所:〒389-0515 東御市常田505-1
電話番号:0268-62-3700
開館時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:年末年始、展示替え期間(要確認)
公式サイト:丸山晩霞記念館 (外部リンク)
Instagram:公式アカウント (外部リンク)
X(エックス):公式アカウント (外部リンク)
入館料
常設展:一般200円/障がい者無料(同伴者1名も含む)
企画展:一般500円/障がい者300円(同伴者1名も同じ)
アクセス
車:上信越自動車道 東部湯の丸ICより約2分
電車:しなの鉄道田中駅下車 徒歩約15分 タクシー約3分
(駐車場) 普通車300台・大型車20台(無料)
取材協力:丸山晩霞記念館 佐藤聡史様
吉田遠志展目録(2,000円)作品資料目録(1,000円)の2冊をご提供いただきました。