ファスト映画5億円損害賠償裁判の判決文が公開されました
いわゆる「ファスト映画」による著作権侵害の民事訴訟において、侵害者に5億円の損害賠償支払が命じられた件についてちょっと前に書きました。その判決文がもう裁判所サイトに公開されていました。5億円の算定根拠が気になるところです。
結論から言うと、根拠は著作権法114条3項(ライセンス料相当額)です。以前書いた記事では、114条1項ぽい書き方(断定ではないですが)をしてしまいましたが、それは誤りでした(元記事にも追記しておきます)。そもそも、114条1項は、物の譲渡やコンテンツのダウンロード提供にしか適用されませんので、YouTubeのような閲覧型のサービスには適用されません。
114条3項だとすると、1視聴あたり200円はちょっと高すぎないか(エンドユーザーが支払う料金ではなくて、YouTubeが映画会社に払うライセンス料(ロイヤルティ)である点に注意)と思ったのですが、判決文の算定根拠に関する裁判所の判断は以下のようになっています。
通常の映画全体のライセンス料が280円(400円×70%)とすると、もしファスト映画にライセンスするとするならばライセンス料200円というのはどうなのかと思ってしまいますが、被告側は「事実は認め、主張は争わない。」ということで、価格的に原告側の主張がそのまま認められています。この件が最初に報道された時に、メディアの記事では、被告側が故意に著作権を侵害したことを認めたことは明らかだったのですが、損害額に関する主張について争ったのかどうかがよくわからなかったのですが、完全にまな板の鯉状態だったわけです。
まさか、被告側は代理人を付けない本人訴訟かと思いましたがさすがにそのようなことはなく、弁護士が代理人についています。ゆえに、被告が弁護士と相談した上でこのような対応を取ったものと思われます。
反論もできないほど反省しているのか、裁判の過程において争っても無駄なことが明らか(下手すると損害賠償額を増額される可能性がある)になったのか、仮に争ってたとえば5億円を1億円に減額したところで払えないのは同じと考えたのか、あるいは、どっちにしろ「ひろゆき方式」で逃げ切れると考えたのかは、わかりません。
被告も原告も控訴することは考えにくいので、この判決は地裁で確定してしまうことになるでしょう。いずれにせよ、「ファスト映画」のアップロードが割の合わない行為ということがいっそう明確になったと言えるでしょう。