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不安だらけの森保ジャパン。変わりきれない森保監督に求められることは?【ベトナム戦出場選手採点&寸評】

中山淳サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人
(写真:ロイター/アフロ)

多くの疑問を残した森保監督の選択

 2勝2敗で迎えたカタールW杯アジア最終予選第5戦。森保ジャパンは、グループ最下位のベトナムとアウェイで対戦し、0-1で勝利。これで3勝2敗とし、ようやく勝ち星を先行させることができた。

 グループBの順位表でも日本は3位に浮上し、首位サウジアラビアと勝ち点4ポイント差、2位オーストラリアとは勝ち点1ポイント差に接近。次のオマーン戦で勝利を収めることができれば、今後グループBは三つ巴の展開になる。

 ただ、回復基調となっている星取り勘定とは対照的に、森保ジャパンのパフォーマンスは相変わらず低調だ。布陣を4-3-3にして、中盤の選手も変更した前回オーストラリア戦に続き、今回のベトナム戦も、最後まで攻撃を機能させることはできなかった。

 アウェイ戦とはいえ、グループ最下位のベトナム相手にわずか1ゴール。トータル66.9%のボール支配率を記録しながら、伊東のゴールシーン以外に作った決定機も2~3回しかなかったのだから、次のオマーン戦に明るい希望を見出すことさえも難しい。

 W杯予選は、内容よりも結果が大事。確かにその通りだが、これまで戦った5試合を振り返ると、日本が持っている実力の半分も出せていないのは明らかだ。それは、勝ち点3を手にできた第2節の中国戦、第4節のオーストラリア戦、そして今回のベトナム戦の戦いぶりが証明している。

 内容よりも結果が大事、というフレーズを以てしても、なかなか現在の成績をポジティブに消化できない理由はそこにある。それこそが、過去のW杯予選における日本とは明らかに異なっている、見落とせない重要なポイントだ。

 このベトナム戦で、森保監督は再び中盤にボランチ3人を配置する4-3-3を採用した。その理由として、欧州組11人の到着が遅れて全体練習が前日の1時間しかできなかった点を挙げ、その状況で「選手を変えると絵(イメージ)を合わせるのが難しい」とした。

 つまり、まだ1度しか採用経験がなく、しかも戦術的に半分も機能していない新布陣4-3-3の方が、約3年にわたって一貫して使い続けてきた4-2-3-1よりも、絵(イメージ)を合わせやすいと判断したことになる。

 しかも、前半17分という早い時間帯に先制点を挙げて大量ゴールを狙える状況を手にしたにもかかわらず、攻撃が機能していない数々の現象を目の当たりにしながら、最後まで攻撃の駒を増やすこともしなかった。

 特に後半は、守備ラインが下がって5バックで引いて守るベトナムにカウンターを浴びるリスクが低下した中、三苫のような個人で2~3人をはがせる駒をピッチに送り出すこともしなかった。逆に、DFラインの背後にスペースがある状況で力を発揮できるスピード系の駒を前線に並べる策をとった。

 戦局は、格下相手に大量ゴールを記録したアジア2次予選に酷似していたにもかかわらず、結局、森保監督は最後まで布陣を4-2-3-1に変えなかった。中央への縦パスとサイド攻撃を繰り返しながら、相手の守備網を広げてゴールをこじ開ける訓練を積んできたこれまでの3年間は、一体何だったのか。

 もちろん、4-2-3-1にすれば必ずゴールが奪えたとは思わないが、少なくとも、これまで積み重ねてきた戦術を指揮官自らが信用していないという事実に、絶望感を感じずにはいられない。

 前回のオーストラリア戦で、自身の進退問題がかかるほど窮地に追い込まれた森保監督は、それまでに見せたことのない大きな変化を見せた。

 しかし、どの戦術も機能しきれず、チームが持っているはずの実力の半分も出せていないこの状況で求められているのは、日頃から指揮官がよく口にしている「柔軟性」、あるいは「臨機応変」という姿勢だ。

 再三指摘された5人交代制の活用については、確かに改善の兆しは見られている。しかし、その交代カードは「長友→中山、南野→浅野」(63分)、「田中→柴崎、大迫→古橋」(75分)、「守田→原口」(88分)と、かなり保守的な交代策。その交代で、指揮官は攻撃的にしたかったのか、守備的にしたかったのか。

 今回のベトナム戦を見る限り、まだまだ森保ジャパンは変わっていないと見るのが妥当だろう。森保監督が変わりきれていないのだから、チームが状況を変えられないのも当然と言える。

 次は、ベトナムや中国よりも実力が上回るオマーンが相手。この試合で再び苦戦するようなら、W杯でベスト8を目指すどころか、本大会行きの切符を手にすることさえも高いハードルになるだろう。

※以下、出場選手の採点と寸評(採点は10点満点で、平均点は6.0点)

【GK】権田修一=6.0点

前半に相手CKが右ポストを直撃したシーン以外にゴールを脅かされたシーンはなかったが、終始堅実かつ落ち着いたプレーを見せた。ビルドアップ時も安全第一の選択をしていた。

【右SB】山根視来=5.5点

伊東が単独で右サイドを突破できていたこともあり、攻撃面で目立ったプレーは少なかった。守備バランスを意識していたため、持ち味は出せなかった。守備でも数回綻びを見せた。

【右CB】吉田麻也=6.0点

22番に反転されて突破を許したシーンが1度あったが、それ以外は守備面で綻びを見せることはなかった。前線へのフィードを何度も狙ったが、この試合では精度が高くなかった。

【左CB】冨安健洋=6.0点

守備では自慢のスピードや高さを生かして、コンビを組む吉田とともにほぼ完璧な対応を見せた。ビルドアップの時にも中盤に効果的なパスを供給したが、好機にはつながらず。

【左SB】長友佑都(63分途中交代)=5.5点

頻繁に高い位置をとったものの、相手の布陣が5バックだったことも影響してクロス供給が少なかった。効果的なプレーが少なく、後半途中で中山と交代してベンチに下がった。

【アンカー】遠藤航=5.5点

守備面では前に出てボールを奪い、攻撃面でもシュートを含めて積極性を見せた。これまでの試合と比較すると全体的にボールタッチが少なく、攻撃の起点になれずに終わった。

【右インサイドハーフ】田中碧(75分途中交代)=5.5点

パス回しが左サイドに偏っていたことも影響し、DFと前線のつなぎ役として効果的なプレーが少なかった。前半早々の南野のシュートを演出したクロスが最も効果的だったプレー。

【左インサイドハーフ】守田英正(88分途中交代)=6.0点

長友が攻め上がった時のカバーリングをこなすなど、左の広いエリアを攻守両面で支えていた。85分のイエローは、ゴールチャンスでGKに飛び込んだがゆえの仕方のないカード。

【右ウイング】伊東純也=7.0点

南野のクロスに合わせた先制ゴールやVARによるオフサイド判定で取り消されたシュートなど、この試合で最も輝いていた。攻撃だけでなく、守備でもスピードがよく生きていた。

【左ウイング】南野拓実(63分途中交代)=6.0点

先制ゴールのシーンでは、荒いピッチだったにもかかわらず精度の高いクロスを供給してアシストを記録。ただ、それ以外ではシュートミスなど良いパフォーマンスではなかった。

【CF】大迫勇也(75分途中交代)=5.5点

相手の日本対策もあって厳しいマークに遭い、得意のポストプレーからチャンスを作れずに終わった。シュートも1本しか記録できず、エースストライカーとしては物足りない。

【FW】浅野拓磨(63分途中出場)=5.5点

南野に代わって後半途中から左ウイングでプレー。前回オーストラリア戦のようにゴールを決められなかったが、短い時間で左からクロスを3本供給。ただ、精度は高くなかった。

【DF】中山雄太(64分途中出場)=5.5点

長友に代わって後半途中から左SBでプレー。少しずつプレータイムを伸ばしているところを見ると、近いうちに先発の可能性もある。プレーは堅実で、攻撃面でも積極性を見せた。

【MF】古橋亨梧(75分途中出場)=5.5点

大迫に代わって後半途中から1トップでプレー。自らシュートを狙うことはできなかったが、相手ボックス内の左右からチャンスボールを供給して惜しいシーンを演出していた。

【MF】柴崎岳(75分途中出場)=5.5点

田中に代わって後半途中からインサイドハーフでプレー。81分には相手ボックス内左から2度にわたってシュートを狙ったが、惜しくも決まらず。及第点のパフォーマンスだった。

【MF】原口元気(88分途中出場)=採点なし

守田に代わって後半途中からインサイドハーフでプレー。出場時間が短く採点不能。

サッカージャーナリスト/フットボールライフ・ゼロ発行人

1970年生まれ、山梨県甲府市出身。明治学院大学国際学部卒業後、「ワールドサッカーグラフィック」誌編集部に入り、編集長を経て2005年に独立。紙・WEB媒体に寄稿する他、CS放送のサッカー番組に出演する。雑誌、書籍、WEBなどを制作する有限会社アルマンド代表。同社が発行する「フットボールライフ・ゼロ」の編集発行人でもある。

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