【名古屋・性犯罪無罪判決】控訴審が結審、弁護側は実父の無罪を改めて主張
一審の名古屋地裁岡崎支部で無罪判決となった、実父から19歳への準強制性交等罪事件。1月14日、控訴審が名古屋高等裁判所で結審した。
検察側は、証人として出廷した小西聖子精神科医の証言から被害者の抗拒不能を改めて主張。弁護側は、精神科医の証言は信用性に乏しいとし、無罪を主張した。
名古屋地裁岡崎支部の一審では、娘が中学2年生の頃に性的虐待が始まったことや、事件より前に、抵抗した被害者の顔や足に被告が暴力をふるった事実を認定。性交が被害者の意に反していたことや、心理的に抵抗できない状況だったという精神科医の証言についても信用性を認めた。
一方で、被害者が抵抗して拒否できたこともあった事実などから、事件当時に抗拒不能の状態だったと断定するには「合理的な疑いが残るというべき」として、懲役10年の求刑を避け、無罪が言い渡されている。
検察側は前回出廷した小西医師の証言に基づき、「性暴力は弱い者に対する暴力」「親から長期間にわたって繰り返し被害を受け、被害者は逃げ出せない、抵抗できない、被害を被害と認識できない状況で無力感や自責感を感じ、部分的なPTSDを示していた」ことなどを主張。
「4日間15時間にわたって鑑定を行った小西医師の証言は信頼できる」「抵抗の意志が奪われていたことと、(実父に入学金負担を依頼したことなどの)日常生活は両立する」「本件は中学生の頃から続く長期間にわたる性虐待が終わる寸前の2件であり、被害者が無力感を覚えてさしたる抵抗をできなかったのは論理則、経験則から考えて明らか」とし、被害者の抗拒不能を認め、「適正な判決が言い渡されることを求める」と締めくくった。
弁護側は、「小西証言には影響されず無罪」を主張。
小西医師の鑑定が事件から2年後で「被害者の記憶が修正」された可能性があることや、「複雑性PTSDという鑑定は小西医師の独自のものであって一般的ではないこと」「一審でPTSDや適応性障害に当たらないと証言した精神科医の信用性が高い」ことなどから、被害者が事件当時に抗拒不能の状態だったことを否定。改めて無罪を主張した。
名古屋高裁には、支援者らが傍聴に駆けつけた。傍聴席には、同様の事件を経験した女性の姿もあった。この女性は、娘が離婚した夫から強制わいせつ被害に遭い、警察に相談したものの暴行・脅迫要件の壁から「強制わいせつ」での立件が見送られた。
「被害者に冷たい司法を変えたい」思いで傍聴に来たと言い、「子どもの心を殺しておいて、無罪を主張するのは信じられない思い」「身内だからこそ抵抗できないことがある。この事件でも被害者は弟の将来を気にして被害を言えない状況があった。家族からの被害を訴えづらい複雑な状況を考慮してほしい」と語った。
判決は3月12日。
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