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「城田優がブレークしたことは一度もない」。城田優を衝き動かす自己分析と“ど真ん中”への思い

中西正男芸能記者
自らへの思いをストレートに語った城田優

 190センチの体をさらに大きく見せる存在感で、ミュージカルスターとしての道を歩む城田優さん(34)。新型コロナウィルスの感染拡大で、7月に発売予定だった初のJ-POPカバーアルバム「Mariage」も今秋に延期となりましたが「発売までの時間ができたので、より良いものにするチャンスをいただけました」とポジティブに話します。常に前を向いて歩を進める。その原動力となっているのは「城田優がブレークしたことは一度もない」という自己分析、そして“ど真ん中”への思いでした。

中身が変わらないのはつまらない

 カバーアルバムというのは僕がやりたかったことで、去年から動き始めていました。本来なら、今の時点で既に発売されているはずだったんですが、コロナ禍であらゆる工程が止まってしまいまして。

 ただ、期せずして発売までの時間が生まれたので、さらに音にもこだわって、より良いものを作るチャンスをいただけました。

 エンターテインメントというのは答えがないものだし、どこまでいっても、それが正解かどうかも分かりません。ただ、その中でも少しでも良いものにしようと努めること。ここには意味があると思いたいし、逆にいうと、発売日が延びたのに中身が何も変わらないというのは、エンターテインメントとしてはつまらないんじゃないかなと。

 アルバムの選曲に関しては、これまで僕が触れてきて「今、自分がこれをカバーしたら面白いんじゃないか」と感じる曲を揃えました。

 “今”という部分に大きな意味があると思っていて、最初にその曲を聞いたのが10代だとすると、その頃はお酒やたばこの曲を歌っても、本当の意味では曲を理解できていない。歌詞の世界観を想像はするものの、実感として理解できていないといいますか。

 例えば、バーボンという歌詞があっても、今ならバーボンがどんなもので、どんな味で、飲んだら自分の中でどう作用するのか。それが体感として分かっている。その上で歌うと、また曲の風合いが変わってくると思うんです。

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「君が成功するのは難しい」

 それだけ時間を積み重ねてきたということですし、去年はちょうど芸能事務所に所属して20周年だったんです。いい意味でも、悪い意味でも、当時はこんなに強くなかったですし。今でも弱い部分はたくさんあるんですけど、当時は本当に何も知らない、ただエンターテインメントに憧れを持っているだけの13歳の男の子でした。僕にも、そんな時代があったんです(笑)。

 当時の僕が想像していた未来で、実現したものもありますし、そうでないものもあります。「東京ドームでコンサートをする」というのは全く実現していないですけど(笑)、お芝居をしたり、歌ったりということを仕事にはできている。自分が思い描いていたことが、この20年で次から次へと起こっていきました。そういった意味では、すごくラッキーだと思います。

 世に出たいと思っている人がたくさんいる中で、絶対に“ふるい”にかける作業が出てきます。みんながみんなトップにはなれませんから。

 その中で、どれだけ歌がうまくても、お芝居がうまくても、容姿端麗でも、ふるいの中に残れない人たちは絶対にいるんです。そして、これも厳然たる事実として、ふるいにかける際、全員を完全に同じ温度で、同じ角度で、同じ熱量でチェックするのは非常に難しいことです。そこにも絶対に運が介在します。

 もちろん、何かをやろうと思ったら、努力をしないといけない。何の努力もしていないのに大成功した人は誰もいない。

 だから、努力をするのは“特別な要素”ではなく“当たり前”のこと。当たり前なものは省いて考えていくと、ふるいから落ちる人と残る人、何が違うのか。そこの差を分ける大きな要素は運だと思います。

 10代の頃、プロデューサーさんや監督さんに、幾度となく言われてきたことがありました。「君が成功するのは難しい」と。オブラートに包んで言う人もいましたし、ストレートに言う人もいましたけど、とにかくよく言われました。

 ハーフ。そして、この身長。それで俳優を目指す。その時点で「成功するのは難しい」。言ってしまえば「君には絶対に運が向かないよ」ということなんです。日本の芸能界で成功するためには、城田優の風貌はネガティブな要素になると。

 これはとてもセンシティブで、誤解を生みかねない話になるかもしれませんが、僕自身がそことずっと向き合ってきたので、そこは誰よりも実感している部分でもあります。

 実際、ハーフで、190センチクラスの男性で、アクター、もしくはシンガーを挙げてくださいとなったら、出てこないです。おこがましいですけど、僕がやってきたことにより、ある種の“道”ができたので、後から歩いてくる人は僕よりは歩きやすいはずなんです。それでも、若い人の中でも同じような人はなかなか出てこない。

 でも、文字通り、有り難いことに、何とか僕は20年この仕事をやることができました。そして、城田優という名前と顔をある程度は知ってもらえた。その時点で、それこそが奇跡みたいなものです。僕の存在自体が、運を証明しているとも言える。

“ど真ん中”への意識

 ただ、もう一方で、また違う角度から自分を見ている自分もいるんです。

 城田優の代表作は何ですかと言われたら、多分「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」(フジテレビ)、「ROOKIES」(TBS)、「SPEC」(TBS)なんかが出てくると思うんです。ただ、どれも主役ではない。主役じゃないものが代表作という時点で見えてくるものがあるだろうし、少なくとも、その作品は僕という存在に対してチームが乗ってきたものではない。

 城田優という名前を知ってくださっている方の人数は20年で増えたとは思います。でも、いきなりファンクラブの人数が一桁増えたとか、急に注目が集まったことはないんです。いわば、城田優がブレークしたことはまだ一度もない。城田優が関わってきたものでバズったものはあるけれど、城田優自身がバズったことはまだないんです。

 あと、ど真ん中の恋愛もので、ゴールデンタイムに放送されるようなドラマで、例えば、佐藤健や菅田将暉や山崎賢人や吉沢亮がやる役というのは、やっぱり僕には回ってこない。

 ミュージカルでは「ロミオ&ジュリエット」だったり「ファントム」だったり「エリザベート」だったり、自分がど真ん中に立たせていただく作品がいくつかある。でも、映像ではないんです。

 それは僕自身の問題も多分にあるだろうし、そして、やっぱりまだハーフの男の子がど真ん中をやっている作品って、なかなかないという現実もあります。これはあくまでも僕の見解です。重ねてになりますが、すごく難しくて、センシティブな領域の話をしていると思うんですけど、何より、僕が感じてきたことでもあります。

 なので、30周年に向けて、これまで成し得なかったど真ん中の部分。そこを目指していく。そのための勝負を続けていく。そして、城田優という名前をバズらせる。もし、それができたなら、13歳の時に目標にしていた「東京ドームでコンサートをする」というのも実現できるのかもしれません(笑)。

 もしかしたら、これは“執着”なのかもしれないです。もちろん、僕に力量的に至らない部分だとか、需要も含めて足りていないところはたくさんあると思います。でも、今回のカバーアルバムの話じゃないですけど、少しでも良くするように追い求める。それをやめることだけはしないでおこうと考えています。

 そして願わくば、数年後にまたインタビューしていただいた時に「あのときの話が実現しました」という文章を書いてもらえるよう(笑)、積み重ねをしていきたいと思っています。

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(撮影・中西正男)

■城田優(しろた・ゆう)

1985年12月26日生まれ。東京都出身。ワタナベエンターテインメント所属。TBS「ROOKIES」「SPEC」、フジテレビ「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」、NHK大河ドラマ「天地人」、連続テレビ小説「純と愛」など出演多数。2010年にはミュージカル「エリザベート」での演技が評価され、文化庁芸術祭の演劇部門で新人賞を受賞する。初のJ-POPカバーアルバム「Mariage」を今秋発売予定。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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