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朝鮮半島有事は先手必勝で「敵将の首を取れ!」 南北ともに「斬首作戦」を決行!

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
米韓特殊部隊の要人警護訓練(駐韓米軍特殊戦司令部のSNSから)

 戦国時代、乱世の時代は敵の大将の首を取った方が勝ちだ。運動会の見せ場であった4人一組の騎馬戦もまた、先に相手の大将が乗った馬を倒した方に軍配が上がった。

 近代の戦争でも敵の戦意を挫くため、また戦争を早期に終結させるため敵の統帥権者、最高司令官を狙った「暗殺」や「転覆」など様々な手法が用いられていたが、朝鮮半島でも有事が現実となれば、米韓連合軍は核戦争を阻止するため金正恩(キム・ジョンウン)総書記の除去を狙った「斬首作戦」を実行するものとみられている。金総書記が核のボタンを握っているからに他ならない。

 北朝鮮は9月に開催した最高人民会議で核使用に関する法令を定めたが、その中の第3項目の「核戦力に対する指揮統制」には▲我が国の核戦力は(金正恩)国務委員長の唯一的指揮に服従する▲国務委員長は核兵器に関連する全ての決定権を持つと定められている。

 核戦争を阻止するための米韓連合軍の「3段階抑止戦略」の第1段階は北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射や核実験などの威嚇には戦略爆撃機や原子力潜水艦を展開して牽制し、核兵器使用が切迫していると判断された場合の第2段階では精密誘導ミサイルで北朝鮮の核戦力を先制攻撃することになっている。第3段階は核を使用した場合の対応となっているが、核を使用されてからでは手遅れになるため「金正恩斬首作戦」は第2段階で実施される可能性が極めて高い。

 米韓には斬首作戦を遂行する特殊部隊がある。米軍は2011年にビン・ラーディンを殺害したネイビーシールズ「第1特戦団」やデルタフォース「第19特殊戦団」などその名が知られているが、韓国にも陸軍特殊戦司令部傘下に1千~2千人規模の特殊任務旅団が存在する。朝鮮半島の緊張が激化した2017年に創設されている。

 前年の9月に北朝鮮が5度目の核実験を実施したことに激怒した朴槿恵(パク・クネ)大統領(当時)は「(金正恩体制は)一人独裁政権の下で、非常識的な意思決定を行う体制である。金正恩の性格が予測しがたいことを考慮すると、北朝鮮の核やミサイルの脅威が現実化する危険性はとても高い」との危惧から特殊部隊を平壌に潜入させ、北朝鮮指導部を襲撃し、統帥権を握っている最高司令官である金総書記を排除することを目的に創設を命じたのである。

 駐韓米軍特殊戦司令部(SOCKOR)は米韓特殊部隊が米攻撃ヘリ大隊と合同で「斬首作戦」に基づく夜間練習を10月12日に行っていたことを約1週間後の20日に暗闇の中、建物の内部で活動している部隊の訓練の写真を公開し、北朝鮮に見せつけていた。しかし、「斬首作戦」は必ずしも米韓の専売特許ではなく、北朝鮮にも昔も今も存在している。

 北朝鮮がこれまで命を狙った韓国の大統領は延べ4人いる。そのうちの一人、初代大統領の李承晩(イ・スンマン)大統領は北朝鮮が手を出す前に学生革命によって1960年4月に倒され、直後に軍事クーデターで政権の座に着いた朴正煕(パク・チョンヒ)大統領に対して北朝鮮は1968年1月に特殊部隊(31人)をソウルに侵入させ、大統領府(青瓦台)襲撃を試み、1974年には在日韓国人・文世光を送り込み、朴大統領の暗殺を企てた。その後、朴大統領は側近の韓国中央情報部(KCIA)部長によって1979年11月に暗殺され、北朝鮮が直接手を下すには至らなかった。

 朴大統領亡き後、次に狙われたのが軍事クーデターで登場した全斗煥(チョン・ドゥファン)大統領である。北朝鮮の3人の特殊部隊要員が1983年10月にミャンマー・ラングーンを訪問した全大統領一行をアウンサン廟で待ち受け、爆破テロを仕掛けたことは公然たる事実で、このことは世界史にも記録されている。

 そして、4人目が朴槿恵(パク・クネ)大統領である。

 「核を放棄しなければ体制を存続させない」との強硬路線に転じ、「金正恩の核とミサイルへの執着を断ち、国と国民を守るためにできるすべてのことを行う」と強調し、「できるすべてのこと」のオプションとして金総書記の首を取る作戦が含まれていることを隠さなかった朴大統領に敵意をむき出しにした北朝鮮は朴大統領を「希代の悪魔」、「狂った雌犬」と罵り、2016年4月には朴大統領が鋭利な刃物で切り刻まれて出血したようなイラストが書かれたビラを韓国に向け大量にばら撒いていた。

 さらに、この年の9月14日に「我々の最高尊厳(金正恩総書記)に手を出した朴槿恵逆族一党には民族の峻厳な審判は避けられない」との題目の映像を3分間放映していたが、そこには朴大統領の似顔絵を標的にした射撃場面が映し出されていた。そして、11月には人民武力部(現国防省)作戦総局(第525部隊)傘下に特殊作戦大隊が編成され、実際に金総書記の視察の下、2016年11月に韓国大統領府(青瓦台)への奇襲攻撃訓練を実施していた。

 北朝鮮はソウル五輪(1988年)を潰す目的で決行した1987年11月の大韓航空機爆破事件を含め「青瓦台襲撃事件」も「ラングーン事件」もすべて韓国の「自作自演」「でっち上げ」と、しらを切っているが、「斬首作戦」の元祖はまさに北朝鮮である。

 韓国もそのことは十分に警戒しているようだ。金総書記が9月に韓国の国会にあたる最高人民会議での演説で「政権の座についた南朝鮮の保守政権(尹錫悦政権)は歴代のどの保守政権をも凌ぐ極悪非道な同族対決政策と事大主義的売国行為を追求し、朝鮮半島の情勢を戦争瀬戸際に追いやっている」と「北朝鮮主敵論」を前面に打ち出した尹政権を猛然と非難していたからだ。

 韓国国防部は最近、大統領室(旧青瓦台)が入っているソウル市竜山区の旧国防部庁舎周辺に不審者が侵入しないよう顔認識機能が搭載されている高性能の防犯カメラの設置を推進している。韓国が大統領の警護を強めていることの証でもある。

 また、SOCKORは韓国軍特殊戦司令部と合同で連合迅速対応訓練を12日に実施したことを公にし、米韓の特殊部隊隊員らが背広姿の要人を護衛し、ヘリコプターまで引導する場面を収めた写真を公開していたが、朝鮮半島の緊張が激化すればするほど尹大統領も金総書記同様にこれから不安な日々を送ることになるであろう。

(参考資料:ブレーキが利かない米韓と北朝鮮の「対決」 朝鮮半島情勢は半年で急速に悪化!)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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