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【Yahoo!ニュース 個人】7月の月間MVAとMVCが決定

(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

■Yahoo!ニュース 個人、7月の「月間MVA(Most Valuable Article)」と「月間MVC(Most Valuable Comment)」が決定しました

社会の課題を伝えている・議論を喚起している・読者の心に響く……などの観点で選出している「月間MVA」。記事のアクセス数ではなく、目指す世界観「発見と言論が社会の課題を解決する」「文化の発展に寄与する」を体現している記事を、編集部を中心とした運営スタッフがアナログで選出しています。あわせて、Yahoo!ニュース 公式コメンテーターによるニュースへの理解が深まるコメントとして「月間MVC」も選出しました。厳選4本の記事と3本のコメントを、筆者の受賞コメントとあわせてご紹介します。

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7月のMVA

医療従事者は新型コロナワクチン接種を義務とすべきか(忽那賢志)

筆者による受賞コメント:新型コロナワクチンを接種するかどうかは、接種するメリットとデメリットを理解した上で個々人で判断するものです。しかし医療従事者の場合は、ワクチン接種をしないことが直接患者さんへの被害につながることがあり、一般の方とは少し分けて考えるべきなのではないか、ということがこの記事の言いたかったことです。もちろんアレルギーなどを理由に接種しない医療従事者については責められるべきではありませんが、そうでない医療従事者は原則接種とするという医療機関が海外でも増えてきています。予想通りこの記事を投稿後、賛否両論、さまざまな意見が私のもとに届きましたが、日本でも今後この議論が熟していくためのきっかけになれば幸いです。(忽那賢志

選出理由:賛否のある医療従事者へのコロナワクチン接種の義務化。海外では接種を義務化する動きも出ている中、この悩ましい問題に対して、現場を知る専門家の立場から記事を投稿し、当時者間のみならず、広く一般に議論を喚起しました。

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東京五輪にみる翻訳記事の危うさ(鴻巣友季子)

筆者による受賞コメント:報道記事というのは、どんな記事も「切り取り」の性質を多かれ少なかれもっています。それが海外の報道記事のまとめとなると、なおさら「切り取り」や「編集」が重なり、さらに翻訳というのはある種の「ブラックボックス」です。原文から訳文に移る際にどんな変容を遂げているのか、正確に突き止めるのは容易ではない。つまり、海外メディアからの翻訳記事というのは、この三つの危険を同時にはらんでいます。以前からその危うさは感じていましたが、東京五輪に関してはそれが加速しているように思い、ある誤訳をきっかけに執筆に至りました。読んでいただきありがとうございます。(鴻巣友季子

選出理由:東京五輪の海外報道を巡り、誤解を招く翻訳について取り上げた記事です。訳し方の違いでニュアンスが大きく変わることを、英文と訳を付けながら丁寧に解説しています。誤解が起きた原因が慎重に分析され、複数の視点が盛り込まれることで原文の解釈の客観性も担保されており、「翻訳」に真摯(しんし)に向き合う筆者の姿勢が示された優れた発信です。

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スマホ乗っ取り「ゼロクリック攻撃」の本当の怖さとは(平和博)

筆者による受賞コメント:選出いただきありがとうございます。この記事そのものはマニアックな内容です。何人もの外国首脳やジャーナリストらが狙われた、国際的なサイバー攻撃と情報監視…小難しそうですよね。ただ、攻撃の標的はスマートフォン。誰にとっても怖い話なんです。その身近な怖さを、どうやって目にとめてもらえるか。ちょうど7月に出版された『現場で使えるWeb編集の教科書』(withnews+ノオト+Yahoo!ニュース著)の「読ませる見出しの立て方」に書いてあった「ワンイシューに絞る」「カギカッコを使用する」などのアドバイスを参考に、小難しさと切実さのギャップを埋める見出しを考えてみました。記事がいろんな方に読んでいただけたのなら、それは『教科書』のおかげです。(平和博

選出理由:世界中のジャーナリストや人権活動家、政治家、弁護士などが標的になったとされ、その危険度がクローズアップされた「ゼロクリック攻撃」について解説した記事です。メッセージを受信するだけでリンクをクリックすることなくスマートフォンが乗っ取られてしまう脅威について詳しく伝えながら、一般ユーザーへの影響や取れる対策にも言及。ユーザーの情報セキュリティへの感度を高めてくれる1本です。

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子どもたちが飢餓に直面しても国際社会は手をこまねく ミャンマー、雨季のジャングルに広がる人道危機(舟越美夏)

筆者による受賞コメント:2月の国軍によるクーデターをきっかけに、ミャンマーの状況は泥沼の様相を呈している。新型コロナウイルスの爆発的感染がそれに拍車を掛けているが、ビジネスチャンスを求めてこの国に群がった国際社会は手をこまねくばかりだ。市民、特にZ世代の軍事政権への抵抗の意志は痛々しいほどひたむきで、信じ難いほど強固だ。それがこの国をどこに向かわせるのかは見えないが、歴史的、政治経済的に日本と関係が深いこの国で何が起きているかを可能な限り伝えたい。ミャンマーに入国できない今、記事を発信できるのは、危険を冒してまで情報を伝えようとする人々のおかげに他ならない。賞は「ミャンマー市民の戦いを忘れない」という彼らへのメッセージと激励だと受け止めている。ありがとうございました。(舟越美夏

選出理由:国軍のクーデターから5カ月が過ぎたミャンマーで起きている人道危機を取り上げた記事です。戦闘の影響でジャングルに逃げ込んだ人々が飢餓と病気に襲われている実情を現地の人の声や写真を交えて届けています。人道支援物資が国軍に押収され避難民には届かないままになっている、などのストレートニュースでは伝えきれない現地の実像に迫った内容は、ジャーナリストの使命感を感じさせます。

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7月のMVC

『【独自】オリンピックで弁当大量廃棄 オリパラ事務局が認める(TBS系(JNN))』の記事へのコメント(井出留美)

筆者による受賞コメント:ロンドン五輪で1日5回の食事が作られ、次々捨てられる動画が英BBC放送公式サイトに載ったのが2012年。そこから問題意識を持ち、2016年に出版した拙著で2020東京大会の食品ロスについて問題提起しました。選手村の食品ロス削減のため、政府がスポーツ大会のビュッフェで実証実験していたにもかかわらず、選手村の実態はわからないままです。組織委員会のいう「リサイクルしている」は環境配慮の優先順位を理解していない言い訳にすぎません。「1万食のうちの4千食」は開会式の本会場のみの数字で、実際には「13万食、1億1千万円分以上」が捨てられており、これも全てではありません。「食品ロスの計量を五輪のレガシーに」と明言していたのに、数字は内部告発でしか出ていません。MVC受賞に感謝しつつ、非日常・日常で起きる食品ロスについて、今後とも追及してまいります。(井出留美

選出理由:東京オリンピックで大会関係者向けの弁当が大量に廃棄されていた問題。注目度の高いニュースに、以前から五輪と食品ロスについて取材してきた筆者がいちはやく課題の指摘と提言を行ってくれました。筆者の問題意識がよく反映されたコメントです。

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『西武・松坂引退の理由 消えた右手中指の感覚に"恐怖" 首の手術から1年 崩れた復帰の見通し(スポニチアネックス)』の記事へのコメント(黒木知宏)

筆者による受賞コメント:同じマウンドで戦った松坂選手を思いコメントさせていただきました。日本球界をけん引してきた豪腕でも故障には勝てず晩年、苦しい日々だったと思います。理想と現実とのギャップ、恐怖と戦うつらさを私自身も経験しました。少しでも皆様に感じていただきたいと思い投稿したコメントがこの度、月間MVC賞をいただく事となりました。この場をお借りして感謝申し上げます。(黒木知宏

選出理由:現役引退を発表した松坂大輔投手の右手の不調に関して、投球時の指先の感覚や松坂大輔投手の特徴について解説。これまでの功績をたたえエールを送る言葉にも、球団のエースとして投げ合い、多くの名勝負を残した関係性があるからこそ説得力があり、胸が熱くなるコメントです。

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『中国・習近平主席、チベット視察 党総書記訪問は30年ぶり(共同通信)』の記事へのコメント(松田康博)

筆者による受賞コメント:このコメントをした動機は、中国に関する憶測の多くが的外れだと感じたためです。今回「習近平は焦っている」というコメントを見て違和感を覚えたため執筆しました。以前チベット訪問が後回しだった説明に「習近平健康不安説」がありました。独裁政権は指導者の情報を隠すので、外界のメディアが挑発的な憶測をぶつけることで独裁者が元気な姿を見せざるを得なくなることがあります。ゆえに、そうした憶測は有用です。しかし、中国を正確に観察しようと努力する専門家の眼には、別の姿が映ります。参考にしていただければ幸いです。(松田康博

選出理由:中国の習近平国家主席のチベット自治区への訪問タイミングや背景事情などを解説。フラットな目線から中国の複雑な情勢を読み解き、中国河南省等で大水害が発生した中でも、訪問に踏み切った背景や政治的な判断について記事内容を的確に補足したコメントです。

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