プレーオフ1回戦で豊田自動織機が証明したトップチャレンジリーグ上位チームの実力
【実力伯仲だったプレーオフ1回戦】
トップリーグはシーズン後半戦に突入し、4月17日からプレーオフトーナメントがスタートした。ここからは試合に負けた時点で今シーズンは終了するため、まさに生き残りを懸けたサバイバルゲームの様相を呈している。
1回戦は4試合が行われ、前半戦のリーグ戦で2つのカンファレンス(ホワイトとレッド)の下位2チームと、下部リーグのトップチャレンジリーグの上位4チームが激突している。
結果はトップリーグ組が3勝しており、結果だけを見ると、トップリーグとトップチャレンジリーグ間にリーグ格差があるように感じるかもしれないが、両者の間にほとんど実力差はなく、どの試合もかなりの接戦だった。
中でもトップチャレンジリーグ組で唯一勝利を飾った近鉄は、後半にレッドカードで選手1人が退場する劣勢に立たされながらも、宗像サニックスを下しているのだ。
この事実からも、トップチャレンジリーグ組の実力が推し量れるだろう。
【まさに意地と意地のぶつかり合い】
今回トップチャレンジリーグからプレーオフトーナメントに進出した4チームの内、前述の近鉄の他、豊田自動織機、コカ・コーラの3チームがトップリーグからの降格チームだ。またこの3チームは、昨シーズンのリーグ上位3チームでもあった。
ところが昨シーズンはリーグ入れ替え戦が実施されなかったため、彼らはトップリーグに昇格するチャンスを得られなかったのだ。
そうした経緯もあり、今回のプレーオフ1回戦は彼らにとって、リーグ入れ替え戦的な存在といえるものだった(来シーズンから新リーグに移行するため今シーズンも入れ替え戦は実施されない)。
一方のトップリーグ組もリーグ戦では苦戦続きだったとはいえ、上部リーグで強豪チームと戦ってきたプライドがある。もちろんトップチャレンジリーグ組に負けるわけにはいかなかった。
そんな意地と意地のぶつかり合いが、プレーオフトーナメント1回戦で繰り広げられたのだ。
その典型的な試合になったのが、リーグ戦全敗でホワイトカンファレンス最下位に終わったNECと、トップチャレンジリーグで全勝を飾った豊田自動織機の対戦だったのではないだろうか。
【終了間際のPGでNECが1点差勝ち】
強い雨が降りしきる中で行われた試合は、開始直後からNECが優勢に試合を進めた。
前半8分にアレックス・グッド選手がペナルティゴールを決め先制すると、同14分にマリティノ・ネマニ選手がトライを決め、ゴールと合わせて10対0と主導権を握ることに成功した。
だが中盤以降から豊田自動織機のフォワードが徐々に力を発揮し始めると、ブレイクダウンでNECを上回るようになり、試合展開は互角か、豊田自動織機がやや有利に傾いていった。
そして前半27分にNECのゴールライン付近の攻防から、シオシファ リサラ選手がトライを奪うなどして、10対7とNECリードで前半を終えた。
後半に入っても、両チームの意地のぶつかり合いが続く。
まず後半3分にテレニ・セウ選手がトライを決め、ゴールと合わせて豊田自動織機が逆転に成功。ところが直後の同5分に今度は佐藤耀選手がトライを奪い、NECが再逆転するという、目まぐるしい展開になった。
そこから同16分に大道勇喜選手がトライを奪い、再々逆転に成功した自動織機が、さらに連続加点し同30分の時点で24対15と9点差のリードを奪い、NECを引き離したかのように思われた。だがNECの反撃はまだ終わってはいなかった。
同33分にベンハード・ヤンセ・ヴァン・レンスバーグ選手がトライを奪い、ゴールと合わせて2点差に迫ると、同40分にグッド選手がペナルティゴールを決め、終了間際に再々再逆転に成功。辛くも勝利をものにしている。
【新リーグ移行後も実力均衡しそうな各ディビジョン】
試合後、あと一歩のところで勝利を逃した豊田自動織機の徳野洋一ヘッドコーチ(HC)は「力の差を感じなかった」とした上で、以下のように話している。
「確かに前半15分のところはNECさんに上手くコントロールされたという印象はあります。
ただそれ以外の時間においては、エリアのテリトリーの部分でコントロールできましたし、またディフェンスの部分、セットプレーにおいても優位に立てたということで、ゲーム80分トータルで見たら、我々の方がコントロールできたかなと思っています」
徳野HCが説明するように、もしラグビーが試合内容で勝敗を決めるのならば、豊田自動織機が勝利できたような展開だったのは間違いない。それほど両チームの実力は拮抗していた。
今シーズン初勝利を上げたNECの浅野良太HCも「トップリーグのチームとして絶対に勝たなきゃいけない試合だった」と話した上で、豊田自動織機の実力を評価している。
「トップチャレンジ全体のことは僕の口からいえませんが、織機さんだけの話をすれば、やはり強いチームだし、タフなチームですね。
今日我々が苦しめられた一番の要因は、セットプレーです。そこへのこだわりは凄く感じましたし、そこはトップリーグと同等程度の圧力を感じました」
来シーズンからスタートする新リーグには25チームが参加し、最上位のディビジョン1が12チーム、ディビジョン2が7チーム、ディビジョン3に6地0六が振り分けられる予定だ。
ディビジョン1とディビジョン2の19チームには、現在のトップリーグ16チームに加え、プレーオフトーナメントに参加してトップチャレンジリーグ上位4チームで占められることになりそうだ。
今回のプレーオフ1回戦を見る限り、ディビジョン2に回る7チームも、かなり実力均衡の面白いリーグになっていきそうだ。