邦人救出のため武漢にはチャーター便を派遣したのにイタリアにはなぜ?
日韓の新型コロナウイルスの感染推移は程度の差があれ、また政府の対策、対応に時差があれほぼ類似している。その一例がチャーター便を使って、同胞を帰国させたことだ。特にこの件では日本は韓国よりも対応が素早かった。
(参考資料:「新型コロナウイルス感染」に関する日韓両国の現状を徹底比較!)
日本政府は武漢の感染者がまだ1万数千人だった1月29日には第1便を飛ばし、206人の邦人を無事帰国させ、翌30日にも第2便(210人)、31日にも第3便(149人)と立て続けにチャーター便を出していた。翌2月も7日に第4便(198人)を、17日に第5便(65人)を出して、延べ828人の邦人を無事帰国させていた。
韓国は日本よりも2日遅れの1月31日に第1便(368人)を、2月1日に第2便(326人)を、そして2月12日に第3便を送り、計841人の在留韓国人を帰国させていた。
チャーター便の搭乗費用について日本は当初よりチャーター便の搭乗費用として一人8万円を徴収することにしていたが、方針を転換し、全額国が負担した。これに対して韓国は、搭乗者から1人当たり成人30万ウォン(約2万6千円)、満2~11歳の子供は22万5000ウォン(約1万9千円)、満2歳未満の乳児は3万(2千6百円)ウォンを負担させていた。
ところが、今、最悪の状況に陥っているイタリアに対しては日韓は異なった対応を取っている。
周知のように今ではイタリアは感染者数でも死亡者の数でも中国を凌駕している。感染者数では中国の8万1589人に対して11万574人と約3万人も多く、死亡者数に至っては中国の3318人に対して1万3155人と約4倍である。にもかかわらず、日本はイタリア在留邦人の日本への帰国に積極的な姿勢を見せてない。
この件について記者会見(3月9日)でコメントを求められていた菅義偉官房長官はチャーター機の派遣を検討しない理由について「イタリア域外に出られない状況にあるとは認識していないからだ」と語っていた。
確かに、菅官房長官の言う通りで、3月9日の時点では日本への直行便も飛んでいたし、空港への移動及び出国についても何の制限も、障害もなくいつでも帰国できたはずで、実際に帰国した邦人もかなりいたようだ。しかし、その後、イタリアの状況が想像を絶するほど極度に悪化したのは誰もが認めるところだ。アリタリア航空は4月30日までローマ・成田便を運休することから今では帰国する手段も術もない。
イタリアに滞在している日本人は約9千人に上ると言われているが、帰国のタイミングを失った相当数の日本人は帰るに帰れず、イタリアで足止めされ、封鎖された状況下で不安な日々を送っているのではないだろうか。
日本政府がチャーター便を手配しないのは、帰国させても2週間も隔離させる施設がないからなのか、それとも、帰国できるうちに帰国しなかったのは「自己責任」と突き放しているのか定かではないが、他方、日本の対応とは正反対に韓国はチャーター便を使ってイタリアから韓国人を帰国させている。
韓国は昨日(4月1日)、ミラノにチャーター便を飛ばし、第1便として韓国人留学生や駐在員ら309人を帰国させている。今日も205人を乗せた第2便がローマを出発することになっている。今回も費用は各自負担で、成人一人あたり200万ウォン(約17万5千円)の負担だ。
韓国では新型コロナウイルスの流入を防ぐため4月1日から全ての入国者に対し14日間の自主隔離を義務付けていることから乗客は2年前に冬季五輪が開催された江原道・平昌の施設に14日間隔離されるが、空港到着時に症状のある人は一旦、国立仁川空港検疫所の施設で新型コロナウイルス検査を受けることになっている。陽性の場合、軽症者は生活治療センターに、重症者は病院に移送される。
実際に4月1日に帰国した309人の中に11人に症状があり、空港でPCR検査を受けていた。1人が陽性と判定され、直ちに医療機関に移送された。残り10人は生活治療センターに送られ、無症状の残りは全員、平昌にある在外公民臨時生活施設に移送、入所となった。
第2便の乗客も症状がなければ、全員武漢からの帰国者が隔離されていた忠清南道にある臨時施設に入所し、4泊5日過ごすが、この間2回にわたってPCR検査を受け、陰性の反応が出れば、14日間の自宅隔離となる。しかし、一人でも陽性の反応が出れば、全員施設で14日間隔離される。
韓国では3月18日から31日までの2週間で確認された感染者1383人のうち30%が欧米など海外からの流入であった。4月1日だけで18人が空港の検査で感染が確認されていた。