ライオンズのお膝元・所沢で行われたもうひとつの「埼玉・神奈川対決」【ルートインBCリーグ】
プロ野球交流戦が始まった。昨日28日には埼玉県所沢市のベルーナドームで埼玉西武ライオンズ対横浜DeNAの「埼玉・神奈川対決」が行われたが、同じ所沢で独立リーグでも、「埼玉・神奈川対決」が実施された。
「都市型独立リーグ球団」としての「棲み分け」という戦略
ベルーナドームの東、約7キロのところにある所沢航空記念公園。日本初の飛行場があったというこの埼玉県民の憩いの場にある野球場でルートインBCリーグ公式戦、埼玉武蔵ヒートベアーズ対神奈川フューチャードリームスの試合が行われた。西武と同じ埼玉県にフランチャイズを置くヒートベアーズがその西武のお膝元の所沢で試合を行うのは初めてのこと。ある種の「殴り込み」にも見えるのだが、そのあたりはきちんと「仁義」を通したという。
「我々としては、フランチャイズとする埼玉県全域で試合を行いたい方針があるんです。その中で、交流戦などで西武さんとは、これまでにも関係を築いてきた中で、所沢で試合をさせていただきたいという話はしてきました。あちらが『遠いあこがれのプロ野球選手』ならば、こちらは『自分でもなれるんじゃないかなと思えるプロ野球選手』。そういう棲み分けはできていると思います。そういう流れの中で、今回はスポンサーさんもついてはじめて所沢での開催となりました」
今年から監督との二足のわらじを履く角晃多球団社長は、所沢での試合開催の経緯について話してくれた。
それにしても、わざわざ交流戦と同じ埼玉・神奈川対決とはと思うが、これについては、たまたまそういうカードになっただけで、リーグとして意図したものではないらしい。
手に汗握る投手戦
ベルーナドームの「埼玉・神奈川対決」は、10対5で「埼玉」の勝利と大味な試合となったが、航空公園の方は、締まった投手戦となった。埼玉・小野寺賢人(星槎道都大)が8回、神奈川・石井涼(富士大)が7回を共に1失点と両先発投手が試合を緊張感あるものにした。
試合が動いたのは6回。表の攻撃で1アウトから神奈川の1番・齋藤尊志(上田西高)が流し打った大きな飛球がレフトポール際に落ち、齋藤は一気に三塁へ。レフトから投げられた球がランナーと交錯すると、サードがこれをはじき、ボールはサード側ファウルゾーンに転がった。これを見た齋藤はホームを狙うが、すでにピッチャーの小野寺がカバーに入っており、ホームで憤死かと思われた。しかし、これを小野寺が暴投。神奈川はこの日2本目となるこの三塁打だけで1点をもぎ取った。直後の小野寺は落胆した表情を見せマウンドにもどったが、それでも続く打者をこの日要所で決まっていたスライダーで三振、その次の打者もレフトフライに打ち取り、勢いづいた神奈川打線を断ち切った。
一方の埼玉もその裏、下位打線が作ったチャンスを2番樋口正修(駿河台大)のタイムリーでものにし、1点を返した。
得点はこの1点ずつのみで、両軍ともリリーフ陣も踏ん張り、結局試合は1対1の引き分けに終わった。
点は入らなかったが、決して貧打線の印象はなく、投手陣の質の高さがあらわれたような試合だった。昨年ドラフトで大量7人をNPBに送り込むなど、そのプレーレベルを急速に上げているBCリーグの注目度の高さは、この日もNPB球団のスカウトがネット裏に陣取っていたことが示している。
収容4000人とはいうものの、その客席の大半が芝生席の小さな球場には「地元のプロ野球」に愛着を抱いた熱心なファンが集い、ネット裏のコンクリートスタンドは7割がた埋まっていた。その数は500人に届かないがヒートベアーズが目指す地域密着型の球団運営は着実に実を結んでいる。
(写真は筆者撮影)