【寝屋川市】さようなら香里能楽堂。京阪立体交差事業による立退きで最後の公演。55年の歴史に幕。
寝屋川市香里本通町にある「香里能楽堂」は、京阪本線連続立体交差事業により2021年7月末に線路側客席部分の取り壊しが決まっていて7月18日の公演を最後に一旦その歴史を閉じます。
その刻まれた55年の歴史や佇まい、大切な記憶や思い出を後世に伝承するべく、春から2021年7月2日の当日にかけて香里能楽堂で行われたイベントに完全密着した様子が、テレビ大阪「やさしいニュース」の特集で2回にわけて紹介されました。
こちらは6月15日に放送された前編です。
こちらは2021年6月12日に開催された七宝会能。
「黒塚」のシテは辰巳孝弥師。
6月15日の「やさしいニュース」でも放送された演目です。
「能は引き算の芸術」と言われます。
舞台には、ほかの演劇と違って、客席と舞台を仕切る幕がありません。
そして、歌舞伎にあるような廻り舞台や大ゼリなどの舞台装置も、豪華な建造物、粋なお座敷、庭園などの大道具もまったく存在せず、裸の舞台に常時あるのは松を描いた「鏡板(かがみいた)」だけです。
不要なものはいっさい省いて、シテ方の謡と舞にお客の目を一点集中させ、想像力をかき立てるのが能です。
香里能楽堂での特別イベント現能序章2021に向けてはクラウドファンディングが行われました。
いよいよ2021年7月2日、香里能楽堂での特別イベント現能序章2021が開催され、筆者も55年の歴史ある香里能楽堂の最後の姿と現代エンタメと伝統芸能のコラボイベントを観て参りました。
この催しは宝生流能楽師 辰巳大二郎とアーティスト・作曲家として活動中のSatoshi(from MINOR SCHOOL)が企画立案し、演能、狂言、仕舞、音楽ライブ、スペシャルトーク―ショーと盛りだくさんな内容となっていました。
伝統芸能のスペシャルゲストとして、狂言の世界のみならず映画やTV俳優としても絶大な人気を誇る、現代を生きる狂言師・野村萬斎師も登場し、香里能楽堂の最後を飾りました。
狂言「昆布売」は野村萬斎、能「井筒」は辰巳大二郎、その後、辰巳満次郎と野村萬斎そして桂由美によるスペシャルトークセッション、最後にSatoshiと大阪☆春夏秋冬のスペシャルライブがありました。
この日の演目は、オープニングの竹生島の仕舞を辰巳大二郎と藤間新舞(MAINA)が演じ、辰巳満次郎師からこの日の演目についての解説がありました。
スペシャルトークセッションでは、桂由美さんからは日本の着物の素晴らしさが語られ、辰巳満次郎師からは、小学生の時にこちらの能楽堂の柱に自らの背の高さの印を刻んでお父上に叱られたエピソードなどをお話しいただきました。
この日までの密着取材に基づいて2021年7月14日テレビ大阪の「やさしいニュース」では「さよなら能楽堂―若き能楽師が臨む最後の舞台ー」と題した特集が放送されました。
香里能楽堂では、2021年7月3日には、辰巳孝太郎百回忌・辰巳孝十七回忌追善能が開かれました。
この日は海人 前シテ(海人の幽霊)に辰巳孝弥、 子方(藤原房前)に辰巳紫央莉の親子共演で、辰巳孝弥師香里能楽堂最後の演能となりました。
海人(海人の幽霊)辰巳孝弥師
香里能楽堂の最後に親子共演ができて、お二人にとっても意義深い舞台となりました。
香里能楽堂は、2021年7月18日(5月23日の延期)の「日本の芸能シリーズ その参」を最後に一旦閉じます。
この催しは、延期により7月18日となったものですが、香里能楽堂工事前(今の姿)での最後の催しとなります。
時間は14時開演
鼎談 辰巳満次郎 葵太夫 上田慎也
仕舞 杜若 石黒実都 采女 辰巳孝弥 船橋 辰巳大二郎
一調 辰巳和磨 上田慎也
太夫舞 比翼連理 嶋原葵太夫 重森三果
全自由席5千円
この催しが終わると工事が始まり、秋まで催しは出来ない見通しです。
現状最後の香里能楽堂の公演となります。
さよなら香里能楽堂。
今後、香里能楽堂での公演はできなくなりますが、お稽古やワークショップは開かれます。
七宝会の定期公演はアルカスホールで行われます。
能楽堂はこれをひとつの節目とし、新たなる出発をすることとなります。
香里能楽堂
〒572-0082 大阪府寝屋川市香里本通町1−5
電話: 072-831-0415
宝生流能楽師 辰巳大二郎 橙白会