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4割強は未婚の母による出産…アメリカ合衆国のいわゆる「未婚の母」による出生率

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
アメリカ合衆国は出生率が高いと言われているが…(写真:アフロ)

アメリカ合衆国の出生率の高さの一因として挙げられるのが、未婚の母(婚外子出生者)による出産。その実情を公的データで確認する。

用いるデータはアメリカ合衆国の疾病予防管理センター(Centers for Disease Control and Prevention、CDC)内にある人口動態統計レポート(National Vital Statistics Reports)。この公開値を用いて作成したのが次以降のグラフ。なお2016年以降において、「アメリカンインディアン・アラスカなど」や「アジア・太平洋諸国」の人種上の区分に変更が生じた可能性があり、結果が多少イレギュラーなものとなっている(数字の限りでは両区分間に変更があったように思われる)。

↑ アメリカ合衆国の婚外子出生率(主要人種別)
↑ アメリカ合衆国の婚外子出生率(主要人種別)

厚生労働省の「人口動態調査」によれば日本では2%前後でしかない婚外子出生率だが、アメリカ合衆国では全体で4割強、合計特殊出生率の一番高いヒスパニックで5割強、黒人では7割に達する。これはアメリカ合衆国をはじめとして諸外国では「結婚しないまま子供を出産する」(非嫡出子)のが社会的・文化的に容認されつつあること、国や社会全体が支援する仕組みを構築しつつある(あるいは個人の「何とかなるだろう」との楽観的な考え方、「そうせざるを得ない」的な悲観的状況の増加など)が要因にあると考えてよい。

ちなみにアメリカ合衆国国内のアジア・太平洋圏系の「婚外子出生率」は10%強のまま推移しており、過去からの推移も含めて他の属性と比べて極めて低い。文化的な発想・結婚に対する考え方の違いが表れているのかもしれない。

人口動態統計レポートの出生率関連の値で、婚外子出生率以外に目にとまるのが、若年層の出生率。この値でも、ヒスパニック系の盛んな出産動向が見て取れる。なおこちらではアジア方面の区分は「アジア」のみとしている。

↑ アメリカ合衆国の出生率(未既婚問わず、年齢階層別・主要人種別)(2020年)
↑ アメリカ合衆国の出生率(未既婚問わず、年齢階層別・主要人種別)(2020年)

白人は25~34歳が出産のボリュームゾーン。それに対し黒人は20~34歳、ヒスパニックも20~34歳。黒人やヒスパニックは高出生率の年齢階層が白人よりも幅広いことになる。さらにヒスパニックでは25-29歳での出生率が10.5%と高率。

またアジアでは出産のボリュームゾーンが25~39歳と高めだが、30~34歳では10.6%と大きく伸びて最大値を示しており、やや高齢の出産が盛んであることが分かる。

さらに例えば15~17歳では白人が0.4%なのに対し黒人は1.1%、ヒスパニックも1.1%などの高値を示していることからも分かる通り、20歳未満の出産も概して黒人・ヒスパニックの人たちによるものが多い。アジア・太平洋諸国では逆に少なくなっているのはやや意外なところか、あるいは文化的な違いの表れなのだろうか。

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※合計特殊出生率

一人の女性が一生のうちに出産する子供の平均値。この値が2.0なら、単純計算で夫婦2人から子供が2人生まれるので、その世代の人口は維持される。値を算出する際には各年齢の女性の出生率を合計することになる。ただし実際には多様なアクシデントによる減少が生じるため、人口維持のための合計特殊出生率は2.07から2.08といわれている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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