勤労感謝の日は働く人に感謝する日ではなく働けることを感謝する日
☆勤労感謝の日は、働く人に感謝する日ではなく、働けることに感謝する日です。☆
■勤労感謝の日とは
勤労感謝の日とは、「勤労を尊び、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日です(祝日法)。
わかりやすく言えば、勤労感謝の日とは、働くことを大事にし、できたものを喜び、みんなで感謝し合う日です。
■働くとは:生きがいか苦行か
欧米では仕事をマイナスのものと考え、早くリタイアすることを夢見る考え方もあります。日本では、働くことは尊いことだと昔から考えていました。
日本をはじめアジア諸国では、生徒が自分の教室の掃除をするのは、教育の一環と考えられています。ただの必要に迫られた作業ではなく、掃除のように汗を流し働くこと自体に意味を見出すのが、私たちの文化です。
けれどもその一方、日本では、長時間労働やサービス残業、ブラック企業の問題などが大きくなっています。定時に帰ることに罪悪感を感じるのが、日本人です。
西洋キリスト教文化では、エデンの園を追放されたアダムとイブが、苦しんで仕事をし続けなければならいと宣告されたことから、仕事を苦行と見る考えがあるようです。
しかし実際は、アダムとイブはエデンの園でも地を耕しています。古代人が考えた楽園は、遊んで暮らす場所ではなく、爽やかに働く場所なのです。
問題は、仕事自体だけではなく、仕事の意味をどのようにとらえるかでしょう。
宗教改革を起こしたカルヴァンは、聖職だけでなく世俗の普通の仕事も神から与えられた素晴らしい仕事だと意味づけし、当時新しく現れた市民層に大歓迎されました。
もちろん、長時間労働そのものが心身にダメージを与えます。けれども、たとえば電通で自殺した女性が、上司から罵声を浴びるのではなく、素晴らしい人間関係の中でやりがいを持って働いていれば、結果は違っていたでしょう。
■仕事をどうとらえるか
心理学の実験です。画面に現れた光の点をじっと見つめてもらう作業をしてもらいます。こんな退屈な作業に参加した人々は、飽きてしまい、肩こり等を訴えます。
ところが、「この作業は、アメリカ航空宇宙局NASAが宇宙飛行士の集中力を高めるために行う訓練です」という偽りの情報を与えると、多くの人が楽しいと言いはじめ、爽やかな疲労を報告しました。
フロイトは、晩年でのインタビューで、健康な人とは愛することと働くことができる人だと答えています(「健康な人とは愛することと働くことができる人:私たちが幸せになるために」Yahoo!ニュース個人有料)。
■働けることへの感謝
高齢者の人々が、若く活躍していた時代のことを楽しそうに語ることがあります。バリバリ働いていた営業マン時代。忙しく子育てに励んでいた若い頃。「楽しかったなあ」としみじみと語る人々がいます。
子どもに人気の「機関車トーマス」の中に、こんな話がありました。
今日は大きなイベントが開かれています。大きくて立派な機関車たちは、みんな忙しいそうに仕事に励んでいます。ところが小さな機関車トーマスには、仕事が与えられません。
トーマスは、「僕にもお仕事ください」と一生懸命仕事を探します。物語の最後は、トーマスにも大切な仕事が任せられ、トーマスは元気に汽笛を鳴らして力強く走っていく姿で終わります。
勤労感謝の日は、働けることに感謝する日。奴隷として働かされるのではなく、自分にも役割が与えられ、社会に貢献できる仕事ができることを感謝する日なのでしょう。