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2点差で勝利を捥ぎ取ったシクサーズ

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
36得点、12リバウンド、6アシストで勝利に貢献したエンビード(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 ハーフタイム時で、フィラデルフィア・セブンティシクサーズのエース、ジョエル・エンビードは5本のシュートを放って1本のみの成功と、いつもの彼らしさが無かった。スコアも50-61でリードを許していた。

 迫力満点のブロックに加え、12得点を挙げてはいたが、そのうち10点がフリースローだった。シュートを外して悔しさを嚙み殺すエンビードの表情が印象的であった。

 1月29日にサクラメント・キングスを迎えたホームゲームには、2万380人のシクサーズファンが詰め掛けた。2日前のロスアンジェルス・レイカーズ戦に続き、チケットは完売である。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 Tipoffのおよそ24時間前からフィラデルフィアは吹雪に見舞われ、ところによっては30センチ近い雪が積もった。その影響なのか、会場のセッティングが遅れ、試合開始の90分前に若手選手がコートでシュート練習を始めた際にも、担当スタッフが必死でコートサイドに椅子を並べている状態だった。メディア用の机が運ばれ、記者の名が書かれたプレートが置かれたのは、Tipoff62分前という異例の事態が生じていた。

 私が記者席に座った20分後、エンビードがコートに現れ、黙々とシュートを放つ。8分間シュートを打ち続けると、213センチの背番号21は小走りに控室に消えた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 スロースタートとなったエンビードだが、3Qから本領を発揮し始める。このQはフルに12分間プレーして、17得点、6リバウンド、2アシスト。

 エンジンが掛ったエンビードをキングスの面々が封じるのは至難の業で、同Q終了時に2点差まで追い上げられる。

タイリース・ハリバートン
タイリース・ハリバートン写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 キングスも、38ゴール、7アシストの活躍を見せた2年目のPG、タイリース・ハリバートンを中心に、速く効果的な攻撃を見せたが、一歩及ばす。103-101でシクサーズが地元ファンの声援に応えた。

タイリース・マクシー
タイリース・マクシー写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 今のキングスは、若手に経験を積ませながらチームを構築する過程にある。一方でシクサーズも2年目のPG、タイリース・マクシーが好調を維持している。ハリバートンもマクシーも共に21歳で背番号0。今後が楽しみな逸材だ。

シモンズ問題はいかに決着するか
シモンズ問題はいかに決着するか写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 さて、シクサーズのPGと言えば、トレードを主張して今季1度もプレーしていないベン・シモンズの去就が気になる。噂の域を出ないが、キングス入りするという説もある。ハリバートン、マクシーに影響は出ないだろうか?

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 結局、この日のエンビードは34分55秒のプレーで、36得点、12リバウンド、6アシストをマークし、終わってみれば18本中10本のシュートを決めていた。昨シーズンはゲーム中に膝の痛みに顔を歪めることもあったが、現段階では再発していないようだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 勝てそうな展開であったにもかかわらず、2点の差で今季33回目の黒星を喫したキングスの暫定指揮官、アルヴィン・ジェントリーは試合後の記者会見で語った。

 「やはり、エンビードの存在は大きいですね。賢いし、強い。私は勝つために出来うること、全てにトライしました。チームを刺激し、選手同士が互いに感謝し、理解し合い、尊敬し合って、総力をあげて闘いました。でも、実らなかった…。だからと言って、我々は絶対に諦めませんがね」

 Tipoff時に雪は止んでいたが、フィラデルフィアではあちこちで車が雪にタイヤをとられ、動かなくなっていた。シクサーズ本拠地の真横を走る高速道路、I-95の路上でも事故が多発した。そんななかでアリーナに辿り着いたファンたちは、歓喜に震えながら帰路についた。

 セブンティシクサーズは、フィラデルフィア市民の後押しを受けて、さらに後半戦で燃え上がるか?

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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