【ACLレポート】やっぱりスゴい! 「イニエスタ、韓国でプレー」の現地反応とは?
「イニエスタ、来るんですか?」
2月9日、出張中の韓国で草サッカーをプレーした際、チームメイトになった現地の40代の男性にそう聞かれた。2月19日に行われたアジアチャンピオンズリーグ(ACL)スーウォン・サムスンーヴィッセル神戸戦の話だ。
「来たとしても少しだけプレーするんじゃないか、韓国ファンへの顔見世程度に、なんて話題にもなってますよ」
ほんの軽い会話だった。なんとなく、そんな話になっているという。そこには昨年7月の「Kリーグ選抜ーユベントス」での「クリロナ欠場ショック」の影響もあるか。
韓国のサッカーファンと多く会話を交わしてきたが、こういう盛り上がり方は初めてだった。過去にACLのグループリーグが話題になったのは「浦和のサポーター、すごいんでしょ?」という話がほとんどだったからだ。
こちらからは「ACLは公式戦だから、顔見世なんてないでしょう。出るなら出る、出ないなら出ない。その日の勝負と、シーズンを展望して出場機会が決まるはずです」と返しておいた。
”世界的な知名度のある選手を獲得”。
多くのクラブが可能なことではない。それでもJリーグの一クラブが取る戦略だ。イニエスタ自身も今月14日の都内でのキックオフカンファレンスで「このクラブのビジョンに惹かれた」と改めて口にしていたが、そこにはACLでの活躍も当然のごとく含まれていただろう。
ならば効果のレポートを。
相手クラブの「ACLグループリーグ最多観客動員」を記録
結果としては「大ブレイクとはではいかなかったが、十分な効果あり」だった。
試合中継でも確認できたように、スーウォンのホームスタンドは満員とはいかなかった。この日の観客動員は17,372人だった。
とはいえ、この時期のスーウォンのACLグループリーグで最多となる2010年のガンバ大阪戦の17,246人は上回った。相手クラブのグループリーグでの観客動員記録としては過去最高だ。現地ウェブ媒体「インターフットボール」はこれを「イニエスタ特需」と見出しを打った。
また、19日の「スポーツソウル」の記事ががその効果をまとめた。
試合チケットも速いスピードで売れた。前売りはオープンから3日で主要指定席は売り切れ。スーウォンのクラブ関係者は新種コロナの状況がありながらも1万5000人から2万人が来場と予想した。予想通り前日(練習)からイニエスタを観るために多くのファンがスタジアムを訪れた。ヴィッセル神戸のサポーターもアウェー応援席から熱心な応援を繰り広げた。多くはなかったがヴィッセル神戸側の席に韓国のファンの姿も目に映った。
じつのところ、試合前日から国内最大のポータルサイト「NAVER」上のイニエスタ関連ニュースで最も多く読まれたのが、「イニエスタ応援グッズを身に着けたファンはホーム側の席に入れない」というものだった。AFC(アジアサッカー連盟)の警備の規定によるものだ。「国内主催の試合とはちょっと勝手が違いますよ」というアラート。記事は同ポータルサイトの「サッカー関連記事リアルタイム検索」のなかで最高5位にまで浮上した。
「スポーツソウル」の記事はまた、イニエスタの来韓に感激する20代男性ファンの言葉も伝えている。
“イニエスタのような有名な選手が韓国に来ることは、めったにないことでしょう? 試合ではゴールかアシストに期待したいです”
いっぽう、この点は記しておきべきだろう。試合当日の19日に「韓国サッカーで最も読まれた記事」まで視野を広げると、「ソン・フンミン、負傷により3月のW杯予選アウト」関連のものだった。
反発もあり、時世の影響もあったが……
もちろんそこには日韓のライバル関係はある。例えばヴィッセル神戸が東南アジアで公式戦を戦うこととは少し違う側面があるだろう。
筆者自身、試合前にイニエスタに関する動画を「NAVER」にアップしたが、いくつか反発的なコメントも残された。「また負かしてやる」といった意見もあった。「04年のバルセロナ時代の以来の敗戦を」と。確かに04年7月にバルサはアジアツアーの一環でこの地でスーウォンと対戦。0-1で敗れた。イニエスタもこの試合に出場していた。
とはいえ、全般的には「好意的」だった。京郷新聞系列の「スポーツ・カーン」はこんな見出しさえ打った。
「さすが”大スター”イニエスタ…キラーパス一発でスーウォンを倒す」
記事では韓国のファンの声援もあったこと、そういったなかで決勝ゴールの起点となる”キラーパス”を通し強い印象を残したことを綴っている。また「スポーツ朝鮮」はイニエスタについて「FCバルセロナで活躍したワールドクラスのスーパースターだという点、そして350億ウォンという天文学的な年俸で試合前から注目を集めた」と評し、本人のこのコメントを紹介した。
「かなり昔のことだが、04年の試合のことは覚えている。再び来られて嬉しい。幸せだ。再び韓国でプレーできてよかった」
いっぽうでこの時期、この点の影響は避けられなかった。前出の「スポーツ・カーン」が記事の冒頭でこう切り出した。
「残念ながら新種コロナの影響で予想された2万人超えとはならなかったが…」
その存在は”日韓ライバル関係”は軽く超越したが、当然のごとくこの影響は大きく受けた。ヴィッセル神戸とスーウォン・サムスンのリターンマッチは5月5日に神戸で行われる。その時はどんな状況になっているだろうか。