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言いにくい事を伝えても怒られない「クッション言葉」

太田章代新人育成トレーナー

仕事では、断りづらいことを断ったり、頼みにくいことを頼む場面も出てきます。そんな時に有用なのが「クッション言葉」です。

クッション言葉は、お断りをしたり、相手の言葉に反論したり、言いにくいお願いをする際に、最初に付け加えることで言葉を柔らかくしてくれる言葉です。

今回は、シーン別にクッション言葉の使い方をお伝えします。

衝撃を和らげる『クッション言葉』

仕事上で断るときに「できません」「欠席します」とそのまま伝えてしまうと、人間関係が悪化し、今後の取引にも影響を与えかねません。そんな時に「申し訳ございませんが、できかねます」「勝手申しますが、欠席いたします」と一言前に添えて、相手に配慮を表すのがクッション言葉です。

クッション言葉は、相手が受けるショックを、まるでクッションのように和らげてくれるのです。

あるクレジットカード会社との電話

先日私は、使っているクレジットカードを、同じカード会社で別のカードに変更するために、クレジットカード会社に電話をかけました。

私「クレジットカードの切り替えをしたいのですが」

相手「クレジットカードの切り替えはできません。今お使いのクレジットカードを一度解約し、新しいカードをお申し込みください」

本当に短い会話なのですが、私は否定されたような印象を受けました。この会話に、もしクッション言葉があったら、印象はどう変わるでしょうか。

私「クレジットカードの切り替えをしたいのですが」

相手「大変申し訳ございませんが、クレジットカードの切り替えという方法はいたしておりません。お手数おかけしますが、今お使いのクレジットカードを一旦解約して、新しいカードにお申込いただく手続きが必要です。」

たとえ相手に敬意を持っていても、その敬意が伝わらなければ意味がありません。クッション言葉は、相手への敬意を伝えるためにとても便利な言葉なのです。

こう使おう!シーン別クッション言葉実例

その場に応じて、どのクッション言葉を使うかを上手に選ぶことができれば、クッション言葉は最も効力を発揮します。

さらに、語尾を依頼表現の「~していただけますか」にして、クッション言葉と組み合わせれば、より良い印象を相手に与えることができます。

(1)「お願い」のクッション言葉

・恐縮ですが

・失礼ですが

・可能であれば

・お手数おかけしますが

・恐れ入りますが

・ご足労おかけしますが

・勝手を申し上げますが

・ご多用中とは存じますが

・ご面倒おかけしますが

上の「お願い」のクッション言葉を使った会話例は以下の通りです。

「失礼ですが、ご用件を伺ってもよろしいですか」

「ご面倒おかけしますが、ご郵送いただけますか」

「お手数おかけしますが、アンケートにご回答いただけますか」

(2)「お断り」のクッション言葉

・あいにくですが

・申し訳ございませんが

・せっかくですが

・残念ではございますが

・誠に勝手ではございますが

・心苦しいのですが

・お気持ちはありがたいのですが

上の「お断り」のクッション言葉を使った会話例は以下の通りです。

「お気持ちはありがたいのですが、今回は辞退させていただきます」

「心苦しいのですが、新規のご注文はお受けしておりません」

「誠に勝手ながら、こちらは販売が終了しております」

(3)「反論」のクッション言葉

・お言葉を返すようですが

・申し上げにくいのですが

・失礼かとは存じますが

・おっしゃることは重々承知しておりますが

上の「反論」のクッション言葉を使った会話例は以下の通りです。

「お言葉を返すようですが、このような意見もあるのではないでしょうか」

「申し上げにくいのですが、ご希望には沿いかねます」

「失礼かとは存じますが、ご指摘の資料は古いものではないでしょうか」

(4)「質問」のクッション言葉

・失礼ですが

・よろしければ

・差し支えなければ

上の「質問のクッション言葉」を使った会話例は以下の通りです。

「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」

「よろしければ、どのような件かお聞かせくださいますか」

「差し支えなければ、解約の理由を伺ってもよろしいですか」

「申し訳ございません」は万能ではない

「申し訳ございませんが」は、主としてお断りをする際に使う言葉です。依頼の時にも使えますが、謝る必要のない場面で使ってしまうと、へりくだりすぎている印象を与えるので、使わない方がいいでしょう。

ついつい使ってしまっている場合は、以下のように、より適切な言葉遣いに言い換えましょう。

「申し訳ございませんが、どのようなご用件でしょうか」

→「失礼ですが、どのようなご用件でしょうか」

「申し訳ございませんが、ご説明させていただきます」

→「よろしければ、ご説明させていただきます」

「申し訳ございませんが、少々お待ちいただけますか」

→「恐れ入りますが、少々お待ちいただけますか」

クッション言葉の使いすぎに注意

クッション言葉には、気をつけなければならない点もあります。

上手に使えば言葉を和らげてくれる便利な言葉ですが、あまり多く使いすぎると「マニュアル通りの対応」だと受け取られる可能性があります。さらに、同じクッション言葉だけを使い続けていると、心が入っていないように思われることもあります。

「恐れ入りますが、こちらでお待ちいただけますか」

「恐れ入りますが、ご連絡先をご記入いただけますか」

「恐れ入りますが、ご利用をご検討いただけますか」

同じ「恐れ入りますが」を何度も使われると、クッション言葉だけがむやみに印象に残ってしまい、無礼だと受け取られることもあります。メールのように、文章でのコミュニケーションの際も、「同じクッション言葉の使いすぎ」には注意してください。

さらに「プラス一言」で仕事のできる人に

クッション言葉で心配りを伝えることで、印象を和らげることができると、お分かりいただけたでしょうか。さらに、ワンランク上の印象を与えるなら、クッション言葉の前に、臨機応変に言葉を付け加えることで「できる人」と思われます。

たとえば、以下のような言葉をプラスしてはいかがでしょうか。

「ご丁寧にご記入いただいたのに誠に恐縮ですが、この書類は必要ございません」

「大変お急ぎのところ申し訳ございませんが、お調べするのにあと1時間かかりそうです」

「遠方からお越しいただいき、お疲れのところお手数ですが、こちらにご記入いただけますか」

一番下の言葉は、私が出張の際チェックイン時のホテルのフロントで、実際に言われた言葉です。「遠方からお越しいただき、お疲れのところお手数ですが」と声をかけられて、「この人は私に寄り添ってくれている」と嬉しい気持ちになりました。

通り一遍な言葉よりも、相手の心に寄り添った「プラスの一言のクッション言葉」が、あなたのファンをつくるのです。

人間関係を悪くしないためにも『クッション言葉』を使おう!

仕事をする上で、周囲の人とのコミュニケーションをスムーズにすることは、大切な課題です。その意味でも、クッション言葉は、相手への心配りを伝えるために必要です。

周囲からの信頼を得るためにも、今日からクッション言葉を意識して使うようにしてみてはいかがでしょうか。

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太田 章代

新人育成トレーナー

愛知県岡崎市出身。損害保険会社の事務員から広告代理店の営業職に転職。入社2年目から6年連続売上トップ。32歳で統括本部長に抜擢。50人の部下を指導する。35歳代表取締役に就任。その後、2006年人材育成事業で独立。現在まで研修&講演に2,000本以上登壇。離職率の低下や、職場のコミュニケーション改善などで成果を上げる。独自の体験型講演が好評をいただき、講師評価98.7%でリピート率も高い。研修&講演を通して【働くを楽しむ】社会創りに貢献するという使命のもと、日本全国で精力的に活動中。

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