Yahoo!ニュース

セリフは「ナ」のみ。水樹奈々が映画クレヨンしんちゃんオーディションで勝ち取った運命の出会い

田幸和歌子エンタメライター/編集者
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024

『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』(佐々木忍監督、9日公開)に小さな恐竜「ナナ」役で出演している水樹奈々。名前も同じ「ナナ」ということから、てっきりご本人あてがきのオファーかと思いきや、実はオーディションで決まったのだという。こんな奇跡的な偶然ある? そもそも水樹奈々クラスの人気者がオーディションを受けること自体驚きだけど……。

そこで、水樹奈々に直撃インタビュー。オーディションのこと、収録現場のことなど、率直に聞いてみた。

「ナナ」役に決定。嬉しさと共に気になっていたこと

――SNSなどでは数年前からクレヨンしんちゃんファン、あるいは水樹奈々さんファンいずれからも「映画クレヨンしんちゃんに出てほしい」という声が挙がっていました。ある意味“相思相愛”が実現した形です。

水樹奈々(以下 水樹) そうなんですか!? めちゃくちゃ嬉しいです! 「しんちゃんファミリー」に入るのは一つの憧れでした。実は今回恐竜の「ナナ」ともう一つ別の役の両方でオーディションを受けていて。ナナ役で決定しましたと連絡いただいたときには本当に嬉しくて、ビックリしました。

――「ナナ」は水樹さんが演じることで決まった名前じゃないんですか。

水樹 違うんです。最初から小さな恐竜「ナナ」という役があって。とてもご縁を感じましたが、決まってから「もしかして名前が同じだから決まったのでは」とも思いました。でも、現場では勇気がなくて聞けず(笑)先日やっと(佐々木忍)監督に聞いたところ、「厳正なるオーディションの結果、水樹さんの声が良いと決まっただけで、名前は関係ない」とおっしゃっていて、嬉しかったです。

――そもそも水樹さんでもオーディションを受けることがある自体驚きです。

水樹 オーディションは毎回受けています(笑)。今回はきっと特徴のある可愛らしい声の声優さんがたくさん受けていらっしゃると思っていたので、私は無理だろうなと……。なので合格をいただいたときは、「まさか私が?」という感じでした。

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024 一番右が「ナナ」
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024 一番右が「ナナ」

オーディションでは「ナ」だけで喜怒哀楽を表現

――ナナ役のオーディションではどんなことをしたんですか。

水樹 ナナのキャラクターデザインはもうできていて、設定の概要もあって、いろいろなシーンを抜粋で演じました。(野原家の愛犬)シロや主人公・しんのすけと触れ合うシーンや、シリアスなシーンなど、「ナ」という音だけで喜怒哀楽をどう表現するのか審査されました。基本的には人間を演じるときと同じですが、ナナは恐竜の子どもということで、しんのすけより幼い、3~4歳くらいかなと自分の中ではイメージしていました。

――そこまでイメージされていたんですね。セリフは「ナ」だけなのに、ナナの感情も成長も伝わってきました。

水樹 3~4歳の子は真っ白なキャンバスだから、好奇心の塊で、外の世界では目に映るもの全てが珍しくて、飛びつかずにはいられず、本能的に動いてしまうんじゃないかなと思ったんです。だから、とにかく無邪気に、天真爛漫に演じられたらいいなと思いました。その一方で、これまで人との関わりはあまりなかったはずなので、最初は警戒心があっただろうなとか、シロが間に入ってくれたことによってスムーズにつながることができたんじゃないかとか、いろいろ考えました。

――これまでいろんな役を演じてこられましたが、ご自身の中で今回新たな発見もありましたか。

水樹 ナナを演じたことで、自分の新しい引き出しを見つけられた気がしています。言葉が喋れない分、どうやってみんなとコミュニケーションを取ろうか試行錯誤しながら、ただの鳴き声になってしまわないように、まるで会話しているようにみんなに感じていただける表現を目指しました。

(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024

シロとの言葉を超えたテレパシーのような会話

――シロとのコミュニケーションは一切言葉を介していないのに、優しい気持ちが伝わってきました。

水樹 シロとのやりとりは、真柴摩利さん(※風間くん役と二役)についていく形でした。特に打ち合わせをしたわけではなく、まずテストを監督はじめ制作チームの皆さんに聞いていただいて、調整していきました。実際にシロがナナを見つけてくれて、野原家に連れてきてくれる設定と同じく、真柴さんについていくことで、言葉を超えたテレパシーのような会話が生まれていた気がします。シロとのコミュニケーションでは、ダメ出しは実は1度もありませんでした。

――収録は他の共演者さんたちと一緒にやられているんですね。

水樹 そうなんです。作品によって、一人で行うものなどいろいろですが、今回はキャストがほとんど全員揃って収録していて。私は幸い一緒に収録させていただき歴史あるクレヨンしんちゃんの現場の空気を体感させていただいたことで、一気に距離が縮まる感覚がありました。単独収録ではこの空気を味わうことはできなかったので、一緒に収録できたことはとても大きいです。

――いろいろな現場を経験されてきた中で、どんな現場という印象を持ちましたか。

水樹 私は緊張しながら行ったのですが、とてもハートフルな現場で、皆さんが本当に優しくあたたかく迎えてくださって。映画のアフレコは長丁場で、丸1日かけて収録するので、休憩時間には皆さんとコミュニケーションを取らせていただいたり、一緒にお弁当やバナナの差し入れをいただいたりしました。

長年の友人、しんのすけ役・小林由美子との共演に沸く声も

――しんのすけ役の小林由美子さんとは長年の親しい間柄だと思いますが、今回、しんちゃんとナナとして共演されて、いかがでしたか。

水樹 嬉しかったですね。由美子ちゃんはすごくのびのびとしんちゃんを演じていて、頼もしい座長で、私の緊張も全部振り払ってくれたような気がしました。(声優は)みんな現場に入ると、キャラクターのスイッチが入っているので、素の部分は分断されますが、オフのときには由美子ちゃんと一緒に『お弁当美味しいね』『お腹空いてたまらないから、おやついっぱい食べちゃえ』『差し入れがたくさんあるよ』『なんて素敵な現場なんだ』なんてやりとりをしながら、キャッキャしていました(笑)。

厳しくも全力で応援してくれた両親は「ひろしとみさえのよう」

――この作品は、種族を超えた友情の物語であり、家族の物語でもあります。水樹さんご自身、芸能界に入ったきっかけにお父さんの影響があったと思いますが、親子の物語としてこの作品をご覧になりましたか。

水樹 子どもにとって両親はやっぱり絶対的な存在で。私の両親は厳しかったですが、(しんのすけの両親の)ひろしとみさえのように全力で頑張れと応援しサポートしてくれていたので、本当に恵まれていたと思います。子どものうちに、自分が何を好きで、何になりたいかということを明確に持って、それを実現するために動けるのはとても幸せなことで。私の場合は、両親が歌が好きだったこともありますが、早いうちから「この子は歌が好き」と見抜いて、それを伸ばしてくれたことに改めて感謝しています。

――ひと夏の思い出が描かれた映画ですが、どんな人にどんな風に楽しんでほしいと思いますか。

水樹 子どもたちにとっては、しんちゃんと一緒に思いきり笑って、一緒に白熱する作品だと思いますし、かっこいい恐竜がたくさん出てくるところにも大興奮すると思います。描写も本当に細かいので、図鑑などで予習していくと、より楽しめるかもしれないですし、自由研究の1つにできるんじゃないかと思うくらい恐竜の知識も盛りだくさんです。また、大人の方にはグッとくるシーンがたくさんありますので、ぜひハンカチをご用意いただいて、劇場に足を運んでいただきたいと思います。ピュアなエネルギーに満ちた作品なので、夏バテしたときの栄養ドリンク的に全世代の方に観ていただきたいですね。

(田幸和歌子)

画像提供/StarCrew 水樹奈々
画像提供/StarCrew 水樹奈々

『映画クレヨンしんちゃん オラたちの恐竜日記』(8月9日公開)
原作:臼井儀人(らくだ社)/『まんがクレヨンしんちゃん.com(https://manga-shinchan.com)』連載中/テレビ朝日系列で放送中/監督:佐々木忍/脚本:モラル/声の出演:小林由美子、ならはしみき、森川智之、こおろぎさとみ、真柴摩利/ゲスト声優:北村匠海、オズワルド
(C)臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2024

エンタメライター/編集者

1973年長野県生まれ。出版社、広告制作会社勤務を経てフリーランスのライターに。週刊誌・月刊誌・web等で俳優・脚本家・プロデューサーなどのインタビューを手掛けるほか、ドラマコラムを様々な媒体で執筆中。エンタメ記事は毎日2本程度執筆。主な著書に、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)など。

田幸和歌子の最近の記事