理学療法士と比較した作業療法士の特徴
田舎の民間病院で理学療法士として勤務しているぴぴです。
みなさまにひとつでもためになるような知識や情報をお届けしていきたいと思います。
今月のテーマずばり「理学療法士を知ろう」です。
理学療法士ということばは聞いたことあるけど、一体何をしている仕事なの?どんなところで働いているの?など、理学療法士に関する疑問を解決していきます。
理学療法士と作業療法士、何が違うでしょうか
理学療法士と一緒に働くことの多い職種として「作業療法士」という資格を持つリハビリ専門職がいます。
わたしが働く職場では、理学療法士も作業療法士も一括りにして「リハビリさん」「リハさん」呼ばれることが多いです。
もしかしたら医療介護業界で働く方の中にも、何が違うのかよくわからないという方もいるかもしれません。
理学療法士は「足」のリハビリ、作業療法士は「手」のリハビリ、と考えている方もいらっしゃるでしょう。
大まかな違い
理学療法士が起きる・立つ・歩くなど(基本動作)を中心に考えるのに対し、作業療法士はセルフケア動作や家事動作を中心とした日常生活に関わる全ての活動(応用動作)を軸に、患者さんや利用者さんのこころとからだの困りごとを考え、治療プログラムを立てています。
作業療法士の視点
セルフケアとは
食べること、トイレに行くこと、歯磨きをすることなど、日常の中で行う生活行為のことです。
リハビリ専門職が使う評価指標にFIM(Functional Independence Measure:機能的自立度評価法)というものがあります。
この指標で扱うセルフケアに関する評価項目には
・食事
・整容
・清拭
・更衣(上半身)
・更衣(下半身)
・トイレ動作
の6項目があります。
多くのセラピストがこのFIMという評価指標をもとに、患者さん・利用者さんの自分でできること/介助が必要なことを見極めて、「自分でできる」を増やしていくような治療プログラムを考えています。
たとえば「食べる」ことを考えたときに気に掛ける部分としては
・食器や道具を適切に使うことができるか
・食べ物を口に運ぶ動作ができるか
・咀嚼(噛むこと)、嚥下(飲み込むこと)ができるか
といったFIMの内容に沿った評価項目に加えて
・座っている椅子は適切か
・机の高さは合っているか
・食べている途中で姿勢が崩れないか
・使用する食器は妥当なものか(必要に応じて介助皿や先割れスプーンを考慮)
なども評価し、安全にひとりで食べられる道具や姿勢を考えています。
セルフケア動作は健康であれば特別な動作ではありません。
しかし、障害のために食べることやトイレに行くことといった、生活の中で不可欠な動作ができなくなってしまうというのは本当につらいものです。
リハビリを重ねていくうちにセルフケア動作がまたできるようになったという瞬間に立ち会い、患者さん・利用者さんに喜びをわけてもらえることは、わたしたちセラピストのやりがいにも繋がっています。
家事動作とは
炊事・洗濯・掃除・ゴミ出し・買い物・草むしりなど、名のある家事から名もなき家事まで、家庭によって必要な家事動作は異なります。
たとえば炊事だったら、
・コンロの種類(ガスか電気か)
・シンクの位置(コンロや調理スペースの右にあるか左にあるか)
・冷蔵庫の開き方(右開きか左開きか)
など、キッチンの構造が同じだったとしても家庭ごとに家電を置く位置が違ったり、食器やキッチン用品を片付ける場所が違ったりしますよね。
障害のない人にはなんてことのない違いでも、左右差のある障害を持った方にとってはできる/できないに大きく影響します。
障害に合わせた配置や動線の工夫や、自助具を用いて使いやすくする工夫をして、患者さん・利用者さんひとりひとりに合わせた方法を見つけ出すお手伝いをしています。
まとめ
10月のテーマ「理学療法士を知ろう」にちなんで、理学療法士と一緒に働く「作業療法士」について解説してきました。
今回解説した作業療法士のお仕事は、高齢者向け病院の内容が中心となっていますが、作業療法士はこころとからだのどちらもサポートしてくれる職種なので、医療・介護の分野だけでなく、保健所や特別支援学校、障害を持った方の就労支援など、働く分野も多岐に渡ります。
あなたの近くでも作業療法士さんが活躍しているかもしれませんね。
次回は同じくリハビリ専門職として働く言語聴覚士について解説していきます。
少しでも理学療法士やリハビリテーションに興味を持っていただけたらうれしいです。