薬と「飲み物」の危険な組合せ グレープフルーツ以外の果物も注意
薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせがSNSで話題になりました。では突然ですが「薬と飲み物の飲合せ」についてお尋ねします。○か×で考えてみてください。
薬を飲むとき「アップルジュースでなら一緒に飲んでも良い?」「ジュースはダメだけどお茶なら大丈夫?」。
正解はいずれも「×」です。正解だった人も、間違ってしまった人も 、知っているようで知らない薬と飲み物の飲み合わせについて改めて確認してみましょう。
薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせ
まずは、薬とグレープフルーツジュースの飲み合わせに関する疑問を解決していきましょう。
なぜグレープフルーツジュースは薬と相性が悪いの ?
グレープフルーツと薬の相性が悪い理由としては、主に2つのメカニズムが考えられます。
ひとつ目はグレープフルーツに含まれる成分が、薬を分解する酵素のはたらきをさまたげる仕組みです。
たとえば、高血圧などの治療に用いるCa拮抗薬とグレープフルーツジュースを一緒に摂ると、グレープフルーツジュースが薬を代謝する酵素のはたらきをさまたげると考えられています。
すると、薬がなかなか分解されず体のなかに留まるため、血圧が下がりすぎるなどの予期せぬ副作用が起こるおそれがあります。
もうひとつはグレープフルーツジュースの成分が薬物トランスポーターのはたらきに影響を及ぼす仕組みです。
薬物トランスポーターはわたしたちの体のさまざまな部位に存在しています。たくさんの種類があって、薬を体のなかに取り込んだり、逆に体の外に汲み出したりする役割などを担っています。
今回関わっているのは、体のなかに薬を取り込む役割をするトランスポーターです。たとえば、アレルギーの治療に用いるフェキソフェナジン(商品名:アレグラなど)や、高血圧などの治療に用いるアテノロール(商品名:テノーミンなど)等をグレープフルーツジュースと一緒に摂ると、トランスポーターのはたらきが阻害されます。
すると、体に取り込まれる薬の量が減って血液中の薬の濃度が低下します。そのため、期待した薬の効果が得られない可能性があります。
グレープフルーツの「ジュース」はダメだけど「果肉」なら良い ?
果肉も避けた方がよいと言えそうです。なぜなら、グレープフルーツの果肉にも、薬を分解する酵素をさまたげる成分のフラノクマリン類が含まれるからです。
この成分はグレープフルーツの果皮や種にも含まれていて、特に果皮に多く含まれます。そのため、ジュースや果肉だけではなく、果皮をつかったジャムなどにも気をつける必要があります。
薬を飲んでからしばらく時間を空けたらグレープフルーツジュースを飲んでも良い ?
薬を飲んでいる間は、時間をずらしてもグレープフルーツジュースの影響を避けるのは難しいと言えそうです。
なぜかというと、グレープフルーツジュースが薬を分解する酵素に及ぼす影響は通常24時間くらい続くとされているためです。なかには3~4日間ほど持続するという報告もあります。
グレープフルーツ以外の柑橘系の果物なら薬と一緒に摂っても大丈夫 ?
「みかん」「オレンジ」「甘夏」「デコポン」が薬に及ぼす影響は低いと考えられます。なぜかというと、薬を分解する酵素をさまたげる成分フラノクマリン類がこれらの柑橘類には含まれないためです。
一方で、同じ柑橘類でも「ぶんたん」「はっさく」「金柑」「ばんぺいゆ」にはフラノクマリン類が多く含まれています。そのため薬に影響を及ぼす可能性があるので注意が必要です。
フルーツジュースやお茶との飲み合わせ
グレープフルーツ以外の果物のジュースや、お茶との飲み合わせについてもみてみましょう。
アップルジュースなら薬を飲んでも大丈夫 ?
答えは「×」です。薬との飲み合わせに注意が必要なフルーツジュースはグレープフルーツだけではありません。アップルジュースやオレンジジュースが薬に影響を及ぼすこともあります。
たとえば、先ほども登場したアレルギー治療薬の「フェキソフェナジン」は、アップルジュースやオレンジジュースと一緒に摂ると体のなかに吸収される薬の量が減ってしまいます。
これには、先述したとおり薬物トランスポーターが関わっています。ジュースのなかのフラボノイド類という成分が薬を取り込む役割をするトランスポーターを妨げます。
そのせいで、フェキソフェナジンの血中濃度はオレンジジュースと一緒に摂ると72%、アップルジュースでは78%も低下 するという報告もあります。つまり、せっかく薬を飲んでも効かないおそれがあります 。
食後にお茶を飲むついでに「食後の薬」を飲んでも良い?
答えは「×」です。食事を終えてほっと一息。「食後のお茶を飲むついでに薬も飲んでしまおう」と、ついやってしまいがちですが、緑茶などのカフェインを含むお茶と飲み合わせが悪い薬もあります。
たとえば、気管支炎やぜんそくのときに使うことがあるテオフィリン (商品名:テオドールなど)は、カフェインを含む飲み物と一緒に摂ると、神経を興奮させる作用が強まったり、お互いに薬の代謝をさまたげあって血液中の薬の濃度が高まるなどして、頭痛、動悸、イライラなどの症状が現れることがあります。
なお、カフェインは緑茶、コーヒー、紅茶などの飲み物のほか、エナジードリンク、コーラなどにも含まれるので注意が必要です。
お茶といえば「ハーブティー」なら薬と一緒に飲んでも大丈夫?
答えは「×」です。たとえば「セントジョーンズワート 」というハーブは、強心薬のジゴキシンや、低用量ピルのレボノルゲストレル・エチニルエストラジオール(商品名:アンジュ28錠など)などを分解する酵素を増加させるはたらきをします。
そのため、セントジョーンズワートとこれらの薬を一緒に飲むと、薬の分解が促されて十分な効果を得られないおそれがあります。
基本的に薬は水で飲むことが大事
薬と飲み物には相性の悪い組み合わせがあります。基本的に薬は水で飲むことが大切です。
そうとはいえ、たとえば「グレープフルーツジュースが大好き」「エナジードリンクが欠かせない」という人が、「大好きな飲み物をガマンするくらいなら薬をやめてしまおう」と、自己判断で薬を中断してしまったら健康を保つのに影響が及ぶおそれがあります。
ですから、もし薬を飲むときに困ったことや不便なことがあったら、まずは主治医や薬剤師に相談してください。
■参考