10月31日の金融政策決定会合での政策修正の可能性
10月30、31日に日銀の金融政策決定会合が開催される。いまのところは現状維持予想も多いようである。しかし、本当に現状維持となるのであろうか。
日銀の野口審議委員は12日の記者会見で、長期金利は0.8%まで上昇していたが、「1%という上限にはまだ余裕がある」と指摘した。決定会合までに1%に達する可能性は薄いかもしれないが、余裕と言う言葉が使えるほどの乖離はない。
野口委員は米国の金利上昇に連動したものであり、米金利動向を含めて「もう少し見極めが必要だ」との考えを示した。
たしかに米長期金利は中東情勢を受けてリスク回避の動きとなって一時低下していた。しかし、その後、原油価格が上昇するなどし、再び米長期金利に上昇圧力が掛かっており、19日には5%を付けた。
野口審議委員はイールドカーブコントロール政策について「何か慌てて再度調整が必要とは、現在のところはみていない」と語った。私はこれがリフレ派の野口氏の個人的な意見というよりも日銀執行部の見方が反映されたものとみている。
3日の日本経済新聞の記事電子版に、「植田日銀、2%へ揺るがぬ信念 確信なら「一気に動く」、というタイトルの記事があり、この記事のなかに下記の記述があった。
「植田氏は4月の就任直後にある洗礼を受けたとされる。関係者によると、首相官邸を訪れた植田氏に岸田文雄首相はこんな趣旨のけん制を繰り出した。 当面は金融政策の転換と受け止められる動きは避けるように」
この意向がいまだ強く反映されているようだ。次回の会合では展望レポートも発表され、物価見通しがサイド上方修正される見込みともなっているが、本来であればこれに合わせてYCCの修正(廃止)などがあってもしかるべきかと思うが。
国際通貨基金(IMF)アジア太平洋局のサンジャヤ・パンス副局長は14日、最近の円安はファンダメンタルズに沿った動きで、為替介入の要件は満たしていないとの見解を示した
さらに財務省の神田真人財務官が16日に、為替相場が激しく下落した場合には、国は「金利を上げることによって資本流出を止めるか、為替介入で過度の変動に対抗する」と述べていた。
つまり円安の要因に、日銀が強引に行っている金融緩和策があることを暗に示唆したものともいえる。
官邸と日銀が一体となって物価高なありながら大胆な金融緩和を進めているが、それをいつまで続けるつもりなのか。日銀副総裁の一人は神田財務官と同じ財務省出身でもある。少なくとも全員一致はやめて、金融政策の正常化を目指す意見が出てきても良いのではなかろうか。意見だけでなく正常化に向けた政策転換を進めるべきだと思う。