かまいたち・山内が語る、芸人仲間に対して抱いていた本音「頼むから『M-1』で優勝せんとってくれ」
ディズニー&ピクサーによるアニメーション映画『バズ・ライトイヤー』。同作の日本版で、主人公・バズの相棒である猫型の友だちロボット・ソックスの声優をつとめたのが、お笑いコンビ・かまいたちの山内健司だ。
世界中で大人気『トイ・ストーリー』シリーズの人気キャラクター、バズ・ライトイヤーの原点を描く物語に携わることになり、「びっくりしています」と驚く山内に、映画の内容にちなんで「芸人仲間との関係性」などについて振り返ってもらった。
「『M-1』で優勝できなかったことで、ツッコんでもらえる余地」
かまいたちは『歌ネタ王決定戦 2016』で4代目王者に輝き、山内自身も大阪時代に音楽ユニット・5uppersに参加するなど、「声」には一目を置かれる存在だった。
山内は「たしかに僕はそこまで音痴じゃないというか、ある程度は歌える方かなって。まさか、『バズ・ライトイヤー』で5uppersの話をするとは思ってもみませんでしたが(笑)、当時はラップネタのパートを担当していました。ただ、そういう歌ネタって表情込みで感情を伝えることができるんですけど、アニメーション映画の声優は自分の言葉だけで感情を表現しなければならない。それがすごく難しかったですね」と声優の大変さについて口にする。
スペース・レンジャーのバズは自分の力を過信したことで、乗組員たちを巻き込んで危険な惑星に不時着。彼はその後悔を胸に、地球へ帰還するための不可能なミッションに何度も挑む。
そんなバズのチャレンジについて、山内も「悔いを残して生きるのって、一番苦しいこと。僕も2019年の『M-1』ラストイヤーはもともと出ないつもりでしたが、相方の濱家(隆一)が『あのとき出ておけば良かったと絶対になる。やり残した感じで一生を過ごすことになるから、やっぱり出たい』と。そういう意味では『M-1』での後悔はないんです。あと、これは小籔(千豊)さんが濱家におっしゃっていたことですが、『キングオブコント』(2017年)や『歌ネタ王』で優勝して、『上方漫才大賞』(2021年)で大賞も獲って、もしそれで『M-1』まで優勝していたらイジりにくいと。『かまいたち、スベッてるやん』と言えなくなるから。そういう意味で、『M-1』を勝てなかったことでツッコめる余地があって、小藪さんは『それが良いんだ』って」と、すっきりした気持ちで『M-1』を卒業したという。
一方で「もちろん、優勝はしたかったです。あと、(当時所属していた)よしもと漫才劇場の仲の良い後輩芸人たちが2019年の『M-1』最終決戦の発表のとき、ミルクボーイの名前が読み上げられるたびに『うおー!』となって。ミルクボーイの優勝が決まって大盛り上がりする映像を観たんですけど、『お前ら今までめっちゃ良くしてきてあげたのに、なんでやねん』となりました。メシをご馳走して『あざーす』と喜んでくれていた後輩たちが、ミルクボーイが勝って『よっしゃー』となっていて。あの光景は忘れられません」と恨み節。
「渋谷凪咲は存在自体がバラエティ、もし相方ならあれだけできる人はいない」
映画の見どころは、ソックスを相棒に迎えたバズがどんな活躍をみせるかである。仲間たちと困難を乗り越えていく大切さが描かれている。
ちなみに6月7日放送『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』(関西テレビ)では、「ピン芸人が相方に選びたい芸人」として山内が2位に挙げられた。「嬉しいと思いながら収録をしていましたね」と笑顔を浮かべながら、「コンビを組んでいて楽しそうとかではなく、『ネタがおもしろい』と言ってもらえたのがありがたかったです。『この人と組んだら戦っていけそうだから』という感じで」と番組を振り返る。
山内が考える理想の相方像は、「お互いに高め合える人。どんどん前へ行こうとするタイプが良い」とのこと。なかでも「NMB48の渋谷凪咲はそれに当てはまるかも。彼女は存在自体がバラエティって感じで、ちょっと怖いくらい。凪咲はどの番組で誰と絡んでもやっていけるじゃないですか。しかも、こちらが話を振ったら欲しい答えをちゃんと返してくれる。『いやいや、今はそっちじゃないねん』ということが凪咲にはないんです。相方として、あれだけできる人はなかなかいないんじゃないかな」と、バラエティ番組を席巻中の渋谷を絶賛する。
「藤崎マーケット、天竺鼠、和牛、バイク川崎バイクを意識していた」
実際にコンビを組んでいる濱家については「あいつは相方としては、決して楽なタイプじゃないんです。コンビ結成直後は遅刻も多かったし、戦いに遅れてくる人間だったから。ただ、一緒にやっていくなかで気持ちが噛み合ってきました。『M-1』や『キングオブコント』でも、賞レースに勝つためにはどうしたら良いかとか、意見のズレがなくなってきたんです」と言い、「映画のなかでもバズって最初はソックスをそこまで信頼していないんですよね。『全部、自分でやるんだ』って感じで。ひとりで責任を負ってやっていこうとする。でもそうじゃないよ、仲間に支えられているんだよって気づくんです。そういう意味では、僕はソックス役ではあるけど、バズの気持ちと重なる部分もありました」と語る。
逆に「ジャルジャルさんなんかは、誰かと群れずにふたりだけで生きている印象があって、特殊だけどおもしろいなっていつも思います。しかも、ほとんどネタオンリーでやっているじゃないですか。ジャルさんは昔からずっとあの感じなんです。今は一匹狼感がより増していますし、すごいですよね。僕らは、藤崎マーケット、天竺鼠、和牛、バイク川崎バイクをすごく意識していました。誰かが先にメディアに出たら悔しかったし。これは今だから言えますが、仲間が『M-1』『キングオブコント』で勝ち進んだら『頼むから俺らより先に売れんといてくれ、優勝せんとってくれ』(註1)と考えていました。同じようにまわりの芸人も、たとえば2017年の『キングオブコント』のときは密かに『にゃんこスター、がんばれ』となっていたかもしれませんよね。お笑い芸人って意外と狭い世界だから、いろんな関係性があるんです」と噛みしめるように話してくれた。
「仲間のために自分はいったい何ができるのか」について訴えかける、映画『バズ・ライトイヤー』。山内は「みんなが感じているバズのイメージとはちょっと違う一面も見え隠れしますし、『そういうストーリーなんや』と意外性もあります」と鑑賞のポイントを挙げてくれた。
註1:「先に売れないで欲しい、優勝しないで欲しい」の意
映画『バズ・ライトイヤー』は7月1日より全国公開
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン