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澤円×倉重公太朗「あたり前を疑え」~軽やかに生きるヒント~最終回

倉重公太朗弁護士(KKM法律事務所代表)

倉重:最後のテーマにいきたいと思います。読者の方は若い方が多いと思うのですが、これから社会に対してとか、あるいはこれから挑戦しよう、これから少し変化させてみようと思っている人たちに対して贈る言葉はいかがですか。

澤:とにかく新しいことはどんどん出てくるので、とにかくそれに対してアンテナを張っておいて、面白そうだと思ったら飛びついてしまえということなのです。基本的におっさんの言うことは聞かなくていいと。正確に言うと、聞いても、正しいと思って聞く必要はないと。一つのあり方であり、選択肢であり、全部そうだと思っておけばいい。

倉重:おっさんが言うから正しいわけではないですね。

澤:完全に正しい人というのは、正直この世にはいません。

倉重:それは神様ですね。

澤:でも神様も神話とかを見ているとあの人たちはむちゃくちゃじゃないですか。ギリシャ神話とかは「おい、おい」という感じじゃないですか。

倉重:お前、ずいぶんわがままだな、という感じですね。

澤:そうです。「お前嫉妬したからって、別にヘビとかに化けさせなくてもよくねえ?」とか。

倉重:厳しすぎではないかと。

澤:「ちょっと、石ずっと抱えてるとか、そんな殺生な」とかあるわけです。絶対正しいというものはないわけです。そう考えると、いろいろなものは選択肢であると考えておけばよくて、ただ新しいものが次々に出てくるから、それに対する好奇心は持っておくことは、これはもう絶対お勧めなのです。いろいろな好奇心を持っておけばいいです。そしていろいろなロールモデルを興味を持って見ておきます。この人のここが参考になるなとか、この人のまねをしてみようかなというのは全然大いにやっていけばいいということだと思うのです。早すぎることも何もないし、遅すぎることも何もないという。僕は割と年を取っている連中にも、いつ始めても遅くないという話をするのですが、遅すぎることはないと思って、あるいは早すぎることはないと思うと、何でもチャレンジする一つの理由になると思うのです。

倉重:空手もですよね。

澤:空手は30歳からです。

倉重:30歳からでも今何段でしたか。

澤:今三段です。

倉重:三段取れて、スキーは何歳からですか。

澤:スキーも二十歳過ぎてからぐらいかな。

倉重:学生のときとかそんなにやらずに。

澤:一応大学のときに始めて、でも本格的に始めたのは社会人になってからです。

倉重:それでインストラクターもできてしまうのですね。

澤:時間がかかったとしても、まあどうにか、こうにかなると。だから好きなことはいつ始めても構わないというのはやはり少しあって、あとは誰に何か言われたから、仕方がないから諦めるという人生は、少しくだらないからやめましょうという話です。

倉重:諦めることをお勧めしてくるおじさん、強制してくる人はいますよね。「やめたほうがいいんじゃない? これはあなたのために言っているんだよ」という人。

澤:あなたのために言っている人は、大体自分のために言っています。それは全部嘘ですから。

倉重:その人の人生の責任を負うわけではないですもんね。

澤:よく言っているのが、就職活動の悩み相談みたいなやつで、「親が。。。」とか言うのです。親がここの会社はやめとけとか。もちろん、親御さんは心配しているのは間違いないです。ただしその親御さんの就職観は30年前の代物です。古すぎますよという話です。あともう一つが、親御さんが、いくらあなたを愛していたとしても、全人生に責任を持つことは不可能です。

倉重:途中でいなくなってしまいますもんね。

澤:だからあなたが選択するというのが一番大事なのではないですかというのがアドバイスです。

倉重:やはり良い大学に入り、良い会社に入り、そして良い出世をして定年まで、こういうロールモデルがだんだん通用しにくくなっている社会なので、その中でやはり重要なのは自分の選択ということですね。

澤:自分でいかに自分の人生をきちんと選択していくかというところで、初めて幸せの形が出てくるのかなと思います。アカデミー賞を取った「グラン・トリノ」という映画があるのです。クリント・イーストウッド監督の、ブルーカラーでずっとフォードか何かに勤めていた人という役で、奥さんが先に亡くなって、独り者になって、息子がいますが仲が良くなくてという感じです。その人たちが地元に暮らし始めたアジア人と交流するようになって、最初はすごく偏見を持っているクソ親父だったのだけれども、そのアジア人の一家とすごく仲良くなってという、そういう話なのです。その人も結局幸せな人生というのは何だったのか、よく分からない状態で年を取ってしまって、なおかつ奥さんも先に逝ってしまってという状態でしたが、最後は自分で選びます。最後は自分の人生を自分で選択するというふうにしているので、やはり遅すぎることはないなと思います。

倉重:最後でもいいのだと。最後の最後でもね。

澤:そうなると、若い世代は何を選んでもいつでも取り返しがつくのだから、取り返しなんていくらでもつくから心配するな、一番やりたいことを上から順番に選んでいけという感じです。

倉重:今日はちょうど会場に若い世代のゲスト観覧者にお越し頂いていますので、ゲストからの質問を一つ頂きたいと思います。どうぞ。

質問者の小屋松氏
質問者の小屋松氏

小屋松:野村総合研究所の福岡ソリューション開発部に所属の小屋松裕貴と申します。質問させてください。今までの人生でやりたくないことに取り組んだことはありますか?

澤:そんなことは日々あります。

小屋松:そのやりたくないことに対して取り組むときのモチベーションや考え方というのはどうなさっているのか、参考にしたいなと思います。

澤:面白いね。やりたくないことは、当然若い頃は仕方がなくやっていました。今はやりたくないことは、できる限り得意な人にやってもらって、お礼を言うことに集中します。アウトソーシングします。できる限り自分でやりません。

倉重:自分でやるとコストパフォーマンスが悪いですもんね。

澤:そうです。結局コストパフォーマンスは悪いし、クオリティも悪くなるので、だったら得意な人にやらせるという、これは結構今徹底してやっていることです。

倉重:自分を見極めるというのも大事ですね。

澤:そうです。そのためには何がいいかというと、できない自分をいかに普段からさらけ出し慣れている状態にするかです。僕はとにかくできないことが多すぎるので、「俺、言っとくけど、買いかぶんじゃねえぞ、俺、相当駄目だぞ」というのを常に言います。「俺がどれだけ駄目か、あなたちょっと見くびってる」と。

倉重:逆に駄目さアピールをすると。

澤:そうです。どれだけ駄目かというのを必死に理解してもらって、きちんとそれをやらかして、本当に澤さん駄目なんですねと知ってもらいます。

倉重:きちんとやらかすのですか(笑)

澤:やらかします。そして理解してもらって、思い知らせて、その代わり、やってくれたらお礼もするし、それ以外にあなたが苦手なことは、僕が得意なことだったらやってあげるよ、誰かを紹介するとか、それだけは全然やるよという感じのバーターをやっていきます。1人でどうにかしようとしないことです。

 そのためには、これをよく言っているのですがギブ・ファーストの精神です。自分のほうから先に何かを提供するということを徹底すると、結果的にはお返しをいつでももらえる状態にもなるわけです。お返し目的ではないのだけれども、ただギブ・ファーストをするというマインドセットを常に持ち続けていると、助けを求めやすいというポイントがあると思います。

倉重:ありがとうございます。お時間も迫ってまいりましたが、最後に、毎回皆さんに聞いているのですが、澤さんの夢を聞かせていただきたいと思います。

澤:実は、僕はこれになりたいとか、こういうふうにしたいとか、大豪邸に住んで、スーパーカーに乗りたいとかは、あまりないと思います。ただ僕は最大多数の最大幸福という言い方をしているのですが、なるべく多くの人たちに対して、何かハッピーになってもらえるようなことをずっとし続けたいなと思っているのです。ずっとし続けるということに関して言うと、それは一つの夢なのかもしれないです。何か事を成すということよりも、ずっと何かをしていたいのです。

倉重:生涯現役ですね。

澤:そうですね。生涯現役でいたいというのがあります。それも与える側です。ただ単に何かをする、作業をするというよりも、何か与える側に常にありたいというのはずっと思っていました。

倉重:それはまたアップデートも頑張らなければいけないですね。

澤:そうです。当然のことながら体は健康でなければいけないだろうし、知識は常にリフレッシュしてなければいけないだろうし、若い人たちとのコミュニケーションも、決して老害にならないようにずっと続けていかなければならないでしょう。

 僕の場合には子どもがいないので、僕もかみさんも子育てに割かなければいけない時間というのはゼロなわけです。だからそこの部分の割り当てというのがすごく自由に利くので、それをうまく時間の割り当てをプロデュースしていって、最終的に貢献度合いをどんどん上げていけばいいかなと思っています。

倉重:いいですね。まさに生涯現役社会を地で行くということですね。ちょうど前回対談した84歳の弁護士も全く同じことをおっしゃっていて、やはり今でも裁判案件をやっています。

【84歳現役弁護士の森田氏】

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澤:格好いいですね。

倉重:好奇心を忘れずに山などにも登っていて、健康と好奇心、これだと。

澤:まさにそれですね。

倉重:本当に同じ話でした。だから30年後に澤さんも多分同じことを言っているのだろうなと思います。

澤:本当にそうありたいですね。

倉重:これで終わりたいと思います。澤さん、どうもありがとうございました。

澤:ありがとうございました。

澤円

立教大学経済学部卒。生命保険のIT子会社勤務を経て、1997年、外資系大手IT企業に転職。 ITコンサルタントやプリセールスエンジニアとしてキャリアを積んだのち、2006年にマネジメントに職掌転換。

幅広いテクノロジー領域の啓蒙活動を行うのと並行して、サイバー犯罪対応チームの日本サテライト責任者を兼任。

現在は、数多くのスタートアップの顧問やアドバイザを兼任し、グローバル人材育成に注力している。

また、美容業界やファッション業界の第一人者たちとのコラボも、業界を超えて積極的に行っている。

テレビ・ラジオ等の出演多数。

Voicyパーソナリティ

琉球大学客員教授。

Twitter:@madoka510

質問者:野村総合研究所福岡ソリューション開発部所属小屋松裕貴(27歳)

弁護士(KKM法律事務所代表)

慶應義塾大学経済学部卒 KKM法律事務所代表弁護士 第一東京弁護士会労働法制委員会副委員長、同基礎研究部会長、日本人材マネジメント協会(JSHRM)副理事長 経営者側労働法を得意とし、週刊東洋経済「法務部員が選ぶ弁護士ランキング」 人事労務部門第1位 紛争案件対応の他、団体交渉、労災対応、働き方改革のコンサルティング、役員・管理職研修、人事担当者向けセミナー等を多数開催。代表著作は「企業労働法実務入門」シリーズ(日本リーダーズ協会)。 YouTubeも配信中:https://www.youtube.com/@KKMLawOffice

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