就職コロナショックが日本の新卒採用を変える。今、企業が新卒採用の科学に対して熱が高まるワケ
連日報道される新型コロナウイルスの影響はどこまで行くのか。
2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の時のビジネス市場の混乱を思い出す社会人は少なくないだろう。新卒採用においても大混乱に陥り、内定取り消し・採用縮小が相次ぎ「就活難民」という言葉ができる程だった。
企業はそんな経験から『新卒採用の科学』に力を入れており、ここ数年ではさまざまな採用手法、管理、独自のインターンシッププログラムを開発している。
動画面接に集まる注目
今回の新型コロナウイルスの影響でリアルイベントが中止になり『WEB化』が急激に注目されている。これまでWEBでの面接に対して懸念を持つ企業、人事も多かったが2020年で流れは変わるだろう。
とはいえ、新型コロナウイルスの影響が「動画面接」の火付け役ということではない。ここ数年で多くの企業が留学生や地方学生との面談、面接の効率化を図るために「動画面接」のチャレンジをしている。そのベースがあったからこそ今回のような救急時に動画を使用した合同説明会、セミナー、面接が違和感なく導入されたと言える。
すでに「動画面接」を活用している企業の声
実際に人事や学生からの顧客満足度で支持されているWEB面接ツール「HARUTAKA(ハルタカ)」を2020年卒の新卒採用において導入している株式会社オプト 人事戦略部 松本 拓也氏に話が聞けた。
従来は人事がすべての候補者の面接を行っていましたが、やはりスピーディかつ効率的に選考を進めることは難しく、日程調整待ちやキャンセル待ちが多く発生していました。学生の意欲低下が深刻な懸念材料であるのはもちろん、人事側の負荷の大きさも課題でした。
そこで選考プロセスを一つひとつ見直したところ、もっとも負荷が大きいのが一次面接に当たるグループ面接でした。一次面接までの流れとしては、200人規模の会社説明会をほぼ毎週開催し、それから適性検査を実施して選考をしていましたが、それでも一次面接の場では安定志向の学生も多く、適性検査では十分に学生のことを見極められないのではないかという課題がありました。そこで従来の一次面接(グループ面接)を置き換える形で動画面接を必須としました。
結果は圧倒的な工数削減に加え、内定承諾率も7%改善されることが出来ました。
また、「動画面接」によって生まれた時間を、二次選考以降の学生接点の時間にあてることができるようになりました。
エントリーシートが動画に?
人事や学生に支持されるWEB面接ツール「HARUTAKA(ハルタカ)」について詳細確認をしてみると大きく2つの機能を搭載していることが分かった。
「ライブ面接機能」では面接をオンラインで実施でき、距離、時間、場所などの制約がなくせるため、地方学生など選考受けるハードルが上がってしまっている学生にも平等に選考機会を設けたいと考える企業を中心に導入されている。
そして「録画動画面接」は今までエントリーシートのように文章ではなく、学生が「動画」で自己PRができる機能となっている。テキスト情報ではなかなか伝わらなかった、話し方のスピードや口調などの特徴もくみ取れることが採用担当に評価され1次選考の代用として活用している企業も増えて来ているようだ。動画世代でもある学生は違和感なく使用できるという点でも支持されている。
リクナビ/マイナビ離れの裏に新卒オファー型サービス
次に注目したいのがこれまで就活生の主アイテムだった「就活ナビ」以外の採用手法と言われている『新卒オファー型サービス』だ。新卒紹介、リファーラル、イベント型採用など人事のチャネルは急激に増えているが『新卒オファー型サービス』においては就活生だけではなく大学1,2年生までターゲットが広がっている。
学生登録者数は29万人以上と業界最大級の新卒オファー型サービス『dodaキャンパス』(運営会社:株式会社ベネッセi-キャリア)は学生のプロフィールに記載した自身の経験を企業がチェックをして1通ずつ厳選したオファーを送る。
また採用オファーだけでなく、早期インターンオファーなども届くので低学年時からの活用事例が増加していると言う。就活の超早期化の流れもこんなところで感じてしまう。
自分では気づいていない魅力的な企業や業界と出会える
実際に『dodaキャンパス』を導入している三菱自動車工業株式会社の人事担当者は「自動車業界や自社に全く目を向けていない学生にアプローチをしてターゲットとしている情報学専攻学生の採用につながった」と新たな採用手法を評価している。
一方で学生側は就職の方向性が掴めていない状況でも低学年時から学業や活動などの努力した実績、そこで得た価値観や能力を企業がみつけてオファーをしてくれるので、自分がどの業界で価値発揮が出来そうかという判断にも繋がると言う。
新卒採用の科学に必要な管理システムも進化
採用手法の多様化、ポジション別採用、インターンシップなど新卒採用は進化をしながらより複雑化している。そんな中で注目されているのが人事の「採用管理システム」だ。
導入後継続率No1で学生一人ひとりにあわせたコミュニケーションが設計できる採用管理システム『HITO-Linkリクルーティング(運営会社:パーソルプロセス&テクノロジー株式会社)』は、
「ナビサイトからの応募情報自動取り込み」
「スケジューラ連携したイベント予約機能」
など採用担当の業務自動化機能はもちろん、一人ひとりの学生に合わせて、選考回数の設定や面談などを設計できる機能で学生別に選考をカスタマイズできることが評価されている。画一的な選考を回すのではなく、一人ひとり向き合った選考をしたいと考える企業を中心に導入が進んでいる。
実際にHITO-Linkリクルーティングの活用事例を株式会社スペース 人事企画本部 人事部 チーフの高津様にお話を伺うことが出来た。
HITO-Link 導入によって、オペレーションに重きを置いた採用活動から、自社にとって必要な「人材獲得」活動へ変化を遂げることができました。導入前は、学生との日程調整やデータ作成業務等に追われており、学生の自己PRや性格的な特徴などのいわゆる人情報を蓄積できる余裕が無かったため、学生と現場の橋渡しのような活動にならざるを得ませんでした。また、拠点ごとの選考プロセスが属人的でありノウハウが蓄積されづらい環境でした。
HITO-Link を導入してからは、作業工数を大幅に減らすことができた分、選考プロセスの全体最適化に取り掛かることができました。更に、人情報を一元管理できたことにより、拠点ごとの担当者が学生一人ひとりに向き合う時間を多く持てるようになりました。HITO-Link に蓄積された人情報は入社後にも活かされています。育成・キャリアとも連動させることで、育成に携わる社員も以前より新入社員の情報を読み込んだ上で、育成計画を立てることができています。
就活コロナショックが企業の新卒採用を変える
まさに世の中で騒がれている「人混み」を避けるという点で、企業の採用活動では「動画面接」が注目されている。
7月からの東京オリンピックを見据えたリモートワークや今回のような感染症対策の一環としても活用の幅が拡がりそうだ。さらには、海外や地方採用においては距離、時間、場所などの制約がなくなるため企業・学生双方にとってメリットがあるため可能性はさらに広がるだろう。
また変化の激しい就活市場だからこそ大学側は低学年時からキャリアについての興味喚起を強化する流れがある。となれば学生が低学年時から活動して学び、スキルを得ることを可視化出来る仕掛けとして今回紹介したdodaキャンパスのようなシステムやそこに注目するダイレクトリクルーティング型採用の可能性は学生、大学、企業でさらに拡大する。
今回の就活コロナショックを機に企業の新卒採用は大きく変化する可能性が高い。
インターンシップの活用、アナログ会社説明会、面談・面接、そして企業の学生管理と情報の活用方法とこれまで当たり前だったものが、新しい取り組みに挑戦をせざるを得ない状況の中で新しい価値を生み出すことだろう。
学生は企業の変化をキャッチすることで大学の学び、就活の準備、キャリアの考え方が変わる時代です。
先輩や就活最前線から離れた大人たちの意見に流されずに、自分の足で稼いだ「正しい情報」で就活やこれからのキャリア、はたらくに向き合って欲しい。
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