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ホワイトソックスに忍び寄る“史上最弱チーム”という不名誉な記録

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズンを通して厳しい戦いを強いられているホワイトソックスのグリフォル監督(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【シーズン後半戦白星無しのホワイトソックス】

 ホワイトソックスが現地時間7月25日に行われたレンジャーズ戦に1-2で敗れ、現在の連敗を11に伸ばしてしまった。これでシーズン後半戦が始まってから未だに白星がなく、7月の月間成績も3勝16敗と低迷を極めている。

 ホワイトソックスは5月下旬にも球団記録にあと1つに迫る14連敗を喫しているが、26日以降勝率5割以上のマリナーズとレッドソックスの3連戦を控えており、現在のチーム状況を考えると、球団記録を塗り替える可能性も否定できない。

 すでに米メディアの間では、このままの状況で推移するようなら、1962年に球団創設1年目のメッツが記録した、MLBのシーズン最多敗戦記録120を上回るのではと囁かれ始めている。

【記録保持者の1962年メッツに匹敵するペース】

 実はMLB全体の歴史で考えると、1899年のクリーブランド・スパイダーズというチームが134敗(20勝)という不名誉な記録を残している。あくまでメッツの記録は、モダン時代に入って以降のものとなる。

 それでもモダン時代は1901年以降を指しているので、120年以上の長きにわたる歴史の中で昨シーズンまで塗り替えられていない記録でもある。

 ただしシーズン162試合制が採用された1962年以前は長らく154試合制を採用しており、勝率で見ると、1916年のフィラデルフィア・アスレチックス(36勝117敗で勝率.235)と1935年のボストン・ブレーブス(38勝115敗で勝率.248)の2チームが、メッツを下回っている。

 いずれにせよ、MLBのシーズン最多敗戦記録はメッツが樹立したことに変わりなく、その記録を62年ぶりにホワイトソックスが塗り替えるかもしれないというわけだ。

 ここに来て米メディアが騒ぎ始めているのは、明確な理由がある。現在105試合終了時点で、ホワイトソックスの成績は27勝78敗だ。これを1962年のメッツと比較すると、ほぼ同ペース(26勝79敗)で負け続けているからに他ならない。

【トレード期限日までに主力選手たちを大量放出か?】

 すでにア・リーグ中地区首位のガーディアンズに35.5ゲーム差をつけられ、ワイルドカード争いでも圏内のツインズに30.0ゲームも離されており、すでにホワイトソックスのポストシーズン進出の可能性はほぼゼロに近いといっていい。

 7月30日に迎えるトレード期限日に向け、ホワイトソックスはトレード市場で売手に回るのは必至の状況で、すでに米メディアの間では、ルイス・ロバートJr.選手とギャレット・クロシェ投手という投打の柱が他チームから注目を集める存在になっていると報じられる他、ベテラン先発のエリック・フェディ投手もトレード候補だと目されている。

 仮に彼らがトレードで放出されるようなことになれば、戦力の大幅低下を避けられるはずもなく、残りシーズンでさらに厳しい戦いを強いられることになるだろう。

【このまま史上最弱チームの汚名を引き継いでしまうのか?】

 ホワイトソックスの残り試合は57試合。これを16勝41敗(勝率.281ペース)で推移すればメッツの記録に並ばずに済むのだが、7月に入り大失速し、さらに主力選手を失うようなことになれば、このペースを維持するのすら大変そうに思えてしまう。

 ちなみに162試合制になって以降、1962年のメッツの記録だけが突出しているわけではなく、2003年のタイガースも119敗を喫し、あと一歩でメッツの記録に並ぶところまで追い込まれている。

 そうした状況を考え合わせると、ホワイトソックスの記録更新は決して絵空事ではなく、間違いなく予断を許さない状況にあるといっていい。

 果たして2024年のホワイトソックスは、“史上最弱チーム”という汚名を回避することができるのだろうか。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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