日本が一番中国二番…米国のアジア地域諸国に対するパートナー意識の重要度推移をさぐる
・米国では一般人も有識者もアジア地域の最重要パートナーは日本、次いで中国。
・数年前の一時期は「中国が最重要パートナー」との認識だった。
・日本に対しては政治や経済、中国には経済や国の特質を重視する傾向。
米国にとってアジアで最も重要なパートナーは?
米国の人達はアジア地域においてどの国をパートナーとして重要視しているのだろうか。その実情を外務省が2017年12月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
まずは「アジア地域の中でどの国が、米国・地域にとって最も重要なパートナーであるか」(つまりアメリカ合衆国におけるアジア地域で一番頼りにしたい、付き合いを深めたい国)との設問に、択一で答えてもらった結果の推移がこちら。
一般人は2011年度になって初めて、有識者では2010年度に日中の逆転現象が起きた。これは中国の人口・資源を背景にした経済成長に伴う影響力の強化によるもの。1990年以降、とりわけ今世紀に入ってからの中国の値の伸びがそれを裏付けている。
ところが2012年度になると、一般人では日中の立ち位置が再び逆転し、日本が上位につき、有識者でも順位の変化こそ無いものの両国の差は急激に縮まった。この変動の理由については、米中関係の変化(悪化)に伴い、相対的に日本への政治的側面での再評価が行われたもの、そして2011年3月に発生した東日本大地震・震災に伴う米軍の救援作戦「オペレーション・トモダチ」によるものと考えられる(2011年度調査時点では震災関連の動きは反映されていない)。
その翌年の2013年度では、中国の動きは一般人では横ばい、有識者では大きな下落を示している。他方日本は一般人では大きく下落し、再びトップの座を中国に明け渡している。有識者ではほぼ横ばいで、中国との差は4%ポイントにまで縮小した。他方、一般人・有識者ともに韓国が大きく伸びている。
2014年度になると一般人・有識者ともに中国が大きく後退し、日本が競り上がる形となり、順位は再び日本がトップにつく。特に有識者における変化は著しく、日本がプラス19%ポイント、中国はマイナス19%ポイントとなった。米中関係の悪化が影響したようだ。
直近の2016年度では一般人で日本の値が大きく伸び、中国は下落。ロシアは上昇したが韓国やオーストラリアも落ちており、日本への注視が目立つ形に。他方有識者では前年度に続き日本の値が落ち込むばかりだが、中国の値はわずかな上昇に留まっている。韓国は大きく上昇を示していることから、半島有事を見極めた上での判断が働いているのかもしれない。
パートナーとしての認識の理由を確認
今世紀における中国の値を押し上げた原因としては「経済成長に伴う影響力の強化」が想像できる。その想像の裏付けをしていくことにする。まずは一般人において、日本と中国それぞれを一番のパートナーとして選んだ回答者に、その理由を自由回答で答えてもらい、上位5位の推移を見たものが次のグラフ。日本は「政治的結びつき」「貿易・経済関係」が上位にあるのに対し、中国では以前は「国の特質(人口など)」が上位にあり、2005年度前後以降は「貿易・経済関係」が大きく伸びている。
日本では「政治的結びつき」が2012年度以降上昇を続け、2014年度ではついに7割に届く直前までの回答率を示す形となった。中国との関係の微妙な変化を受け、相対的に重要な位置づけを示す形となっている雰囲気がある。2015年度以降は落ちてしまっているが、順位は最上位に違い無い。一方「貿易・経済関係」はやや値の動きが荒いものの、概して30%前後。また「技術力」が2006年度をピークに漸減傾向にあるのが気になる。2014年度を底として、ここ1、2年は持ち直しているのは幸いだが。
他方中国では多くの項目が横ばい、減少にあるのに対し、「貿易・経済関係」が跳ね上がっている。要は多くの一般人に取り、中国がアジアでの最重要パートナーである理由は、経済関係に寄るところが大きいと見てよい。2014年度以降は「政治的結びつき」「国の特質(人口など)」も上昇している動きが目に留まる。その分、「技術力」は2013年度以降は複数回答形式にも関わらず、大きく値を下げてしまっているのも注目に値すべき動きではある。直近となる2016年度では「国の特質(人口など)」以外が大よそ大きく値を落としているのにも注目したいところ。
有識者においても一般人と大きな認識の違いは無い。グラフの動きがやや粗いのは、元々有識者数が少ないのに加え、それぞれの国と回答した人に限定されているからである。
特に有識者の認識において、中国では2013年度にて「貿易・経済関係」の値が2倍以上に増加しており、同国の「経済成長に伴う影響力の強化」がアメリカ合衆国における立ち位置の強化の裏付けであることが、改めて認識できる。同時に「政治的結びつき」も上昇しており、対北朝鮮関連での連携において、中国は欠かせない存在であるとの認識が、少なくとも2012年度よりは増加したようだ。他方、2012年度に大きく上昇した「技術力」の値は大きく下落しているのも目に留まる。多発した国内事故を受けてのものだろう。
2014年度以降も入ってもその動きはさほど変わらない。広大な人口を背景にした高い経済的な結びつきを認識しつつ、政治的な影響力の強化も認めつつある。ただし直近となる2016年度では、日本と中国ともに「技術力」「国の特質(人口など)」が上昇したもののそれ以外は下落しているのが気になるところ。特に対中国の「政治的結びつき」が30%ポイント以上も下落しているのは注目に値する。
ざっとまとめるとアジアにおける最重要パートナーとしての認識で、一般人は「日本…政治や経済」「中国…経済や国の特質」、有識者は「日本…政治や経済、国の特質」「中国…経済や国の特質」を特に重要視して選択している、というところだろう。
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※米国における対日世論調査
外務省がニールセン(Nielsen)社に委託し、米国内において電話により2017年3月に実施されたもので、有効回答数は一般人1005人(18歳以上)・有識者200人(政官財、学術、マスコミ、宗教、労働関係などで指導的立場にある人物)。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。