アジア大会を終えて 銅メダル獲得の芝野虎丸名人、井山裕太王座のリフレクション
中国杭州市で行われたアジア大会で、囲碁は男子団体と女子団体で銅メダルを獲得。10月4日に帰国した選手たちを羽田空港まで出迎えにいきました。数人の選手に感想などをうかがいました。同じ色のメダルですが、男子と女子では捉え方がまったく違いました。女子は惜しかった。ストレート負けもなく、金メダルまでの距離も遠くないとの実感をつかんでいました。一方、男子は最低目標の銅メダルを獲得しましたが、内容が苦しかった。予選、本戦トーナメントで2度当たった韓国にはどちらも0勝5敗と1勝もできず、中華台北には予選では1勝4敗で敗退。3位決定戦では4勝1敗とリベンジして意地を見せましたが、危機感がさらに深刻になったようです。韓国に1勝もできず負けたときには、さすがにチーム内の雰囲気が悪かったといいます。これより上のエリアが無料で公開されます芝野虎丸名人「0勝5敗はかなり悔しい。2、3年前からみても差は縮まっていない。世界のトップふたりに関しては差があるが、それ以外はそこまでの差は感じていない」と芝野名人。韓国の申眞諝戦ははっきりチャンスが来ていたが、ほかは完敗といっていい碁ばかりだったといいます。「決断の早さ、研究の深さが違う。採り入れるのは簡単なことではありません」男子個人で優勝したのは台湾の許皓鋐九段。中国韓国が台頭するなか、台湾悲願の優勝をもたらしました。その許九段と芝野名人はネット碁で何度も対戦していい勝負なのだといいます。「許さんの優勝は励みになりましたが、実際打つのと優勝するのは違いますから」最後に、「もっと努力しないといけない。さらにがんばらないと」という言葉で締めくくっていました。井山裕太王座井山王座は「自分が知っている10~20年でも、単発でいい結果を残してはいるが、根本的な実力の問題として受け止めなければいけないと思っている。韓国とは差があったと認めざるをえない。最後、台湾に勝てたのはよかったけれど」と総括していました。「追いつくことを目指してやっています。チャンスはあると思っています」というが、「AIの研究がより進んでいて、だれもがいい環境で練習している。日本も次世代の実力が伸びてはいるのですが、むこうも伸びている。差を縮められるところまではきていない」。「自分個人としてできることをやる」という言葉を受けて、私は個人の努力以上にもっと環境、日本としてどうしていって欲しいかを尋ねました。「中国、韓国、台湾とトップクラスが常時一緒に研究している。そのような環境があれば……」。10年ga部you日本ではタイトル戦が1年中走っているので、その対局者どうしが密に研究会をするのは「味が悪い」という感覚があるようです。現に、井山王座は、村川大介九段、余正麒八段、佐田篤史七段と研究会をしていましたが、余八段が王座戦の挑戦者に決まると、研究会はお休みになっているといいます。佐田七段は「世界戦の決勝であたる韓国の二人が、直前に仲良く食事をしている姿を見てびっくりした」と言っていましたので、日本では考えられないということでもあるのでしょう。ただ、女子は違います。藤沢里菜女流本因坊、上野愛咲美女流二冠らは、挑戦手合の行き帰りも仲良く一緒に過ごしています。それは女性棋士では珍しい風景ではなく、少なくとも知念かおり六段、吉原由香里六段、桑原陽子六段らがタイトルを争っているころにもあったことです。関西棋院所属の佐田七段は、「10年ほど前は、台湾と関西棋院がいい勝負でした。10年たって、日本と並んだ実感です。ということは、10年時間をかければ、中韓に追いつくのではないか」という見通しを持っていました。具体的にどうしていったらいいのか。早急に対策を立てれば、10年後に世界1位の座を奪還できるかもしれません。
同じ色のメダルですが、男子と女子では捉え方がまったく違いました。
女子は惜しかった。ストレート負けもなく、金メダルまでの距離も遠くないとの実感をつかんでいました。
一方、男子は最低目標の銅メダルを獲得しましたが、内容が苦しかった。
予選、本戦トーナメントで2度当たった韓国にはどちらも0勝5敗と1勝もできず、中華台北には予選では1勝4敗で敗退。3位決定戦では4勝1敗とリベンジして意地を見せましたが、危機感がさらに深刻になったようです。
韓国に1勝もできず負けたときには、さすがにチーム内の雰囲気が悪かったといいます。
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