羽生九段の挽回なるか――第33期竜王戦七番勝負中間展望
豊島将之竜王(30)に羽生善治九段(50)が挑戦する第33期竜王戦七番勝負(読売新聞社主催)は11月7、8日に京都府京都市「総本山仁和寺」で第3局が行われ、豊島竜王が勝って対戦成績を2勝1敗とした。
ここまで3局はすべて後手番が勝利。タイトル獲得通算100期の偉業がかかる羽生九段の巻き返しがなるか、第4局以降の展開をデータを基に予想してみた。
<竜王戦七番勝負日程とこれまでの勝敗>
第1局 10月9、10日 東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」
豊島竜王(後手)勝ち
第2局 10月22、23日 愛知県名古屋市「亀岳林 万松寺」
羽生九段(後手)勝ち
第3局 11月7、8日 京都府京都市「総本山仁和寺」
豊島竜王(後手)勝ち
第4局 11月12、13日 福島県福島市「吉川屋」
第5局 11月26、27日 鹿児島県指宿市「指宿白水館」
第6局 12月5、6日 神奈川県箱根町「ホテル花月園」
第7局 12月16、17日 山形県天童市「ほほえみの宿 滝の湯」
羽生九段にとって第4局は正念場
<豊島竜王の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)
9月25日 王将戦リーグ
対木村一基九段 ○
9月29日 順位戦A級
対佐藤天彦九段 ○
10月5日 王将戦リーグ
対藤井聡太二冠 ○
10月9、10日 竜王戦七番勝負第1局
対羽生九段 ○
10月15日 王将戦リーグ
対広瀬章人八段 ○(持将棋指し直し)
10月17日 将棋日本シリーズ準決勝
対渡辺明名人 ○
10月22、23日 竜王戦七番勝負第2局
対羽生九段 ●
10月29日 順位戦A級
対糸谷哲郎八段 ●
11月2日 王将戦リーグ
対佐藤天彦九段 ○
11月7、8日 竜王戦七番勝負第3局
対羽生九段 ○
<羽生九段の最近10局>(放映前のテレビ対局を除く)
9月2日 順位戦A級
対糸谷哲郎八段 ●
9月19日 竜王戦挑戦者決定三番勝負第3局
対丸山忠久九段 ○
9月22日 王将戦リーグ
対藤井聡太二冠 ○
10月1日 順位戦A級
対斎藤慎太郎八段 ●
10月9、10日 竜王戦七番勝負第1局
対豊島竜王 ●
10月14日 王将戦リーグ
対佐藤天彦九段 ○
10月22、23日 竜王戦七番勝負第2局
対豊島竜王○
10月29日 王将戦リーグ
対広瀬章人八段 ○
11月3日 王将戦リーグ
対永瀬拓矢王座 ●
11月7、8日 竜王戦七番勝負第3局
対豊島竜王 ●
両者とも対戦相手はトップ棋士ばかりで厳しいスケジュールだ。豊島竜王は10月に2日制のタイトル戦含め6局とハイペースで対局をこなしているが、直近10局は8勝2敗と好調を維持している。
一方、羽生九段は直近5勝5敗の指し分けと調子はいま一つ。
過去の直接対決は18勝18敗と全くの互角でも、現在の調子と七番勝負の星取りで一歩リードしている豊島竜王に分があると見る。
ただし、第4局を羽生九段が制せば第5局は先手番となるため、シリーズの流れも羽生九段に移るだろう。
後手番勝利の流れは続くか
本シリーズ3局だけでなく、両者の対戦直近10局は不思議なことに後手が全勝している。
全公式戦のデータでは先手番勝率は5割2分強、持ち時間の長いタイトル戦では先手のアドバンテージが拡大すると考えられていたし、他の棋士の対戦では結果もそうなることが多かった。
第4局は豊島竜王の先手番、筆者はそれでも「先手やや有利」の原則は変わらないと考える。一番の理由は居飛車党同士の対戦なので先手が主導権を取りやすいからだ。
戦型は角換わりか相掛かりを予想する。豊島竜王の先手角換わりは得意戦法だし、後手の羽生九段も第2局で角換わりを受けて立ち勝利している。もし先手番の豊島竜王がそれを避けるとしても、相掛かりへの誘導は可能だからだ。