天皇陛下の作品のJASRACへの信託状況について
「三浦大知、天皇陛下ご在位30年式典で記念演奏」というニュースがありました。「天皇陛下が初めての沖縄訪問を経た思いをお詠みになった御歌に皇后陛下が曲を添えられた"歌声の響"を披露する」そうです。政治的および芸能界的な観点では大変感慨深いものがありますが、ここでは、私の専門の知財の話に持っていこうと思います。
今回に限らず、皇族の方が作詞・作曲をされて、その作品が公に演奏されたり、CD化されることは、十分あり得るわけですが、その場合の著作権処理はどうなるのでしょうか?
JASRACの作品データベースJ-WIDで調べてみると、今回、三浦さんが歌う作品(天皇陛下作詞、皇后陛下作曲)「歌声の響」の登録はありません。一方、同じ式典で、ソプラノ歌手の鮫島有美子さんが唄う皇后陛下がご作曲された子守歌「おもひ子」については、J-WIDにちゃんとエントリーがあります。おそらくは、作品がCD化されるとその時にレコード会社が作品届を出すのでJ-WIDに登録されるのではないかと思います。
これに限らず、J-WIDで著作者を「陛下」または「天皇」の前方・後方一致で検索すると、結構な数の作品がヒットします(タイトル画像は「陛下」で後方一致で検索した例)。しかし、当然と言えば当然ですが、皇族の方については、JASRACに権利を信託しておらず無信託の状態です。また、これも当然ですが音楽出版社も通していません。したがって、これらの作品をライブハウスやYoutubeでカバー演奏等したい場合には、JASRACに所定の料金を払っても権利処理はできませんので、作詞家・作曲家たる皇族の許諾(現実には宮内庁の許諾)を得る必要があるでしょう。