ラジオはまだ聴かれているのか? 震災後のラジオ聴取動向を探る
震災で大きく上昇、その後減退、そして…
従来型メディアにおいて、昨今のインターネットの普及浸透や先の震災などを受け、もっとも大きな変動の波の中にあるのがラジオ。そのラジオの聴取性向について、ビデオリサーチが定期的にプレスリリースとして公開を実施しているラジオ聴取動向をもとに、確認をしていくことにする。
次に示すのは、そのラジオの聴取率。「週平均の聴取率」とは「週全体(平日、土日を合わせた)における、1日単位での平均聴取率」を意味する。「1週間全体において、1度でもラジオを聴いた人の割合」ではない(こちらは61.9%)。東日本大地震・震災の発生は2011年3月11日だが、その期間以降に聴取率が上昇しているのがはっきりと見て取れる。
震災をきっかけとしてラジオはその価値を見直され、再評価を受けることになった。また本震以降はしばらく大きめな余震が相次いだこともあり、ラジオを新たに備え、必要に応じてスイッチを入れる人も少なくない。すでにラジオを持っている人も、聴取頻度は高まる。その結果、聴取率は7%台を回復する(2011年後半)。
しかし本震から時間が経過し、大きな余震の発生頻度も低下。それに合わせる形で聴取率も減少しはじめる。季節変動を考慮しなければ、減少は2012年春から。2013年に入ると再び多少ながらも回復したが、昨今では震災前の水準に戻ってしまう。
ところが2012年8月を底として見方を変えると、何度かの起伏を繰り返した上での流れとなるが、少しずつ再び聴取率は回復の動きにあると読み取ることもできる。直近の2014年2月における値は6.4%で、これは震災直前の2011年2月分のものと同じ。あるいは震災以前の水準以上の値を見せる動きを示す可能性は十分にある。
世代別動向は?
一連の動きを世代別に見たのが次のグラフ。
最近の動きを見ると、未成年者とシニア層での減少、中堅層の増加という傾向が確認できる。特に20~34歳は震災後にもほとんど動きが無かったものの、2012年の後半以降少しずつではあるが上昇している。2012年8月に底を打つ形で少しずつ増加を示している35~49歳層と合わせ、注目したい動きではある。
逆にシニア層・未成年者の減少は、震災後に半ば必要に迫られてラジオを整備・聴取を始めた層が、余震頻度の低下と共に必要性への認識も薄れ、再びラジオ離れを起こしているものと考えられる。
メディアとしてのインターネットの普及、ラジオで報じられる番組そのものの質の変化、4大従来メディアでは非紙媒体として同列に並ぶテレビの多機能化など、多様な環境の流れに合わせ、ラジオはメディアとしての立ち位置を変化させ、それと共に聴取率にも動きが生じている。震災による持ち直し、その後の反動による減少、さらには自然回復的な復調といった、小さからぬ流れの中にあるラジオの聴取率は、今後どのような動きを示していくのだろうか。
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