マレーシア選挙 、フェイクニュース逮捕者に、外務省外出注意喚起
【追記】2018年5月10日
野党連合が過半数を獲得するという結果となった。建国以来の政権交代で、まったく新しいマレーシアが始まるといっても過言ではない。野党連合による改革がどう影響するのかまったく未知数ではある。
投票結果はこちらにも
KNNポール神田です。
現在、クアラルンプール在住です。
フェイクニュース法案は、選挙前にあっという間に成立してしまった。これによって、現政権にとって都合の悪い「1MDB問題」なども、この法案の対象となるのだ。ある意味、都合の良い言論統制に近いのかもしれない…。フェイクニュースをシェアしただけで犯罪として立件されるのもどこからがフェイクなのかの証明がむずかしそうだ。
外務省からのマレーシア総選挙(5月9日投票)に伴う注意喚起
日本の外務省はマレーシア総選挙と総選挙後の外出に関しての注意喚起をよびかけている。
本日5月9日(水)は、マレーシア建国以来の政権交代となるのか?
マレーシアの下院選挙(222名を争い2332人が出馬)が本日、2018年5月9日(水曜日)の平日に行われる…。なぜ平日なのかというと、都市部に働く人が地元で投票させない為とも言われるほど選挙率を下げる行為とも言われる。
米国大統領の火曜日の「スーパー・チューズデー」選挙とは違う理由だったようだ。しかし、今回の選挙、平日の選挙日をなんと元マハティール首相率いる、野党連合の「希望連盟(PH)」らは平日に反対し、祝日にしてしまった。しかも希望連盟(PH)が与党となると、明日以降、木曜日、金曜日も休みにするという超短期的なオプション政策まで打ち出している。
現、ナジブ政権の与党は古き良き昭和の頃の良くも悪くも『自民党』のように見えて仕方がない。そう現在の与党は、1957年以来のマレーシア建国以来、61年間ずっと政権を担ってきているからだ。そして、マハティール元首相も与党の4代首相だった(2代党首はナジブ首相の父のラザク首相)。当時、ナジブ首相は、マハティール政権の閣僚の1人であった。そして、マハティールが、ナジブ首相率いる国民戦線(BN)から脱退し、2016年よりマレーシア統一プリブミ党(PPBM)を率いている。現在の下院の議席数は222議席で、与党が133議席(59%)で野党が89議席(40%)であるが、前回の投票率では与党が47%野党が52%と非常に拮抗している。
そして、今回、ナジブ首相率いる与党の国民戦線(BN)陣営は膨大な選挙資金を頼りにマレーシアを青旗で覆い尽くす。そして、現マハティール党首は92歳である。野党陣営が勝利すると世界最高齢の首相が誕生することとなる。
そして、今回、第三番目の党として、「マレーシア・イスラム党(PAS)」が野党連合から独立して単独で150人の候補者を擁立している。
日本の政党にたとえてみるとわかりやすいマレーシア選挙戦
今回の選挙は、ナジブ首相のある意味、古き昭和時代の金権政治の自民党に、総裁経験者であり、「ルックイースト政策」でマレーシアに寄与してきたマハティール首相が反旗をひるがえした最後のチャンスである。…といっても御年92歳だ。日本で例えると、小泉純一郎元首相が野党の党首になるようなものだ。政局状態で例えると、2017年の「希望の党」で失言しなかった小池百合子代表みたいな空気感でもある。今までのしがらみをもたない移民中華系などの支援も強い。
野党連合から独立した、「マレーシア・イスラム党(PAS)」は、イスラムの教えを石杖としている。さしずめ、排除された民進党議員たちによるさながら立憲民主党のようにも見える。
与党が進めてきた「ブミプトラ政策」という名の現地の「土地の子」マレー人優遇施策もすでに中華の華人系が25%を占める国家マレーシアにとっては、もはや人種差別的な政策に映っている側面も存在する。
多民族国家マレーシアの選択
今回のマレーシアの国政選挙は上院に当たる元老院が国王や州議会の選任に対し、下院にあたる代議院は国民が自ら選べる民主的選挙である。いろんな意味で、多国籍国家ならではの、人民と宗教に対してのあり方が問われる選挙となることだろう。1957年以来の政権交代で92歳のマハティール首相が再度誕生する可能性もある。
現地のテレビの放送を見ても、情報はマレー語が大半で、英語で伝わるニュースから情勢を選挙権のない外国人としては見守るしかない。
インターネットやスマホが普及していても、外国人にとっては、まったく選挙時は蚊帳の外である。日本の選挙の時も在留外国人にとっては日本語がわからないと何が起きているのかもわかりにくいだろう。選挙権の有無と情報の有無は別問題だ。せめて英語でも、ニュートラルにこの動向は報道してほしいものだ。それが多民族国家の生きる道でもある。
マレーシアは、連邦立憲君主制の国家で元首は13州内での持ち回りの5年周期の国王であり、行政の長が首相に当たる。現在のマレーシアで一番影響を与えているのが、中華系民族だ。ローカルチャイニーズを始め、イスラム教徒ではない彼らが経済の主役であることに間違いはない。ブミプトラでマレー人を優遇し、習近平の「一帯一路」を支持する現政権の与党が選ばれるのか? または92歳の元首相が率いる野党が選ばれるのか?
2020年に先進国入りを宣言しているマレーシアにとって、重大な選択だ。