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月面に槍をぶち込むペネトレータミッション「LUNAR-A」数々の困難を乗り越えるも計画中止に

LUNAR-A 出典:JAXA

本記事では、2004年に打ち上げを目指して開発されていた日本初の月探査ミッション「LUNAR-A」をご紹介します。

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LUNAR-Aは2本の槍型の装置ケースであるペネトレーターを、月の上空で衛星から切り離し重力落下で月面に投下します。そのままペネトレーターを月面に突き刺すことで、月の地下1〜3mに貫入させる計画です。ペネトレーターには、地震計、熱流量計が搭載されており、観測ネットワークを月面に設置して月の内部構造を探ることが検討されていました。

LUNAR-Aイメージ図 出典:JAXA
LUNAR-Aイメージ図 出典:JAXA

探査機質量は540kg、サイズは約1.2m×約1.2m×約1.3mです。周期が145分の月軌道を周回する計画です。そして、高さ約80cm、直径16cmの2本のペネトレータを備えています。 続いて、LUNAR-Aの目的をご説明します。月の起源を探るためには、月の材質を探ることが重要です。特に月の内部に鉄に富む中心核があるかどうか、という点は月の起源に関する様々な仮説を検討する上で極めて重要です。

核が存在するかどうか、存在した場合はその大きさはどれほどか、といったことを調査・研究することは科学的意義がとても大きいのです。この探査が成功すれば、月の起源の解明に大きな役割を果たすことができます。

LUNAR-A 出典:JAXA
LUNAR-A 出典:JAXA

そして、LUNAR-Aは当初1995年に打ち上げを目指していましたが、技術的難易度が高く延期が続きます。その後、2003年の打ち上げが一時決定しましたが、IHIエアロスペースが担当するペネトレータの不具合、ならびにΜ-Ⅴロケット4号機打ち上げ失敗により、打ち上げは2004年に延期されることとなります。しかし、今度はLUNAR-Aに搭載された米国MOOG社製の20Nスラスタ用推薬弁がリコール対象となり、修理後の返却時期となってしまいます。

しかも更に、ペネトレータと衛星との通信箇所に不具合が見つかり、この改良には更に3年が必要とされました。さらには予算にも問題が発生しており、当初予算は122億円のところ、既に30億円を超過してしまいます。

ペネトレータ 出典:JAXA
ペネトレータ 出典:JAXA

そんな逆境の中、ペネトレータの開発には手間取りましたが、その技術の完成の見込みまではこぎつけることができました。しかし、それを搭載する母船の電子部品の枯渇と接着剤の硬化等という問題が並行して発生していまします。一難去ってまた一難ですね。

結果としては、LUNAR-Aプロジェクト自体は2007年に中止となってしまいました。日本初の月探査ミッションが中止となってしまい非常に残念です。ペネトレーター自体の研究・開発は今後も続け、いずれはロシアや日本の月・惑星探査機への搭載を目指す、と記録が残されています。

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