第2次再改造内閣発足!5名の女性閣僚を擁するも、目立つのは岸田首相だけ?
「変化を力に」内閣が発足
9月13日に発足した第2次岸田再改造内閣で注目されたのは、過去最多タイとなった5人の女性閣僚だろう。高市早苗経済安全保障担当大臣が留任した他、上川陽子外務大臣が再入閣。土屋品子復興大臣、加藤鮎子こども政策担当大臣、自見英子地方創生担当大臣の3人が初入閣だ。 彼女たちを含めて、初入閣組は11名。13日夜に行われた会見では、岸田文雄首相は「変化を力にする内閣」と胸を張った。
そのネーミングこそ、岸田首相の決意を物語るものといえるだろう。新しい内閣には「懐刀」である木原誠二前官房副長官は不在で、宏池会ナンバー2の林芳正前外務大臣も閣外に去った。妻の元夫の不審死を巡って週刊文春などが話題とした木原氏の去就については、事前に様々な憶測が流れていたが、結果的に幹事長代理兼政調会長代理として党務に勤しむことになった。要するに岸田首相から「自分に代わって党内を牛耳れ」と命じられたということだ。
官邸から党内へ―。この木原氏の任務の変化こそ、その力を増すことになるはずだ。そして何より変化したのは、岸田首相自身かもしれない。
外相に上川元法相を抜擢したその背景
それは外務大臣の人事で見てとれる。13日の会見で、岸田首相は「首脳外交が重要」と言い切った。事実上の外務大臣兼務宣言だ。
巷では外務大臣として再入閣し、法務大臣時代にオウム真理教の麻原彰晃ら13名の幹部の死刑を執行したことで名を馳せた上川氏を「女性総理候補ナンバーワン」と持ち上げる意見もあるが、岸田の意図は別にあるのだろう。政権を温存するためにはこれまでよりいっそうアメリカ寄りを強める必要があるが、中国寄りと言われる林氏が外務大臣では都合が悪くなったのではないか。その点では上川氏は法務大臣時代、「司法外交」と称して国際刑事司法など国際社会のルール作りに積極的に関与してきた。すなわち日本が法整備の先導を担うことで、日本の影響力を強ようとしてきたわけだ。
またすでに70歳の上川氏は、岸田首相の寝首をかくことはないだろう。一方で林氏は参議院から衆議院に移る時、河村建夫氏の地盤である旧3区を奪い取った。安倍晋三元首相が昨年7月に殺されて以降は、山口県連を完全に掌握し、「10増10減」に基づいて再編成された山口県内の小選挙区のうち、安倍元首相の本拠地を飲み込む新3区を獲得。山口県内から安倍カラーを一掃しようとした。
それを山口県の隣県である広島県広島市を地盤とする岸田首相が知らないはずがない。林氏は閣外に置かれたことで、総裁選への出馬は遠くなった。岸田首相の腹の中では、「宏池会の次の総理総裁候補は木原氏」なのかもしれない。それならば暫くの間、宏池会は「岸田派」のままでいる。
「3人官女」に目玉政策を掲げさせ
また次期総裁選を見据えて、ライバルとなりそうな河野太郎デジタル大臣や高市氏を閣内にとどめ置き、茂木敏充幹事長に対して平成研内で対極にいる小渕優子氏を選対委員長に据えた。最大派閥の清和会の「5人衆」は松野博一官房長官をはじめとして全員留任させ、誰ひとりとして“抜け駆け”を許していない。
このように新内閣の全体を見ると、岸田首相が際立つ印象だ。そればかりではない。政権の目玉となるこども政策や国際的にアピールする必要のある福島原発事故担当、「2025年の開催は極めて困難」と囁かれる大阪万博問題などは、新人の3名の女性閣僚に担当させたが、いずれも岸田首相が直接出向くことになりそうな問題ばかり。「3人官女」はひな壇に上がることはなく、ただひとりの内裏雛がその座を独占することになる。
来月には首相の任期が3年目に入るが、「変化を力」にした岸田首相は、いっそう自信を深めていくに違いない。そしてその力をより確実に、そして永らえるものにするために、遠くない将来に衆議院を解散するに違いない。