子どもに親と同じ名前を付けられる?~命名の裁判例
以前、「子の名前トップは蓮くん・咲良ちゃん~名前は自由に決められる?変更できる?」を掲載したところ、大勢の方にご覧いただけました。
名は家庭裁判所のから許可が下りれば変更が可能です(戸籍法107条の2)。
戸籍法107条の2(名の変更)
正当な事由によつて名を変更しようとする者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
とはいえ、ほとんどの人は変更することなく一生関わっていきます。命名に関心が高い方が大勢いらっしゃるのは当然かもしれません。
そこで、今回は「命名に関する裁判例」をご紹介します。命名する場合の参考にしてください。
命名に使用できる文字を制限することは憲法違反か?
【判決】名づけ文字をある範囲にすることは、「公共の福祉」のために必要
名づけ文字をある範囲にすることは、公共の福祉のために必要であると認められる。そのため、本条(戸籍法50条)によって子の名は常用平易な文字を用いなければならない。
したがって、その範囲を当用漢字表に掲げる文字に制限したことは、憲法のどの規定にも違反するものではない(昭和26・4・9東京高・家裁月報3・3・13)
【判決】戸籍法により命名するのは当然
戸籍上の氏名に関する限り、戸籍法の定めるところに従って命名しなければならないのは当然であって、これらの規定にかかわりなく氏名を選択し、戸籍上それを公示すべきことを要求し得る一般的な自由ないし権利が国民各自に存するとは解することはできない。
本条(戸籍法50条)の規定が憲法13条に違反する旨の主張は、その前提を欠く(昭和58・10・13最・判例タイムズ516-111)
戸籍法50条 (子の名に用いる文字)
1. 子の名には、常用平易な文字を用いなければならない。常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定める。
憲法13条
すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
子どもに親と同じ名前を命名できるか?
子どもに自分(親)と同じ漢字を命名しようとした人がいました。
【判決】子どもに親と同じ名を付けることは「名の特定の困難な命名」として戸籍法に違反する
子の命名権において自由に文字を選らんで命名することができるのが本則である。しかし、名はその人を特定する公の呼称であるから、いかなる名が付けられるかは、本人・世人は利害関係をもっている。したがって、難解・卑猥・使用の著しい不便・識別の困難などの名は命名することができないものと解すべく、本条の規定(戸籍法50条)は右解釈の現れである。
父親がその妻「伸子」との間に生まれた長女の出生届に「伸子」(しんこ)と命名した場合に「伸子」(しんこ)と「伸子」はまぎらわしい名であって世人が同一戸籍内の「伸子」なる者から「伸子」(しんこ)を識別すること。すなわち「伸子」(しんこ)を特定することは困難であるから、このような出生届は、名の特定の困難な命名として、本法に反する違法な届出というべきである(昭和38・11・9名古屋高裁・高裁民集16・8・664)
さすがに、読み方を変えても子どもに自分(親)と同じ名前を付けることはできないようです。
まとめ
以上ご紹介した判決からお分かりいただけると思いますが、名は社会生活を送るに当たって「自己を他者と識別する」という機能を持っています。この機能を重視すると、特定困難な命名は避けた方がよいかもしれません。
また、原則として一生その子に携わります。命名する際には、子どもの将来の生活をイメージすることが大切です。
親の思い入れと子の将来の二つのバランスを上手に取って命名してみてはいかがでしょうか。