OKAMOTO'S 変化を楽しみ愚直なまでにロックを追求し10年 純粋な“少年”の現在地
OKAMOTO’Sが10周年を迎えた。といっても10代でデビューした彼らは全員まだ20代という若さだ。しかしその音や佇まいには貫録さえ感じる。それはこれまで着実に成長を続けてきた”証”でもある。様々な環境の変化と常に向き合いながら、10年というキャリアを積み上げ、”BOY”から大人になっていく成長物語を紡ぎ、詰め込んだアルバムを、節目の年に『BOY』(1月9日発売)というタイトルを冠し、リリースした。このアルバムから見えてくるOKAMOTO’Sの“これまで”、そして“これから”についてオカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)に話を訊いた。
前作『NO MORE MUSIC』で開いた扉の先に『BOY』がある。「そこまで10周年の感慨深い感じを詰め込んだベタなものではなく、自分達から自然に出てくるものを出して、ノーコンセプトで作りたいと思った」(ショウ)
OKAMOTO’Sはこれまで10年間で、アルバムを8枚制作している、非常に勤勉かつ生産力が高いアーティストだが、前作は『NO MORE MUSIC』(2017年)というショッキングなタイトルの作品を発表し、「世の中に音楽が溢れすぎている。まだ聴いていない音楽がたくさんある。なのにまだ新しい音楽が本当に必要なのか。自分達も含めて無限に音楽を生み出しているからこそ、通り過ぎていくものも多い。だから曲に愛着を持つのが難しくなってきている。裏を返せば、どうやったらきちんとひとつひとつの楽曲に対して愛着を持てるかということが、バンドを続けるために必要なことだと思い始めた」(ショウ)と、自分達が置かれた環境を憂うと共に悩み、出した答えが、より自由に、より等身大ということにこだわるということだった。そうして作りあげたアルバムにシニカルかつ、ミュージシャンの立場として深遠なタイトルをつけた。10年という節目を前に、そんな思いに行きついたからこそ、『BOY』というより自由度の高い、瑞々しい作品ができあがったともいえる。
「『BOY』を作り始める時、四人の中に共通してあったのは『NO MORE MUSIC』に続いて、ノーコンセプトで作りたいということでした。でも意識としては、初めての日本武道館ワンマンをやる年の頭に出る作品だということは、なんとなく頭の隅にあったので、歌詞の面はこれまでのことを振り返る部分が少し入るかな、くらいのノーコンセプト具合というか。そこまで10周年の感慨深い感じを詰め込んだものにしてしまうのも、ベタだなと思って」(ショウ)。
「言ってもまだ28だしね(笑)、振り返って懐かしむほど遠くないという」(レイジ)
「それと、その10年間にピークがない(笑)」(ショウ)
「そんなに悲観的にならなくても(笑)」(ハマ)
「とにかくカッコいいものになったらいいな、というくらいの考えで作っていました。でも歌詞には自然とこれまで積み重ねてきたものが出てきましたし、必然だったのかもしれません。」(ショウ)
「同じことを続けるというのは、自分をどう変化させていくかが一番難しい」(コウキ)
4人のスキルの高いプレイヤーが作り出す音は、耳のいいリスナーをひきつけ、玄人を唸らせるバンドアンサンブルを聴かせ続けてきた。50年代~70年代の音楽を追求してきたそのスタイルもあるが、デビュー当時から、大人びた音楽を鳴らすバンドと見られていた。
「年齢的なデッドラインというか、『BOY』というタイトルはギリギリのラインかなと。間違ってはいないですが、ようやく不思議な年齢感と、キャリアが一致してきたと思います」(ショウ)。
ぶれない視点を持ち、自分たちのスタイルを追求し続けた10年だったが、作品を重ねるごとにその幅広い音楽性を見せ、常に“更新”し続けてきた10年でもある。
「そう言ってもらえるのが一番嬉しいです。変化し続けないと、前に進めない時って出てくると思う。だからみんな転職してみたりするんでしょうし、同じことを続けるというのは自分をどう変化させていくかが一番難しいところだと思うので、そこがうまくできているというのは、長くやっていく自信になります」(コウキ)。
意外と思う人も多いと思うが、OKAMOTO’Sは6月に、キャリア初となる日本武道館ワンマンライヴ「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE “LAST BOY”」を行う。生産力と共に“ライヴ力”を武器に、精力的にライヴ活動を行ってきて、確実に足跡を残しながら、それが美しい轍となり武道館へとつながる道になった。“最初で最後”という、意味深なタイトルが付けられている。
「ようやくワンマンで武道館でのライヴですが、また同じ規模で、同じ武道館でやりたいねというテンションでもないというか、単純に一回やったら次は違うところでという気持ちですね。10周年記念ではありますが、あまり固執していないという意味もあります」(ショウ)。
「この時代に正しく段階を踏んでやってこれたのは幸いでした」(レイジ)
「音楽性は変わってきていますが、それでもライヴの動員は減ることなく、面白がってついてきてくれているお客さんがたくさんいるのは、すごく嬉しい」(ハマ)
地に足が着いた活動で、美しい成長を続けてきたからこその“自信”がある。何でもできるし、何がきてもビクともしない太い芯が、4人の中には存在している。だから『BOY』を聴くと、そこにははっきりと未来が見える。
「それは本当に嬉しい感想です。今だからこそ、こうやって自分たちで言えますけど、デビュー当時は特に何も考えていなくて、周りにはいきなり武道館やZeppツアーをやるアーティストもたくさんいました。そういう人達に話を聞くと、みんな景色が変わりすぎて、訳がわからなかったと話していて。地元で300人規模でライヴをやっていたのが、いきなり火がついてアリーナ、ドームと言われて、昨日と全く違う数、顔ぶれのスタッフがたくさんいて、振り返ってみると正直嬉しかったけど、記憶がないというようなことをよく聞きます。逆にそこからキャパが落ちて小屋が小さくなると、どうやってライヴ演出をすればいいのかがわからなくなって、誰に相談していいのかさえもわからなくなったりすると。でも俺たちは、去年よりキャパが100人多くなったとか、そういうレベルでずっとやってきているので実像を把握できているから、すぐに色々想像できるし、今こんな感じだからこうしようとか、ライヴハウスだとリアクションも掴みやすいんです。ホールクラスになると、熱が伝わりづらいんだろうなと思ったりするので、この時代に正しく段階を踏んでやってこれたのは幸いでした」(レイジ)。
「お客さんが理解してくれているというのは、ゆっくりやってきたからこそだと思います。音楽性は変わってきていますが、それでもライヴの動員は減ることなく、面白がってついてきてくれているお客さんがたくさんいるのはすごく嬉しいです」(ハマ)。
「なかなかないことですよね。だから今、筋肉がすごいって感じ(笑)。ライヴは相当強いと思います」(レイジ)。
「今は諦めるよりも言葉にしよう、怒りはきちんと表現しよう、嬉しかったら嬉しいと、強く言うべきだという思いが強い」(ショウ)
『BOY』には、オカモトショウとオカモトコウキが中心となって作り上げた楽曲の中から選ばれ、全員でアレンジしながら磨きあげていった10曲が収録されている。「割と原点回帰っぽい曲が残った」(コウキ)という10曲は、自然とこれまでOKAMOTO’Sが辿ってきた道が示される、10周年にふさわしい作品に仕上がっている。「Dreaming Man」で始まり、「Dancing Boy」で終わり、そしてまた「~Man」へと続く。“MAN”は永遠の“BOY”であり続ける、夢を追い続けるという4人の意志表示でもある。
「「Higher」は結構がっつりアレンジをやったので特に印象深い一曲です。プリプロのデータを持ち帰って、家でリミックスする感じでアレンジの原型を考えて、それがほぼ形になっていて」(レイジ)。
「この曲のベースは結構悩んで、頑張って捻り出した思い出があります。本番よりも絶対プリプロでやった時のテイクがいいということがよくあるのですが、この曲もそうで、その空気感もアレンジをやっている時に、同時に同じ波に乗っていった感じです」(ハマ)。
「『NO MORE MUSIC』の時は、色々なことにどこか諦めている感じが強くて、諦めているクールさのような感じも出ていたと思います。でも今は、諦めるよりも言いたい!という気持ちが大きく、前より語彙が強いと思うし、怒りはきちんと表現しよう、嬉しかったら嬉しいって強く言うべきだという思いが強いです。それはサウンドにも出ているかもしれません。「Higher」もそうです。「Dancing Boy」も是非みんなに聴いて欲しい。LOVE PSYCHEDELICOのギタリストNAOKIさんが、5人目のメンバーといっていいくらい、がっつり一緒に作業してくださって、濃密な時間を過ごしました」(ショウ)。
「結局4人が10代の時に見た夢はひとつで、その夢を追いかけ続けて、少しずつ叶えている状態だなと思っていて」(ショウ)
アルバムのラストに鎮座する「Dancing Boy」は、OKAMOTO’Sが出した10年目の答えと、もう次に向かって踏み出しているんだという強力なメッセージを感じる事ができる。
「そうなんです。ちょうどそれくらいの温度感の振り返り具合というか、まだまだここから頑張らなければいけない年齢だし、戻れないところまで来たなという実感もある。同級生の4人でやっていますが、仕事のパートナーでもあるという、俺たちの関係も滲み出ていると思います。誰かに気を遣って書いたものではないですが、こういう曲を素直に生みだすことができて、自分たちでいい曲だなと思えているのは、とても健康的な状態だなと思っていて。今までも、誰かに気を遣って曲を書いたことはないけれど、例えば世の中の流れを見たり、マーケットを意識して作るのも大切じゃないかと思い、やってみようと思って挑戦したこともあった10年だったので、その進歩は自分たちの中ですごく感じます。結局4人が10代の時に見た夢はひとつで、その夢を追いかけ続けて、少しずつ叶えている状態だなと思っていて。それは自分たちで言うとものすごく照れますけど、日本武道館のステージに立った日くらいは認めようかなと(笑)。それを照れ臭くなく、一番上手く言えたのが「Dancing Boy」だし、このアルバムだと思います」(ショウ)。
「「DOOR」の歌詞は、自分たちが10年やってきたからこそ歌える」(コウキ)
ラストの「Dancing Boy」の前には、オカモトコウキが「みんなのうた」(NHK)のために書き下ろした「DOOR」が、ポジティブなメッセージを届けてくれている。新しいドアを開き、トライを続けてきた4人だからこそ生まれた作品だ。
「「DOOR」は、今までやっていそうだけど、やってこなかった感じのサウンドと、歌詞も自分たちのバンドが10年やってきたからこそ重なる部分もあって。「みんなのうた」として流れるということで、最初はすごく構えましたけど、でもいつもの自分達の色を出そうと。大人が聴いたら、サウンドがオマージュっぽくていいなと思ってくれたら嬉しいし、初めて聴く人は単純にかっこいいなというところから入ってもらいつつ、後から色々掘り下げていって、ああ、こういう感じだったんだとか、そういう聴き方を欲しいです」(コウキ)。
「前作からのテンションのようなものを引き継いだという意味では、「偶然」は、日本のポップスの要素というか、80年代後半から90年代前半くらいに流行した、いわゆるシティポップの雰囲気があって、それをこういうバンドでやっているという面白さがいいなと。こういう音楽をずっとやっているバンドはたくさんいますが、僕らは決して本質ではないと思うので、なんちゃってというか。バンドの引き出しを見せるという意味では、すごく威力のある楽曲だと思います。それは「NOTHING」にもいえると思っていて。いわゆる“楽器が弾ける人”が、このジャンルのこういう感じだったら、こういう聴かせ方があるよね、というテンションでやっていて、そこに本当のグルーヴが入っている面白さみたいなものが新しく聴こえたらいいですよね。懐かしむというよりは、このトレンディな感じに新鮮さを感じて欲しいです」(ハマ)。
<何もかも嫌になっても 何度でもドアを開け続けんだ>――「DOOR」の中のこのメッセージは、濃密な10年という時を過ごした経験と、まだ全員今年で28歳という若さとが圧倒的な説得力をまとわせる。2019年、次のドアを開けた4人は、4月から全国20か所で21公演を行う「OKAMOTO’S 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR 2019 "BOY"」を開催し、メッセージを全国のファンに届ける。その終着地が6月27日の日本武道館のステージだ。ロックの聖地で、最高にカッコいいロックを奏でるバンドのプライドが、うなりを上げて、襲い掛かってきそうだ。まさにOAKMOTO’Sの10年の集大成を目撃できる、必見のライヴだ。