Yahoo!ニュース

強い台風7号に似ている?2019年台風15号で起きた倒木、停電、断水

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
鋸南町での倒木の様子(著者撮影)

強い台風7号が関東・東北地方に接近中です。この台風は2019年の台風15号に似ているという声があります。そこで台風15号の際、どのようなことが起きたかを振り返り、備えの一助になればと思います。

9月9日に関東地方に上陸した台風15号は、千葉市付近に上陸したときの勢力が、中心気圧960ヘクトパスカル、最大風速40メートル/秒の「強い」勢力でした。日本近海に広がっていた、30度以上の海水温の高い海域から、エネルギーを吸い上げて勢力を強めました。

この台風は東京湾を北上しました。台風は「水蒸気の補給が得られない陸地を嫌って海を進む」と言われますが、東京湾を北上するのは珍しいことでした。台風に吹き込む風は反時計回りで、進行方向の右側で強くなります。

結果として千葉に風による甚大な被害をもたらしました。


まず、倒木が発生しました。倒木の現場を歩くと、強度に間伐(木を切ってまばらにすること)されて林内がまばらになっていました。間伐は大事だが、間伐しすぎはよくない。さらに道路の拡幅などで林縁木が切られていたり、林地隣りが太陽光発電で開発されていたりしました。これらの理由で林内に風が入り込みやすく、大量の倒木が発生しました。

また、倒れた送電塔2本、電柱84本、電柱約2000本。倒れた倒木が電線を切ってしまうケースもありました。これによって長期間にわたり電気が失われました。千葉県東部の山武市では一時、総戸数の約6割が電気を失ったのです。

現代社会において、電気はあらゆるインフラを下支えしています。浄水場を動かすのも、ポンプで水を送るのも電気です。電気を失い、断水は長期化しました。自前の井戸をもつ家庭でも、汲み上げポンプが動かなくなりました。

台風7号の「予想される最大風速(最大瞬間風速)は、関東・伊豆諸島40メートル(60メートル)、東北25メートル(35メートル)」とされています。2019年の台風15号に似ているとするなら、倒木、停電、断水への備えが必要ということでしょう。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

橋本淳司の最近の記事