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柿谷が移籍したバーゼルとは?バルサ創設者も在籍したスイスリーグ17回優勝の強豪

斉藤健仁スポーツライター
エンブレムはクラブカラーの赤青の盾に「FCB」というシンプルなデザイン

ついに、日本代表の若きFWが海を渡る。

7月7日、セレッソ大阪が、柿谷曜一朗がスイスFCのバーゼルへ完全移籍すると発表した。移籍は7月16日付けとなり、2018年6月30日までの4年契約で、背番号は「14」とスイスでは報道されている(15日に行われるJ1第12節の川崎フロンターレ戦で、移籍セレモニーが開催される)。

柿谷はセレッソ公式のHPを通じて下記のようにコメント。「僕はセレッソがめちゃくちゃ好きだし、一緒にやってきたみんなとタイトルを取りたい気持ちはありました。でも、もう一度海外でプレーできるチャンスが来て、ワールドカップで悔しい思いをした中でいっぱい考えて、FCバーゼルでチャレンジしようと決めました」(一部抜粋)

◇中田浩二(鹿島)も在籍した優勝17回を誇るスイスの強豪

それでは、柿谷が移籍するスイスのFCバーゼルとは、どんなクラブなのか。

日本では、元日本代表MF中田浩二(鹿島アントラーズ)が2005-06シーズンから3シーズン在籍したことでよく知られている。実は、2000年代から急激に実力を上げてきたチームで、2013-14シーズンまでスイス1部のスーパーリーグ5連覇を達成し、通算17回(うち9回は2000年以降)の優勝はリーグ2位タイ(最多優勝はグラスホッパーの27回)。今シーズンももちろん、チャンピオンズリーグのグループリーグから出場する。ちなみに、同じスーパーリーグのヤング・ボーイズには、昨シーズンからFW久保裕也(元京都サンガ)が在籍。

FCバーゼルの本拠地はスイス北西部に位置する、チューリヒ、ジュネーブに次ぐ国内第3の都市バーゼル(Basel)。「ファスナハト」というカーニバルや時計の見本市で知られ、人口は約17万3千人。ドイツ語圏の都市であるが、ライン川のほとり、ドイツとフランス、スイスの国境が接する地点にあるためフランス語の都市名バール(Bale)としても知られる。

ホームスタジアムは、1954年に建てられたザンクト・ヤコブ・スタジアムの跡に、2001年に新設されたザンクト・ヤコブ・パルク(St. Jakob-Park/4万2000人収容)。2008年のユーロ(欧州選手権)の会場となったスタジアムで、サポーターには昔から、ヤコブの矮小語(しかもバーゼル方言)の「ヨッギーリ(Joggeli)」という名で親しまれている。

◇バルサの創始者も在籍した「赤青軍団」

エンブレムに「FCB」とあるように、クラブの正式名称は「フッスバルクラブ・バーゼル1893(Fussball club Basel 1893)」。誕生はクラブ名にあるとおり、1893年のことで、新聞に「サッカーチームをつくりたいから、入りたい人は集まってほしい」と広告を載せたことがきっかけとなり、学者やジャーナリスト、ボート選手など11人が集まって創設された。その後、スペインのバルセロナ創設に尽力したハンス・ガンパー(Hans Gamper)も参加。ガンパーはカタルーニャ語読みであるジョアン・ガンペール(Joan Gamper)という名前の方が知られているかもしれない(バルセロナが誕生した1899年の2年前にはバーゼルのキャプテンも務めていた)。

ユニフォームは、創設当時からエンブレム同様に赤と青の縦2分割のものを採用している(バルセロナも、ガンペールの影響でFCバーゼルの赤青を採用したという説が有力視されている)。当時、バーゼルでスポーツと言えばボートであり、ボートクラブが赤と青のシャツを使用していたために、自然とそうなったとされている。クラブの愛称は頭文字の「FCB」、ドイツ語で赤青軍団を意味する「RotBlau(ロトブラウ)」、そしてバーゼル市民を表す愛称である「Bebbi(ベッビ)」も使用されているという。

エンブレムは1960年代にユニフォームと同じ赤と青の盾に、クラブの頭文字「FCB」とボールが配されたデザインのものが誕生し、当時はブレザーのみにつけられていた。1970年代後半になるとユニフォームにもつけられるようになり、1980年代中頃にはエンブレムとして定着したという。2004年には10回目のリーグ優勝を示す星が上部に配された。ちなみにエンブレムは伝統的に左胸ではなくユニフォームの中心につけられる。

◇柿谷がCLで躍動する日も近い?

チームメイトにはW杯のメンバーにも選出されていたGKヤン・ゾマー、DFファビアン・シェア、MFヴァレンティン・シュトッカーを中心としたスイス人選手を中心に、コートジボワール代表FWジョヴァンニ・シオなども在籍するなど層は厚い。柿谷といえども、すぐにレギュラー確保できるかは未知数だ。

ただ、昨シーズンまでは元スイス代表のハラト・ヤキン監督が率いていたが、今シーズンから元ポルトガル代表のパウロ・ソウザ氏が指揮を執る。ソウザ監督の下、彼の特有のテクニックの高さを披露することができれば、比較的早い段階で定位置を確保することもできるのではなかろうか。24歳の若きサムライがチャンピオンズリーグの舞台で躍動する日も近い。

スポーツライター

ラグビーとサッカーを中心に新聞、雑誌、Web等で執筆。大学(西洋史学専攻)卒業後、印刷会社を経てスポーツライターに。サッカーは「ピッチ外」、ラグビーは「ピッチ内」を中心に取材(エディージャパン全57試合を現地取材)。「高校生スポーツ」「Rugby Japan 365」の記者も務める。「ラグビー『観戦力』が高まる」「ラグビーは頭脳が9割」「高校ラグビーは頭脳が9割」「日本ラグビーの戦術・システムを教えましょう」(4冊とも東邦出版)「世界のサッカー愛称のひみつ」(光文社)「世界最強のGK論」(出版芸術社)など著書多数。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。1975年生まれ。

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