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藤春廣輝が語るリオ五輪への秘策「オーバーエイジはナメられて馴染む」

川端暁彦サッカーライター/編集者
昨年の東アジアカップでは遠藤航(右)ら五輪世代とも同じ釜の飯を食ってはいる(写真:アフロスポーツ)

7月1日に発表されたリオ五輪男子サッカー日本代表18名には、3人のオーバーエイジ選手が名を連ねている。「U-23日本代表」として予選突破というカタルシスも共有している一つの世代で構成されていたチームに、年上の選手が加わることは戦術面より心理面で難しいものがある。過去には明らかに加わったオーバーエイジ選手が「浮いてしまった」チームもあったわけだが、今回加わる3人の内の1人、ガンバ大阪のDF藤春廣輝には秘策があるという……。

「ナメられるくらいでいいんです」

青黒軍団の左サイドバックは自信を持って断言した。「『タメ口でもいいキャラ』でいきたい。遠慮させるような雰囲気にさせてはいけない」と力説するのは、理由がある。

「五輪を経験している今野(泰幸)さんに『先輩オーラとか出すのは良くない』と言われたんですよ。『オーバーエイジ選手のオーラが凄すぎて、その人らに付いていくしかないという感じになってしまった』と」

2004年のアテネ五輪に出場していた今野は、オーバーエイジ選手が合流してくる難しさを体感した選手の一人である。年長で2度のW杯に出場しており、欧州での実績もあった小野伸二を加えたチームの雰囲気が様変わりしてしまったことは、多くの選手が証言するところ。年少の選手たちが心理的に萎縮してしまい、結果的にチームは予選からの積み上げが消えてしまったような試合内容で早々に敗退してしまった。前車の轍を踏まないためにも今野のアドバイスを踏まえ、「もともとガンバでも(同じ五輪代表の)井手口(陽介)にはナメて掛かられているので大丈夫」という姿勢を貫く覚悟だ。

要は「チームに馴染もう」という姿勢をオーバーエイジ選手が取ることと、チームのこれまでをリスペクトする姿勢を示すことが短時間で「チーム」になるために必要なこと。それを分かっているからこその姿勢である。何より「予選を突破したのはU-23の選手たち。落選になった人たちの分までやらないといけない」と本気で思うからこそ、年下の選手たちへの敬意を欠かす気はない。オーバーエイジ選手が加わってもU-23の遠藤航が継続して主将になることについて「それは当たり前でしょう」と即答した様子からも、藤春の思いをうかがうことができた。

もちろん、個人として爪痕を残したいという思いもある。

「本当にいよいよという感じがしますし、世界大会は人生で初めて。これを機にどれだけ自分がやれるか肌で感じたいし、それを生かしてロシア(W杯)に行ければと思っています」

FW興梠慎三、DF塩谷司、そして藤春のオーバーエイジ3選手を加えた「リオ五輪代表」は、7月19日に始まる合宿から再始動のときを迎える。強固な団結力を誇ったU-23のチームに異分子である年長の選手が加わる難しさは確実にある。ただ、「ナメられるくらいの」謙虚さで臨む左サイドバックの姿勢は、その難しさを解きほぐすための貴重な助けとなるに違いない。

サッカーライター/編集者

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。2002年から育成年代を中心とした取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月をもって野に下り、フリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』を始め、『スポーツナビ』『サッカーキング』『サッカークリニック』『Footballista』『サッカー批評』『サッカーマガジン』『ゲキサカ』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。著書『2050年W杯日本代表優勝プラン』(ソルメディア)ほか。

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