鈴鹿SUPER GTプレビュー。鈴鹿サーキットでの有観客・興行レースは約1年ぶり!
待ちに待ったビッグレースが鈴鹿サーキット(三重県)に帰ってくる。鈴鹿サーキットは10月24日(土)〜25日(日)に国内人気レースの「SUPER GT」を開催。新型コロナウィルス感染拡大防止策を講じた上で観客を受け入れることになった。
鈴鹿サーキットでは8月にも「SUPER GT」第3戦が開催されたが、この時は無観客レース。併設された遊園地モートピアまでは入場ができたが、国際レーシングコース周辺でのレース観戦は不可能だった。そのため、今回の有観客開催はファンにとってもサーキットにとっても待ちわびた嬉しいイベントだ。
約1年ぶりの有観客レース
日本における「モータースポーツの聖地」とも形容される鈴鹿サーキットは今年、コロナ禍の影響を最も大きく受けたサーキットである。
まず3月にトヨタとホンダとの共同イベントとして開催予定だった「モースポフェス」の中止が決定すると、4月以降の興行型レースは軒並み、延期あるいは中止が発表され、4月以降はアマチュアの参加型レースも中止。さらに国の緊急事態宣言もあり、4月10日から5月28日まで遊園地やホテルを含む全ての営業を休止した。
そして追い討ちをかけるように、外国人の入国制限の影響で「F1日本グランプリ」や「鈴鹿8耐(鈴鹿8時間耐久ロードレース)」などの国際レースイベントの中止が決定するなど、2020年、鈴鹿サーキットは大打撃を受けた。
アマチュアが中心の参加型レースは7月からスタンドを開放した形で有観客で開催されてきたが、1万人以上の観客を見込む興行レースの開催は昨年11月の「全日本ロードレース選手権・MFJグランプリ」以来、約1年ぶり。本当に久しぶりに鈴鹿でプロフェッショナルたちのレースが開催されることになる。
今回の「SUPER GT 第6戦 FUJIMAKI GROUP SUPER GT 300km RACE」は三密を避けるために東コース区間エリアの全席指定席という形でチケットが発売されている。西コース区間に関しては自由観戦エリアとなり、入場者は自由に行き来ができるが、ピットウォークやグリッドウォークなどのイベントは開催されず、観客のパドックへの入場は不可となっている。
まだまだ以前と同様の通常開催にはほど遠いが、それでもファンの期待は大きく、ホームストレートのV1、V2席のチケットは完売になった。
GT500はNSXが優勢か?
SUPER GTの鈴鹿開催といえば、ここ2年は5月末の開催。それ以前は夏の鈴鹿1000kmレースとしての開催が長く続いていたが、2000年代の前半までは鈴鹿が最終戦に設定されていた時代があった。今回は鈴鹿では2005年以来15年ぶりという久しぶりの秋開催となる。
今季を少し振り返ってみよう。コロナ禍で無観客開催でスタートした2020年シーズンは予想通り、今季から登場したトヨタのGRスープラが開幕戦から強さを見せた。第1戦・富士は1位〜5位を独占、第2戦・富士も2位〜4位に入るなど序盤はスープラ優勢で進む。しかし、ウイナーはレース毎に変わり、第2戦・富士は今季からFRレイアウトになったホンダNSX、第3戦・鈴鹿は日産GT-R。ここまで5戦を終えて、スープラ2勝、NSXが2勝、GT-Rが1勝となっている。
しかし、残り3戦となり、ランキング上位はスープラがトップ5台中4台を占めており、今季はやはりスープラの年という印象だ。ライバルにとってはその流れを変える大きなチャンスと言えるのが第6戦・鈴鹿でのレースだ。
まず今回の第6戦はウェイトハンデがポイントの2倍の重量で課せられるレースであり、ランキング上位勢は非常に重いウェイトハンデ(51kg以上は燃料リストリクター制限あり)で厳しい戦いが予想される。必然的に今季の獲得ポイントが少ないチームが予選上位に来ると考えられ、速さがありながらポイントを取りこぼしてきた#8 ARTA NSX-GT(野尻智紀/福住仁嶺)は優勝候補と言えるだろう。
ポールポジションや優勝はやはりウェイトハンデが少なめのチームが優勢だが、ウェイトハンデが重くのしかかるチームが何位でフィニッシュできるかもシリーズチャンピオンを占う上で大きな要素となる。そのため、中段の順位争いはかなり熾烈なバトルになるであろう。
コース幅が狭く、荒れた展開になりがちな鈴鹿でのレースは面白くなること間違いなしだ。
GT300は例年以上の混戦模様に
ドラマチックなレース展開が魅力のGT300クラスはウイナーを予想するのが本当に難しい。ここまで5戦を終えてポールトゥウイン(ポールポジションからの優勝)は1例も無く、実は2018年の第6戦でスバルBRZがポールトゥウインして以来、毎回ポールポジションとウイナーが違うレースが続いている。
今季からGT300クラスはウェイトハンデが獲得ポイントの3倍となり、この非常にキツいハンデは今回の鈴鹿まで適用される。ランキング1位の#65 LEON PYRAMID AMG(蒲生尚弥/菅波冬悟)は50点獲得でウェイトハンデは150kg。今回はランキング上位5台が最大100kgのウェイトを積むことになる。アップダウンが激しく、スピードレンジが高い鈴鹿ではウェイトハンデの影響はかなり大きくなるだろう。
今季のGT300クラスはGT500クラス以上にタイヤ戦争が熾烈で予選こそブリヂストンユーザーが5戦中4回ポールポジションと優勢だが、決勝ではブリヂストン2勝、横浜ゴム2勝、ダンロップ1勝とレース中の主導権は常に変化するレースが続く。
そんな中で今季2度のポールポジションを取りながら、まだ優勝できていない #6 ADVICS muta 86MC(阪口良平/小高一斗)は要注目の1台。開発自由度が高いマザーシャシーベースのトヨタ86は鈴鹿で速い上に、このチームのエンジニアはGT500やトップフォーミュラで活躍した田中耕太郎。さらにドライバーの阪口良平が最も得意とするホームコースだけに、ウェイトハンデの軽さを活かした走りに期待したい。
重いウェイトを積むランキング上位勢にとっては我慢のレースになりそうな鈴鹿のレースだが、GT300クラスも一筋縄ではいかないレースになるだろう。ビッグバトルが300km(52周)にギュッと詰まった内容の濃いレースになるのではないだろうか。