アニメ「ポケモン」サトシの主人公交代:発表までの経緯と窺えたタイミングの難しさ
先週末、アニメ「ポケットモンスター(アニポケ)」の主人公・サトシとピカチュウが、1月から始まる全11話(予定)の物語をもって、主人公を交代することが発表されました。
放送開始から25年、変わらずそこにありつづけたサトシ達の冒険が一旦の区切りを迎えることには、世代を問わず、世界中から驚きの声が挙がっています。
しかし、しばらく作品から離れていた人にとっては寝耳に水のニュースであったかもしれませんが、実はこの発表に至るまでには、ここ数ヶ月に渡る様々な経緯もありました。
■発表までの経緯:クライマックスの予感
今回発表された主人公交代ですが、実はリアルタイムで作品を追うファンの間では、しばらく前からそれとなく噂されていたことでもありました。
それというのも、現在放送されていたシリーズが、まるでサトシのこれまでの冒険と成長の総決算となるような、クライマックスを予感させる内容でもあったからです。
ポケモンバトルの頂点を決めるトーナメントに出場したサトシが挑むのは、これまで旅してきた各地方を代表するようなトップトレーナー達。
そんな強豪達を相手に、サトシが仲間と共に成長してきた姿をみせ、次々勝利を収めるにつれて、優勝への期待と共に『このまま世界王者になったら、そこでサトシの物語は終了してしまうのではないか』という不安が、ファンの間に生じます。
それだけならよくある展開予想で済みますが、本編の内容以外でも、トーナメントが進む毎に異様な頻度で公開される新キービジュアルや、度々登場する“クライマックス”の文字、アプリゲームやポケモンストアでのスペシャルな展開やアニメ誌での特集等々。
これまでにない熱い展開を盛り上げる演出と理解しつつも、どこか“最後のお祭り感”も漂うアニメ周りの雰囲気に、主人公交代を噂する声も徐々に広がっていったのです。
そうして迎えたトーナメント決勝戦、見事勝利を果たしたサトシは、“25年越しの悲願を達成”し、世界チャンピオンに輝きます。
当日は、その速報が渋谷の大型ビジョンで放映されるなど、やはりかつてないほどの盛り上がりに不安を覚える人も少なくなかったのか、優勝を祝福する言葉と共に、“サトシ引退”のワードがトレンド入りするといったこともありました。
そうした不安要素のひとつには、シーズン終盤になっても次の新シリーズの情報が一向に予告されなかったこともあったと思います。
従来ならば、原作ゲームの新作発売に合わせて、新たな舞台で始まる新シリーズの予告やスペシャルエピソードの公開などがあるはずですが、今年11月、最新作「ポケットモンスター スカーレット・バイオレット」発売後も、アニメ新シリーズについてはしばらく何の情報もなかったのです。
そうしてサトシの優勝後も、主人公継続や、最終的には「アニポケ」の放送継続自体にまでファンの心配が及ぶ中、先週12月16日、ついに今回のニュースが発表されたのでした。
■難しすぎる発表のタイミング
こうしてみると、リアルタイム視聴者にはなかなか心休まらない数ヶ月でもありましたが、25年間のどのシリーズをみた人であっても「アニポケ」に触れたことがあるなら誰にとっても主人公であったサトシとその相棒のピカチュウです。その交代とあれば、いつどんな形で発表が行われたとしても、驚きや悲しみの声が挙がることは間違いありません。
番組側からも「今回の発表をいつ、どのような形でお伝えするべきか、番組としても非常に苦慮しました」とある通り、そのタイミングがいかに難しかったかは想像に難くないでしょう。
もし、トーナメントの途中で主人公交代の発表があったとしたら、お別れの悲しみを抱きつつサトシの快進撃を眺めることになってしまったでしょうし、最後までどちらが勝つのか分からない試合にも『最後だしサトシが勝つでしょ』という色眼鏡がついたかもしれません。
また、サトシとの別れを惜しむ間もなく『次週から新シリーズです』と言われてしまっていたら、心の準備も出来ていないまま、もっと複雑な気持ちで新シリーズを迎えることになっていたことでしょう。
そう考えると、彼らの冒険をあと数ヶ月残した今の時期での発表は、リアルタイム視聴者には感謝と共に、お別れまでに気持ちの整理をつけさせてくれることに加え、しばらく作品から離れていた人も、これを機にサトシが主人公の物語を最後まで共に見届けるべく戻って来られる、難しい中でのベストなタイミングであったのかもしれません。
主人公のサトシとピカチュウの冒険が描かれるのも、残すはあとわずか。
その中で、25年をかけてポケモンマスターを目指してきたサトシの物語がどう描かれていくのか、リアルタイム視聴者にとっても、しばらく作品から離れていた人にとっても、サトシ達との冒険に触れたことのある全ての人にとって、見逃せないものとなりそうです。