デビュー17年、今w-inds.が注目を集める理由<後編>焦りと葛藤を糧に手に入れた、武器と居場所
w-inds.のロングインタビュー、<前編>に続き後編をお届けします。
「本当に自分たちがいいと思ったものを、エンターテインメントとしてみなさんに届けて、楽しんでもらうという環境が一番健全」(慶太)
日本のダンスボーカルユニットで、作詞・作曲、サウンドプロデュースまで手掛けるのは、w-inds.だけだろう。これこそが3人が理想としていたスタイルなのだろうか。「そこまでこだわってはいませんでした。でも時代背景が変われば自分たちの考えも変わってくるというか。今は、やりたくないことをやっていると見透かされる時代です。ちょっとした発言、ちょっと変な表情をすると、それこそ炎上します。隠し通すことができれば、エンターテインメントとして成立するとは思いますが、僕たちはすぐに顔に出たり、言葉に出てしまうので(笑)、嘘をつけないと思いました。そういう意味で、自分たちの思い描いたものを作る以外、エンターテインメントとして成立する術がなかったというのは、変わっていく時代の中で、行き着いた答えでした。本当に自分たちがいいと思ったものを、エンターテインメントとしてみなさんに届けて、楽しんでもらうという環境が一番健全だと思う。やりたくないことをやって、誰かを楽しませるのは不健全な感じがして。自分たちを犠牲にしてまで、人を幸せにできるのか、できたとしてもいつかどこかで崩れてしまうんじゃないかということを、考えてしまいます。自分たちが楽しくて幸せということが、エンターテインメントの軸でなければいけないと思う。それを後輩にもしっかり伝えていきたいんです。先輩が道筋を作ってあげるというのはすごく大切なことだと思っています」(慶太)。
「洋楽の流行を捉えた最先端の音楽と、J-POPとどう融合させるかを考え続ける」(慶太)
2017年1月にリリースしたシングル「We Don't Need To Talk Anymore」は、カップリングの「Again」も含め、橘が初の全面プロデュースを手掛け、各方面から絶賛され、これが火付け役となって、続く3月に発売された12thアルバム『INVISIBLE』が音楽評論家や高名なライターから高い評価を得た。
EDMやトロピカルサウンド、R&Bという最新の音楽を経由して構築された、w-inds.が目指すダンスミュージックが確立された。期待値が高まる中で、最新アルバム『100』の発売。橘はプレッシャーを感じていたという。「新しいアルバムを出すというと、そろそろこいつ全部プロデュースするだろうって思われているんだろうなって(笑)。流行を捉えて最先端をいくのがw-inds.のスタイルで、それをどうJ-POPと融合させるか今回も悩んだし、いつもドキドキしています。期待を裏切ってしまったのではと、不安になります」(慶太)。
そんな中で制作された『100』には、キャッチーなメロディの、ジャンルレスなポップスがつまっている。J-POPの中心で、先鋭的なサウンドを鳴らす彼らの、まさに真骨頂ともいえる一枚に仕上がっている。ちなみにアルバムタイトルは、3人の年齢を足した"100"だ。全曲愛おしい作品のはずだが、難しいとは思いつつ3人に推し曲を教えてもらった。
「「Stay Gold」は、今まであまり書いてこなかった強めのメッセージソングで、特別な存在」(慶太)
「新しい試みをしているという点で、「Celebration」と「We Gotta Go」です。全英語詞で、「We Gotta Go」では、3人とも歌とラップをするというチャレンジングな曲です」(龍一)「「Stay Gold」ですね。ずっと頭の中でループして、でも飽きない。慶太の人生論のような歌詞も胸に響くというか、自分とは考え方が違うので、なるほど!って思ってしまいました」(涼平)。「この曲は僕にとっても特別な曲で、涼平くんも言ってくれましたけど、自分のメッセージソングってあんまり作ることがなくて、そんな中でも今回は強めのメッセージソングになっていて。僕がいつも考えていることなんですが、人の輝きって、磨いて美しくなるという発想だと思いますが、逆だと思っていて。元々全員生まれ持った美しいものがあるのに、人に合わせようとしたり、気を遣ったり、我慢したり、そういうことによって自分らしさを失い、自分を錆びさせているんじゃないかと、あるとき思って。本当はそのままでいたほうが、ありのままで、そのままの自分のよさを出すことが、自分が輝くことにつながると思ったときにできた曲です」(慶太)。
歌って踊れて、曲が書けるという唯一無二の武器があるからこそ紡げるサウンドがある、ということを感じさせてくれる一枚でもある。「歌い手だからこそ出るメロディ、ダンサーだからこそ出る音の取り方とか絶対あると思います。音楽、ダンス、歌をわかっている人のトラックとそうじゃないものは圧倒的に違うと思うし、それは本当に自分の一つの武器だと思います」(慶太)
初めてフェスを主催。7月7日に行われた『w-inds.フェス』にはw-inds.をリスペクトするアーティスト12組が集結
7月7日には、初の主催フェス 『w-inds. Fes ADSR 2018-Attitude Dance Sing Rhythm-』を開催した。このフェスには、彼らにゆかりのある、彼らをリスペクトする、Lead、Da-iCE 、DOBERMAN INFINITYなど、ダンス&ボーカルグループを中心に12組のアーティストが集結。この日限りのスペシャルセッションなど、熱いパフォーマンスで約5,000人のファンを熱狂させた。そして間髪入れずに7月13日の東京・八王子を皮切りに、全国10か所で11公演行う「w-inds. LIVE TOUR 2018 "100"」がスタートする。「アルバムを携えたツアーですが、ライヴの1曲目を聴いたときにびっくりするようなライヴになると思います。こうなったんだ、これがw-inds.のライヴなんだ、という“いい感触”を与えられると思います」(慶太)。「毎回チャレンジが必ずどこかにあって。今までのツアーもそうだし、今回のツアーでも会場によって、内容は同じかもしれないけど、絶対違うものになっている。同じことをやっている感覚ではなく、常に新しいことをやっていると思っています。それを自分で楽しみながら、毎回違う表現をして、よかったのか悪かったのか、お客さんが観て気づくか気づかないかは別として、自分の中でそれがいいものだったらいい結果として吸収するし、ダメだったら反省するし、その繰り返しです」(龍一)、「僕は毎日ライヴがやりたいくらい3人でやるライヴが大好きだし、面白いし、楽しいし、新しい発見もあるし。今回もいい意味でお客さんの期待を裏切りつつ、自分たちもさらに大きくなりたい」(涼平)。
事務所の先輩、DA-PUMP、三浦大知に刺激を受け「カッコいい音楽を作ることがw-inds.の武器になり、居場所になると思った」(慶太)
最後に、同じ事務所の先輩DA-PUMP、そして三浦大知の活躍を、どう捉えているのかを聞いてみた。「大知くんのダンスのクオリティ、ISSAさんの歌のクオリティが凄すぎて、どっちを一生懸命練習しても、あの二人を抜くことはできないと思いました。どうしようと思い、最高にカッコいい音が作れるようになれば、w-inds.の武器になるしそれが自分たちの居場所だと思ったので、そういう意味では大知くんとISSAさんに感謝しています」(慶太)。
自分たちの信念を貫き、事務所の先輩、後輩の活躍に刺激を受け、切磋琢磨を続け、w-inds.は20周年を目前にして、今が、まさに充実の時を迎えているようだ。