金正恩の「親衛隊」も食うや食わず…北朝鮮の末期症状
かつての北朝鮮では、すべての国民が食料品、生活必需品を配給を通じて手に入れていた。不平不満を言わず、普通に職場に出勤していれば潤沢でなくとも食べていくことができた。ところが、旧ソ連・東欧の共産圏が崩壊した1980年代から援助が滞り始め、配給にも問題が生じた。
そんな中でも、配給を受け取っていたのは保安員(警察官、現在は安全員)や保衛員(秘密警察)など、独裁者の「親衛隊」として抑圧体制を末端で支えていた人々だ。ところが、2019年からは彼らに対する配給も滞り始めた。
そして、今月も配給の量が減らされる事態となった。北朝鮮の食糧事情がいかに逼迫しているかを示す一例だ。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)の情報筋は、咸鏡北道保衛部が保衛員に本人分だけ食料配給を行うことにしたと伝えた。つまり、家族の分は配給されないということだ。
(参考記事:北朝鮮「骨と皮だけの女性兵士」が走った禁断の行為)
現地では今までも配給の遅配はあったものの、体制を守る第一線にいるということで、全量優先配給されてきた。労働者1人あたりの配給の量は1日700グラムで、運搬中に横流しなどで減る分を考えると540グラムだった。それをコメ3、雑穀7の割合で、1カ月に1回配給していた。それが今月からは本人分だけ支給されるようになり、雑穀、つまりトウモロコシのみとなった。
生活に困った彼らは、自らの管轄でない地域に出かけて通行人の荷物や携帯電話の抜き打ち検査で難癖をつけ、ワイロをかき集めるのに必死になっている。もともと悪かった住民からの評判はさらに悪くなり、非難轟々だ。
別の情報筋は、保衛部のみならず清津(チョンジン)市安全部(警察署)も今月から配給量を減らしたと、知人の安全員から聞いた話として伝えた。この安全員は両親と共に住んでいるが、自分の分しか配給が得られず、当局を非難したという。
別の安全員は5人家族だが、今月1カ月分の食糧として配給されたのは、本来なら80キロのところ、トウモロコシ15キロだけ。
一般国民とは異なり、安全員と保衛員は商行為が禁じられているため、結局取り締まりを強化して、ワイロを巻き上げる以外に生き残る方法がない。情報筋は、このような状況が続けば、安全員や保衛員と住民との対立が激化しかねないと述べた。
ただでさえ恨みを買っている彼らは、常に報復のターゲットとされており、殺される者もいるが、同様の事件が増えるかもしれない。